48.ビー、桃と対決する。
やっと対決です。遅々として進みません。
いよいよ今日が勝負の日なのよ~、く~。
今日、あの子が手に入ると思うとにやけてしまうね。
あの子には、桃が手取り足とり、懇切丁寧に、あんな事や、こんな事をいっぱい体に教えて桃の戦士にするね。おっとよだれが、じゅるり。
次のあの大会にも出てもらって、道場取り戻すね。にへへ。
今日は、どの服着て行こうかな、ちょっと丈の短めのがいいかしらね。太ももちらりがいいのよね~。この白いのがいいかな。肩まで大胆にでてて、スカート部分も短めで、あ、こっちのも捨てがたいね、ロングで大胆にスリットが入ったものもいいのね。みんなの視線、釘づけ?う~ん迷うのね~。
ズボンは無しね、ちょっと野暮ったいからね。でもちょっと 寒いかしらね 。でも このくらいの寒さぐらい我慢しちゃうのよね、女の子って、おしゃれの方が大切よね~。大事なことなのよね。
でもちょっと色気振り撒き過ぎかしら?う~ん、どうしようかな~、多すぎるくらいがちょうどいいかも。うん、そうよね、そうしよっと。じゃあ、このロングで大胆にスリット入った緑のやつが良いわね。スリット腰まであるやつね。
パンツ完全に見えちゃうじゃない。大胆よね~私って。緑のパンツあったかしら。これって、普通パンツ穿かずに行くやつよね。でも、私、そこまで大胆にはできないね。うん、まだまだ、おこちゃまなのね私って、背伸びしたい年頃なのよ。みんなにも経験あるんじゃない。
あ、そうだ、ストッキング履けばいいんじゃないかしらね、う ん、それがいいのね。スリットから黒いストッキングに包まれた足が見えるって色っぽくない?そうしよう。生足もよいけどね。ストッキングもいいよね。
さて、そろそろ行きますか、帝ちゃん待っててね、桃が今 、行きますから。にしし。
* * *
ビーと帝は港のビー団のコンテナハウスに桃より先に着ていた。
ソファーにちょこんと座り帝持参の紅茶を入れて飲んでいる。もちろんビーは砂糖どっさりでミルクがなみなみと注がれたミルクティーである。
ビーの横には一緒に付いてきたミネラもミルクティーを飲んでいる。時折、「あまあまじゃ」と聞こえるので機嫌が良いようである。
帝は、レモンを浮かべレモンティーにして飲んでいる。タッパーにレモンの輪切りを用意してきたようである。
帝はちらちらと時計を気にしているようで少し落ち着きが無い。
コンテナハウスには彼女たち3人の他に巌、平も端の方でテレビを見ている。テレビには以前、女の子の間で流行っていた○リキュア の再放送が映っていた。ビー達も女の子なので変に気を使った 巌たちがチャンネルを合わせているようである。
「ふ~、そろそろ来るかしら」
ビーは優雅に紅茶を啜りながら、クリームパンに齧り付いている。どうやら平の朝食を取り上げたようだ。直接、ちょ~だいと言った訳ではなく、平が持っていたクリームパンをじ~と見つめていたようで、そのプレッシャーに負けて差し出したようだ。
ビーも紅茶だけ啜っていれば、何処かのお嬢様として通用するのだが、パクつく姿は台無しである。
ビーはミネラに合せたようでゴスロリファッションをしている。ミネラと胸元の飾りが違うが遠目から見れば違いが判らない。
帝もビーに合せてゴスロリ系である。初め、大地の家にビーを迎えに来た時はピンクのブラウスに茶色や 緑や白の毛糸で山の中の雪の中の一軒家を描いたニットのセーターだった。そして、赤いコートを手に持って現れたのだが、ビーとミネラのお揃いの服装を一目見て、慌てて家に帰り、同じような服装で再び現れたのだった。
ビー団に着いた時、他にも団員はいたのだが、帝の「だれか美味しいケーキをお願いします」の声で慌てて、貢物を用意してくるとか言って何処かに出て行った。その為、今は巌と平しかいない。
団員には、今日の彼女達ファッションはおおむね好評である。ビー団の男どもはゴスロリが好きなのか?
ビーに手を引かれて現れたミネラに対して、団員たちから「ゴスロリ幼女来たー」とか「ゴスロリ神、降臨」とか騒がれていた。
ミネラが「煩いのお、なんじゃ、この者 たちは」としゃべると、さらに「真、神か、わかってらっしゃる」、「尊大な御言葉、頂戴いたしました」など、ますますヒートア ップしてしまい、呆れたミネラは、今は、口を噤んでいる。
表で桃が来るのを待っていた、団員が慌てて駆け込んでくる。
「この前の女が来た、来ました」
団員から報告を聞いて暫くしてから、悠然とコンテナハウスに入ってくる桃。
緑のチャイナ服に身を包み大胆なスリットからはチラチラと黒いストッキングに包まれた足が見え隠れする。
男性陣からは、ごくりと生唾を飲み込む音が聞こえてくる。
桃は一堂を見まわしながら、ゆっくりとした動作で帝に手を振る。そして、ビーに目を止めた。
「あなたが、ビーさんで良いのかしら。私と勝負する相手の」
「そうなの、ビーなの」
「待たせちゃったかしら?ちょっと遅れたかもしれないけ ど、許してね」
「いえ、時間どおりです」
「ビーさん、あなた、そんな可愛い顔して格闘技なんかできないでしょう?今からでも遅くないから降参してはどうかしらね」
桃からの降参勧告に目を吊り上げて怒る帝。
「ビーお姉さまは負けません。絶対です」
「あら、そう?まあいいけどね。私が勝つことに違いはないのね。でも、私って、帝さんを怒らせてばっかりね。なんか、いじめたくなっちゃうのよね」
「・・・」
「それじゃあ、始めましょうか」
* * *
「なんか観客、多いわね。どこかの大会みたいなのね」
「ビー団の皆さんが集まってきたようです。あなたたち、見てもいいですが、静かにしてくださいね」
帝がギャラリーに注意を与える。
このギャラリーたちだが、巌が呼んだものである。
ビー団は結成から半年ほど経つのであるが、地域住民との交流も増え結構な数の団員が増えている。
結成時、ビーの強さを目の当たりにしている巌や平などはなんの不満も無いのだが、少なからず不満を持つものがいる。
帝はそれでも頻繁に出入りしているので認知度も高い。しかし、ビーに至ってはビー団という名前を冠しているのにあまり顔を出さない。その為、ビーの強さを疑う輩が少ない数だがいるのが現状だ。
この勝負を見せることによってビー団の引き締めを考えたのだ。中間管理職は辛いと言うことか。
「さて、準備はいいかしら?ふむ、いいようですね。それでは始めることにしましょう」
桃は蛇拳を使うことにしたようだ。なんといっても映画でも使われた拳法、その為、知名度も高い。目立つことの大好きな桃らしい選択か。それに対してビーはというと、ビーも蛇拳を使うことにしたようである。
奇しくも同じ流派の拳法対決。ビーはあまり深くは考えていない様であるが。
桃は大きく足を開き、惜しげもなく太ももまで晒している。指先までぴっと伸ばして鎌首を擡げて対峙する。なかなかに絵になる。そこかしこで男たちから、どよめきが起こる。ビーも同様の構えをとる。男たちから今度は少々不満の声が起こる。白と黒のスカートに阻まれてその足は見えない為である。
帝が横で不穏な声を上げる。
「今、不満の声を上げた者、後で御仕置きです」
巌はその声を聞いて少し受けて見たい気がした。しかし、そんな事を考えている自分に気がついて愕然としている。
(俺ってひょっとして、マゾなのか?やっぱり、そうなのか)
薄々そうではないかと感じていた巌である。女子中学生にこき使われて、嬉々として働いてる限りはそうなのであろう。
そんなことを思い悩んでいる巌は置いといて、勝負に目を戻そう。
ビーと桃の拳法対決が始まった。
桃は擡げた鎌首の手刀をくねくねと変化させながらビーの首下を狙って突き出す。突き出された腕をビーが足で絡めて肩車のような体勢をとる。桃は慌てて側転にて振り落としにかかるが、足で肩口をロックした状態のまま首筋に手刀を突き入れる。一瞬のうちにそんな攻防を数度繰り返す。
始まった早々、桃は焦っていた。蛇拳の特徴としてその蛇の形態を摸したものであることもそうだが、その神髄はその柔軟性にあった。
人は力を籠めるとその部分の柔軟性がなくなる、そこに打撃を加えられればダメージを与える事ができる。 力が籠もっていなければ、暖簾に腕押しで、なんのダメージも与えられない。
蛇拳はその形態を模することによってあらゆる方向への柔軟な対応が出来る事に特化した拳法のひとつと言えるものである。その蛇拳に蛇拳で対抗するということは、相手の技量が如実に判ってしまう。柔軟性に特化したものに更に柔軟に対応されるのである、相手の力量を突き付けられる結果となるのである。
桃は困惑していた。ビーからは必殺の一撃は一度も無い。しかし、桃からは何度もビーに対して必殺の一撃を繰り出しているのであるのだが、のらりくらりと力の方向を反らされてしまい一度もダメージを与えられない。相手の力量をまざまざと見せつけられる事になったのだ。まるで遥かな高みにいる相手が 、稽古を付けてでもいるかのようであると桃は感じている。
桃は、攻防を繰り返しながら、問いかけていた。
「なぜ、あなたは、必殺の一撃を出さないの?」
問いかけながらも、その手は盛んに動いている。
「ん、なあに?桃ちゃん。よく聞こえなかったの」
「桃ちゃん!」
驚きの顔でビーを見る桃。戦いの最中にちゃん付けで呼ばれる事など初めてだ。戦いで無くともあまり呼ばれた事は無い。からかい半分で呼ばれた事はあるのだが。其れでなくとも技量は相手の方が遥かに上、桃は急に戦意が喪失するのを感じている。それでも、繰り出す手はやめない。このままでは負けるのは確実。
桃は急に使う拳法を変えた。元々の太極拳、基本に立ち返ろうと考えたのだ。
10年以上もの長い間、生まれた時からやってきたのだ、物心つく前から体が覚えている。基本が一番体に染みついている拳法である。
太極拳も蛇拳と同じように柔軟性に富んだ拳法である。太極拳は受け流す事を主体としているが、ただ、違うのは太極、即ち、陰と陽を持っている事である。受け流す柔ばかりではなく剛の拳も持つのである。
おじいちゃん、おばあちゃんが朝方、公園でやっているのも太極拳であるがこれは太極拳の柔の側面だ、一見するとゆっくり、スローモーな踊りの様にみえるのであるがその実、力を受け流す動作であり、力の弱いものでも逆らわず受け流すことにより倒されること無くしのぎ、有利と見るや剛の拳を持って叩きつぶすという 二局面をもつのである。
果敢に攻める桃。なんとか受け流すビーそんな攻防がつづく。若干、桃が有利か。如何に拳法が旨く天才的といっても本やネットから拾ってきた知識だ、そんなところに、そう、ホイホイと奥儀や秘奥儀が載っているはずもなく、徐々に押され始めるビー。
ビーの拳法に動きが出始める。今まで、それぞれの拳法を模倣するような使い方であったのだが、それがやがて、ミックスされ始める。
桃の打撃を蛇拳で方向を反らし、その動作のまま詠春拳の振りぬきで後頭部を狙いかわされたと見るやそに勢いのまま太極拳の蹴りの形そのままに蹴り技に移行する。なんとも複雑な技の組み合わせである。
(す、すごい。この子、拳法組み合わせてるんだわ 。今の蹴り技、大局拳よね。私より鋭いんじゃないかしら)
達人と呼ばれる拳法家たちは複数の拳法に跨って技を繰り出す事はまず無い。長年、体に覚え込ませたものである為、頭の判断より先に体が反応して技に入るからだ。達人たちの勝負は考えなしに機械的に体が動くのである。
桃との勝負は、達人の域に近ず来つつある為、桃にとってこの戦い方は理解できない驚愕のことである。
桃はビーとの攻防の最中、すこしづつ楽しくなってきている自分に気付く。自然と笑みが生まれている。
(楽しい、この子とずっと戦っていたい)
戦闘狂と言われても仕方が無い事であるが、桃と同年代でここまで戦闘を続けられるものは居なかった。ビーは死力を尽くして戦える初めての同年代の子なのである。
桃の戦い方に変化が生まれる。それは桃にとって語らいみたいなものであったのかもしれない。
(こんなのはどう?あなたに合せる事が出来るかしら)
(そう返してくるのね、流石ね、では、これは?)
(ははは、そうきたか~、ならこれは)
(それじゃあ、それじゃあ、こんなのはどおかなあ?)
(あれ~、そうくるの、これならどうかなあ)
桃はすでに笑っていた。ビーもちょっと疲れたような顔をしていたが、その口元は微笑んでいる。
桃は高々と足を振り上げる。それに呼応するようにビーの足と重なった。その状態で静止。。
二人の足が交叉し、数瞬の時が流れる。双方の太腿まで露わになったすがたはなかなかにエロチックである。見る角度に当たれば、のり出す者もちらほらと。ストッキングに包まれた白。もう一方はピンク地に斜めに白い線が描かれたものが見えたはず。
どちらかともなく足を下ろす。
黙って、二人はみつめ続ける。
帝がぽつりとつぶやいた。ビーは帝の顔を見ながら頷く。
「ビーお姉さま・・・」
桃が帝をちらりと見てから、ビーに視線を移して口を開く。
「この勝負、決着は無しでいいね?」
ビーも桃を見ながら答える。
「いいの?」
「あなたとは、また戦いたいから。ここで終わらすのは勿体ないね。それに、ちょっと、今日は疲れたね」
桃は「ふぅ~」とため息を付きながらその場にしゃがみ込む。つられてビーもしゃがみ込む。
「帝ちゃん盗らない?」
「帝も凄いけど、もっと凄い子見つけたね。その子に嫌われると嫌だからもういいね」
ビーはその子って誰だろうと考えていたが、結局判らなかった。
「あ、それから、私をビー団に入れてほしいね」
ビーは少し考えていたが、帝に丸投げしたようだ。
「ビー団に入りたいの?・・・帝ちゃん、いいかな」
「ビーお姉さまが良いなら良いですが、私のお姉さまはビーお姉さま御一人だと言う事を肝に命じておいて下さるなら結構です」
帝は暫く、桃を睨んでいたが急に微笑んだ。
「あなたも、ビーお姉さまの素晴らしさに気がつかれたのですね」
「う、うん。そうなるのかな。でも、この子凄いよ」
「そう、ビーお姉さまは凄いんです。そして、ようこそ、ビー団へ」
帝は桃に手を差し出した。その手に捕まる様にして立ち上がる。
「さ、ビーお姉さまも」
同様にビーにも差し出し立ち上げさせる。一堂を見渡しそして口を開いた。
「みなさん。今日、から、この方が仲間になりました。仲良くして下さいね」
一堂から「よろしく~」とか「ようこそ~」と野郎どもの声が上がった。
「なんか、照れるね。・・・まあ、よろしく~」
ぺこりと頭を下げる桃。今日から、ビー団に戦闘および少しの御色気担当が加わった。
帝の話はまだ終わらなかった。
「先ほどの最後にビーお姉さまと月輪桃さんが」
「桃でいいよ~」
「こほん。え~と、桃さんが足を交叉させた時に、不穏な動きをした者が居ました。そこのあなた、そう、あなたです」
渋々立ち上がる巌。運の無い。
「お、俺?」
「そう、貴方です。あなたは、ビーお姉さまが足を御上げになった時、なにが見えましたか?非常に嬉しそうでした」
巌はだらだらと滝の様に汗を掻いている。
「え~と」
「私も鬼ではありません。例外はありますが、正直に話せば怒らない事もありましてよ」
にっこり笑う帝。
「あぶない、巌、その換言に乗るのは非常に危ないぞ」とその場にいた多くの男どもは思ったに違いない。
「え~と、ピンク色の・・・」
「ピンク色の、それで?」
「ピンク色に白の線」
「それで、ああ、私の愛要の木刀をここに持ってきて頂けますか?ありがとうございます」
その時、横から助け舟が差し伸べられた。平だった。
「あの、お嬢、その辺で、巌も悪気があったんじゃなし、許してやって貰えませんか?」
「ああ、あなたも居ましたわね、あなたは、確か、桃さんとビーお姉さまが対峙された時、桃さんが構えをされた際、大きく身を乗り出して見ていましたわね。そして、ビーお姉さまが構えをとられた時、不満の声を上げていましたわ、私この耳でしっかりと聞きましたわよ」
「げっ、あれは、その」
藪蛇だった。
「ああ、証言の最中でしたわね、ピンク色に白の線のなにが見えたのでしょうか?」
「うう、ピンク色に白の線の入ったパンティが見えました。御許しを~」
「なんて言うことでしょう。清楚で可憐な可愛いビーお姉さまのショーツを目に焼き付けて、しかも下卑た笑いを上げるなど言語道断の行いです。そして、もう一人ですが、ビーお姉さまのショーツが見られずに不満の声を上げるなんて、万死に値します」
「あなた方、御二人とも同罪です。さて、何時もでしたら、私が裁定を下して、当然、有罪ですが・・・、沢山のみなさんがおられるのですから、皆さんに聞いてみましょうか」
「さて、この方たち御二人は有罪でしょうか?無罪でしょうか?裁定をお願いします。有罪ならば、私が即座に意識を刈り取ります。無罪ならば、なにも言うますまい。さあ、裁定やいかに?」
「「「「「「「ギルティー、ギルティー」」」」」」」
「お前らなあ、人ごとだと思いやがって」
「裁定が下りました。有罪です」
「お嬢、たすけ・・・」「たす・・・」
二人とも帝によって、即座に意識を刈り取られるのでした。若干、巌の頬がにやけているのは気のせいでしょうか。帝も上気していてすこし肩で息をしている。
「帝ちゃん、嬉々として嬉しそうなの」
「いつも、楽しそうでよいのお、でも、帝、時々、人が変わるのじゃ。でも、楽しそうだからよいのじゃ」
「私、ここで旨い事やっていけるか不安ね。帝と同じ事やれ言われても困るね。でもやってみたいかも」
三者三様の思い。
お読みいただきありがとうございます。
なんか、寂しいアクセス数です。ゼロって。
評価も変わんないしさみしいなあ、なんて・・・。
面白い文章書くのがこんなに難しいとは。
がんばろ。




