72.ビー、帝ちゃんを嫌いになるわけないよ。
大好きな人に嫌われたと思っちゃうと辛いですよね。ちょっとしたことでも気になって。
* * *
「ビーお姉さま、災難でしたわね。ビーお姉さまに想いをよせられておきながら、破廉恥な」
おずおずと声を掛ける中身が大地のビー。
「あの、暮新月さん、え~と、さっきのことなんやけど」
今、中身が大地のビーは、学院の制服を着てコタツに座っている、帝も対面側に座っている。ブラは帝に手伝ってもらって、なんとか着けるのに成功した。そろそろ家をでないとまずい時刻であるのだが、説明が必要で有ると感じた為、まだ家を出ず、ぐずぐずしているのだ。
「・・・」
帝が下をじっと見ている。どこか思いつめた表情をしている。
「あの暮新月さん?」
(ビーお姉さま、私のこと、怒っておられるの? は、さっきのは、もしや高尚なプレイだったのかしら・・・。そうよ、きっとそう。だから、私のこと、何時ものように帝ちゃんって言って貰えないのだわ。私を、嫌いになってしまった・・・)
「ごめんなさい。ビーお姉さま。お願いです。嫌いにならないで~」
大地は唖然とした、戸惑っているとも言える。ほんのついさっきまで、怒って木刀を振りまわしていた女の子が、突然、謝ってきて、縋り付いて、ぽろぽろと涙をながしているのだ。おろおろするばかりである。
とりあえず、良く判らないが、安心させるのが先決だ。
「いや、嫌いやないで。暮新月さん、泣きやんでや」
「でも、ビーお姉さま、そのしゃべりかた・・・、きっと怒っておられるから、私のこと、いつものように呼んで貰えないのですよね・・・」
(しゃべりかた?お、そうやった、今、俺、ビーなんや。この子の名前、名前、えっと、帝?そう、帝ちゃんって、言っとった)
「そんなことないで・・・のよ、帝・・・ちゃん。ビーは嫌ってなんかないで・・・のよ」
潤んだ目で上目使いで訊いてくる帝。その威力絶大である。
「う、あ、大丈夫なのよ。ビーは嫌いになんかならないわ」
(女の子言葉、難し~、なんか、痒くなってくるわ)
「本当ですか?帝のこと、嫌いになったのではないのですか?」
少し声が震えている。
「うん、好き好き、大好きなのよ」
「ビーお姉さま、私も大好きです」
飛びついてくる帝。よろけながらもなんとか耐えようとするが、無駄な努力だった。いつもの体ではないので踏ん張りが効かない。そのまま、二人は縺れる様に倒れ込んだ。
大地は少し、体を起こしたが、帝が縋り付いて離さない。ビーとは違っていろいろ出るところは出ている帝、少しにやつく顔をなんとか整える。ビーの胸の中に顔をうずめている。帝の頭を撫でながら、出来る事なら逆になりたい、そんな事を思っていた。
帝は落ち着いたのか少し体を持ち上げ、ビーの目を覗き込むようにして聞く。
「それで、あの、先ほどのあの男、いえ、大地さんとは・・・、プレイ?だったのですか」
「プレイって・・・、え~と、え~と、ん~と、あ、あれはね、え~と、ビ、ビーが、ゴの付く黒い虫さんに驚いて、バスルームを飛び出しちゃったの、そう、だから、プレイとかそんなんやないんやで・・なの」
「ゴのつく虫さん・・・、そうだったのですか?私はてっきり、そお言うプレイをされてて、それを邪魔した帝のことを嫌いになったのだとばかり思ってしまいました。・・・よかった、よかったです」
帝は両手の指をビーの手に絡めて、言葉強く言った。
「よかったです、ビーお姉さまが穢されるのでなくて」
帝はビーの目をじっと見る。
「帝・・・ちゃん、あの」
帝はビーの言葉を遮る。
「いえ、最後まで言わなくても判ります。大地さんはビーお姉さまの大切な方、ビーお姉さまはあの方になにをされても全て許してしまわれる。判っています。でも、だから、私が替わりに怒ります。怒ることぐらい私に許して下さい」
帝は深く頭を下げる。中身大地のビーのお腹におでこがコツンと当った。大地にはすこし帝の肩が震えてるように見えた。
(ああ、この子は本当にビーの事が好きなんやな、よかったな、ビー)
中身が大地のビーは、ぽんぽんと優しく帝の頭を撫でるように叩いた。帝の瞳がビーの瞳と交叉する。
「ありがとう」
中身大地のビーが笑い掛けると、帝も答える様に笑みを返す。
「さあ、学校に行こうか、もう完全に遅刻やけど・・・なの」
「はい」
帝が元気よく返事する。
* * *
お読みいただきありがとうございます。やっと学院に向けて出発です。
ツバイさん何処行ったの?




