74.ビー、お弁当忘れたの~。
お弁当を忘れるほど悲惨なことはありません。
そろそろ、4時限目の授業も終ろうかと言う頃、中身大地のビーは、机に突っ伏していた。
(腹、減ったなあ~、後ちょっとで昼休みやけど、今日、弁当持ってきてないんやもんなあ)
そう、何時もなら、ビーは、小さいながら弁当を持ってきているのだが、今日は昨夜からの騒動の御蔭で弁当を用意していなかった。弁当といっても、大地の手造りではなく、前の日に買った、コンビニ弁当を詰め替えているだけであるのだが。
最悪なことに、財布も持ってきていない。財布でもあれば、学食で食べられるのであるが、それすら出来ない状態であった。
授業については、なんの問題もなく時間が過ぎて行き、大地も懐かしく思いながら授業を受けて いた。ビーは学院では優等生とされていたため、処々、授業で当てられる場面もあったが、難無く答える事ができたので、大地もビーの評判を落とさずにできて胸を撫で下ろすのだった。
しかし、ここに来て、この空腹である。考えてみるとビーはどうかは知らないが、大地は昨日の昼から、なにも口にしていないのである。多分、ビーも同様であると思われるので、丸1日なにも食べていない。
き~んこ~んか~んこ~ん、4時限目終了の鐘の音が響いた。
「やっと、午前中、終わった~」
中身大地のビーがのろのろと立ち上がり、トイレに行こうと廊下に出たところ、帝がすこし大きな包みを抱えて走ってきた。
「ビーお姉さま、行きましょう」
「!!!」
中身大地のビーが戸惑っていると、帝はビーの手を掴んで歩き出した。
「ビーお姉さま、速く。生徒会室に行きますわよ」
歩きながら、少し、怪訝そうな顔を帝にされながらも聞いてみたところ、今日は昼休みに生徒会室に集まって会議を兼ねた昼ごはんを食べる日ということだった。最近では、3年生が卒業も近い事も会って、頻繁に会議をしているそうである。
生徒会室に着くなり、帝は机の上に持ってきた包みを広げた、あれよあれよと言う間に机の上に色とりどりの御馳走が並んで行く。すこしスィーツが多いのはビーの志向に配慮してのことだろうか。
目を輝かせて見ていると、帝がその一つを取って口に運んでくれた。今はビーの姿をしているのだ、なに を迷う事があろうか、少々恥ずかしかったが、背に腹は替えられない。空腹に耐えきれず口を開けると、帝が甲斐甲斐しく口元に食べ物を運んでくれた。
「ビーお姉さま、はい、あ~ん」
「はむ、もぐもぐ」
次から次えと口の中に入れられる。
あまりにも次から次へと入れられるので、抗議の声を上げようとしたのだが、そこに、帝の悲しそうな瞳を目にして口をつぐんでしまった。それがいけなかった。
卵焼き、たこさんウィンナー、プチトマト、唐揚げ、ミニオムレツ、ミートボール。お弁当のおかず系はまだ良かった。そのうち、帝はスィーツ系に手を伸ばし始める。帝の持ってきた物はおかずよりスィーツの方が数があったのだ。ショートケーキ、生シュー、シ ュークリーム、エクレア、等など。生クリーム、チョコなどのものはまだ美味しく食べられた。しかし、ポテト系に至っては、もう苦行僧の様相を呈している。
たぶん、ビーであるなら美味しく頂けたのであろう、
スイートポテトの類だけでも数種類あった。さつま芋、紅芋、紫芋、黄金芋、安納芋
「うっぷ、ごめん。もう降参。許してや~。帝ちゃん」
「まだまだ、モンブランとかもありますのよ。栗の種類が数種類あってね。ビーお姉さまに喜んで貰おうと思って持ってきましたの」
にっこり笑いかける帝。その笑顔が眩しい。
大地は考える、この状況をなんとか避わさないと、とんでもない事になりそうだ。
(なんとかせんと、・・・ん、そうや、これ や、これやったらいけるんちゃうか)
帝が差し出すモンブランがのったスプーンをぱくっと咥えたまま、中身大地の手がそっと帝の手を包み込む。帝に、にっこりと笑いかけるとそっとそのスプーンを奪った。
「はい、今度は帝ちゃんのばんだよ、あ~ん」
内心、大地ばバクバクものであった。「あ~ん」など、ビーにもした事がない。あとで、ビーには嫌というほどさせられることになるだろう。
帝は大地が差し出したモンブランが乗ったスプーンを凝視している。まるで、少しでも目を離すと逃げてしまうと思っているかのようだ。そんな状態で秒針が1回転ほど廻った。
(こ、こ、こ、これは、お、お、お、お、お姉さまと、か、か、か、間接、キ、キ、キス?)
そろそろ大地の恥ずかしさゲージがMAXとなりつつあった。
「帝ちゃん?」
(こりゃ、駄目やったかな。ちょっと恥ずかしいから止めとこか)
大地がそ~と手を戻そうとすると、帝の手が突然伸びてきて有無を言わせずガッチリと捕まえた。その力に大地は思わず悲鳴を上げそうになったが何とか堪える事ができた。
「帝ちゃん、落ち着いて、ね」
帝は鼻息も荒く、今にも噛み付きそうだ。
「ビーお姉さま、頂きます」
帝は掴んだ中身大地のビーの腕をそそまま引き寄せ、パクっとスプーンを口にいれる、そのまま、また数刻、固まっていたが、ごくりと飲み込んだようだ。大地はそっとスプーンを引き抜き次のひと口を準備する。
「あ~ん」
「は、はい、ぱくっ」
大地はそのひと口ひと口になんとも言えない良い表情をする帝に調子に乗ってどんどん食べさせて行った。ひな鳥に餌を与えている気分だ。とうとう、帝からギブアップが出る。
「ビーお姉さま、もう駄目、駄目です。これ以上は入りません」
帝さん貴方はどんだけ持って来たんだ、それに、それを全部ビーに食べさすつもりだったのだろうか?
そろそろ昼休みも終わろうとしている。
結局、生徒会についての話は無かった。
中身大地のビーは食べるだけ食べて、そそくさと教室に戻るのだった。
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