47.ビー、ミネラに抗議の声を上げる。
すいませ。格闘の表現難しいです。
次の日の放課後、またもやビーは家の近くのゲートボール場に来ている。
傍らには、帝、ミネラが立っており、帝は円筒形のケースを携えている。
帝は暫く、しゃがみこんで円筒形のケースをごそごそしていたが、次に立ちあがると、手には日本刀が握られていた。もちろん、刃は潰されている。しかし、当たれば確実に骨を砕くと想像するのは難くない。
「帝ちゃん、準備はいい?」
「はい、ビーお姉さま。でもよろしいのでしょうか?刃引きされてあるといっても日本刀です。鉄です。当たれば骨を粉砕します。私はいつも使い慣れたこの重さは良いのですが。ビーお姉さまに、もし当たったりしたらと思うと足が震えます」
「いいよ~、やっちゃっていいからなの~。そうしないと、ビーの強さがわからないの。帝ちゃんはビーが負けるの見たくないでしょ?」
泣きそうな顔をする帝。
「み、見たくありません。ビーお姉さまは、勝ちます、絶対です」
見かねたミネラが横から口を挟む。
「ビー、あまり、いじめるものではないぞ。帝はビーのことを信じておるでな、そう、嫌なことは言わぬがよいのじゃ」
口では誤っているが、その顔はにこにこしている。
「ごめんなの~、でもね、ビー知識は手に入れたけどね、体は動くんだけど、動作パターンを実戦でどう組み合わせるか全然わからないのね、だから、実戦形式での練習がひつようなの~。」
帝は少し不思 議そうに尋ねる。
「昨日の演武は凄かったのですが、それでも、必要なのでしょうか?」
「演武はね~、ただ、覚えたパターンを順番に続けるだけだから簡単なの~、一見すると達人みたいに思えるけどそれなりな人が見ると全然駄目駄目だと思うのね。桃ってひとも、結構、長いこと功夫やっている人みたいだから、念のためにね」
帝はビーの話を聞いても納得していなかったが、異論を唱えることなく、ビーに従った。
(絶対、ビーお姉さまは負けません。ビーお姉さま、慎重すぎます)
「それじゃあ、始めるね」
ビーと帝は4メートルほど離れて対峙する。帝は鞘からスラリと刀を抜き放った。刃引きはされてはいるが、禍々しく黒光りする75 センチほどの日本 刀が握られている。刃紋はまっすぐで乱れなく非常にすっきりとしており直刃と呼ばれるものだ。
相対するビーは、足を肩幅に開き、少し前後にずらして立ち、いつでも対応できるような体勢をとる。手は腰の位置で軽く曲げ、指の先まで真っ直ぐ突き出ししている。
ミネラが二人の間に位置し、そして開始を告げる。
「二人とも準備は良いか?良いようじゃな、それじゃあ、はじめ!」
慌てて、下がるミネラ。
帝は今、両手で刀を天に突き上げるように持っている、帝の刀を持つ手からふっと力が抜けた。それと同時に、帝の目に光が宿った。
前触れもなく一歩二歩と何の気負いもなく普通の道を歩むように前に出る。そして、刀をビーの右肩を狙って振 り込む。その動作に合わせる形でビーが半歩、身を引いて避ける。
帝の刀の軌跡が変化する。ビーに切り込んだ勢いのまま胴を切るように刀を振るう。それも、ビーは上体を逸らしさける。帝は二歩下がってビーと対峙した。
帝は、ビーの顔に視線を向けると、そこには、怒った顔のビーを目にする。
「帝ちゃん。判っているよね?手を抜いてしまうと駄目なのよ。帝ちゃん、真面目にやってなの」
ミネラは二人の一瞬の攻防にすこし、ぽかんとしていた。はじめ、何故ビーが起こっているのか判らなかった。それほど二人の攻防は力の入ったものであったのだが、ビーにはお見通しであった。
「ごめんなさい。ビーお姉さま。次からは真面目にやります」
手を抜いた、 という訳ではないのだが、やはり、ビーに打ち込むのは抵抗があったのか、すこし精彩さが欠けていた。動きにぎこちなさが出てしまい、踏み込みにも手と足のちぐはぐ感がでていたようだ。
「うん。じゃあ、今度はビーから行くよ~」
ビーは手で拳を作り、前後に大きく伸ばし交互に繰り出す。振りが大きいので帝は右に左に難なく避けることができた。
その動作に蹴りが加わる。帝が避けて体を捻った軸線に向かって蹴りを繰り出す。決まればそのまま勢いを殺すことが出来ず蹴り飛ばされてしまうだろう。軸線に蹴りが決まる寸前に帝は咄嗟の判断で刀の背で払う。蹴りが無駄とわかった瞬間にその払いに来た刀に沿って足を捻って刀の方向を逸らす。
そのまま逆足を帝 の首に絡めて引き倒そうと足を振り上げたが、その足の太もも部分に向かって刀の柄部分を突き出し足の勢いを消す。
ビーの体勢が崩れたと見た帝はそのまま突いた姿勢から刀で振りぬいた。真剣なら足が跳んでいるところである。しかし、その狙いもビーには判っていた様で突かれた勢いを利用して一回転行いそのまま帝の懐に飛び込み頭と肩で打撃を加えて数メートル後退させ対峙する。
「帝ちゃん、流石なの~。一発も拳を当てられなかったの~。今の拳法はね、八極拳っていうのね」
「ビーお姉さまも凄いです。私もつい我を忘れて刀を繰り出してしまいました。急に来られたので、体が反応してしまいました」
その攻防を影から見守る目が6つ。泪、天花 、白雨 の3人である。
3人は小声で話している。いや、それぞれが勝手に呟いているって言うのが正解か。
泪は感激している。あまりにも乗り出して見ているので、天花によりベルトを捕まれて出ないように引っ張られている。
「今の見ましたか?帝様、強くなられて。泪は、泪は感激です」
白雨も呟いている。ビーの強さに驚いているようだ。
「凄い、凄いよ~、ビー様ってあんなに戦えるの?素人じゃなかったの?私、適わないかも、いやいや、まだ、まだいけるよね」
ひとり、天花だけは冷静だ。しかし、心中、穏やかでないようで少し、拳に力が入っている。
「帝様とビー様は今のところ、互角。いや、少しビー様に余裕があるようね。帝様、も う護衛、要らないんじゃないかしら」
その3人が居る茂みを怪訝そうにミネラが眺めている。しかし、特になにも言わなかった。こちらも、邪魔さえしなければ放置ということだろうか。
その後、30分ほど帝との攻防が続いたが、不意にミネラの不満の声で終わりを告げる。
「ビー、わしともちょっとやらんか、のう。見ているとなんだかむずむずするんじゃ。わしもやってみたいんじゃが」
見ているだけでは我慢できなくなったのかミネラが不満顔だ。ほっぺたが膨れてちょっと可愛いい。
「ん?ミネラちゃんもやる?~、いいよ~。帝ちゃんいい?」
ビーも帝も全然息が上がっていなかった。帝は普段の鍛錬の賜物、ビーは本体からのエネルギー量増大 による一時的な活性化によるものか。
「はい、かまいません。ミネラちゃん、どうぞ」
期待に胸を膨らませるミネラ。にこにこしている。
「すまんの帝。ビー、いくぞ、よいか」
「うん」
ゴスロリ幼女 対 女子中学生 の対決が始まった。
ビーはミネラに対し半身になって対峙する。ミネラはなんの姿勢もとらず、自然体で立っていたが、息を吐きながらゆっくりとした動作で胸の前まで上げると両手をグッと強く握りそしてふっとその場から消えた。
見えないミネラから声が聞こえた。
「ビーよ、この体でわしがお前に勝とうと思ったらどうするのじゃろうなあ?」
「たぶんだけど、小さな体を利用して常に死角からの攻撃に徹す るの~、たぶん、今ミネラちゃんがやってるように」
「正解じゃ」
二人はそんな事を話しながらも、目まぐるしく体勢は変化している。ビーの後方に一瞬のうちに移動したミネラはその勢いのまま拳を繰り出す。しかし、その攻撃は読んでいたようで難なくガードする、同じような体格のもの同しの攻防であるとガードしても次の反撃に移るまでにタイムラグが生まれるのであるが、残念ながら ミネラは小さいゆえ、すぐに反撃がくる。
ビーはガードしつつ、左足を軸にして回転し右足でミネラの肩口をねらう。ビーにとって残念なことにその技は相手の勢いを利用しつつ放つものであったのだが、ミネラの打撃が弱かった為、ミネラの逃げる余裕が生まれる。
拳での打撃が無駄と判断したミネラはすぐさまま、ビーの動きに合わせて背中に貼りつく。やや、大ぶりに足を振り上げたビーの背後に比較的簡単に位置する。その背後から巧みに蛇の鎌首を模した手刀でビーのがら空きであった腕を取りにかかる。
ビーも盗られてはなるまいと、ミネラと同様に蛇の手刀で応酬するが、技をかけ始めの足を振り上げた状態からの強引な姿勢変更であったため体勢を崩してしまう。慌て てビーはその場から逃れようと数回のバク転にて退避するが、その回転に合せてミネラも移動する。
ミネラから逃れる事に失敗したビーは、その場で大きく体を振りまわすように回転させミネラとの間に隙間を作る。さすがにその回転には合わせられなかったようで、ミネラはその場で体勢を低くして避ける。ミネラが離れた事を確認したビーはその隙間に両手を揃えてとんっと押した。何の変哲もない掌底であったのだがミネラはあっさりと飛ばされる。
数メートル離れて再び対峙するふたり。双方、その顔はにこやかだ。しかし、ミネラは焦っていた。やはり、体の小ささ、そしてそのリーリの短さはいかんともしがたい。このまま長引けば負ける事は確実である。一応、体は小さいが姉であ る。どんな事をしても姉の威厳は守らねばならないとミネラ考えている。
ミネラには、策があった。あまり使いたくはないが、姉の威厳を守る為である。仕方がない。
(たぶん、この技はビーは覚えておるまい。すなおなビーは劇中の悪人の技を嫌う傾向にあるでのう。見ておっても多分、習得しようとは思わなかったはず。わしなら利があるならば、習得するがの)
「ビー、お主この技は覚えておるまい。無影拳じゃ」
○ャッキーチェーンの映画で劇中、その技の継承者を根絶やしにするためやってきた暗殺者が使っていた拳法である。
目の前で目くらましの様に手を振るのであまり見栄えのいいものではないが、なかなかに効果的であるとミネラは考えている。また、無影拳は 7割が足技であるため力の弱いミネラにとっても都合がよい。
ミネラは自分の顔の前で手のひらを広げ、左右に振る動作をした。それを何度も繰り返す。繰り返すごとに、微妙にタイミング、動かす距離をずらしている。その動かしている手に隠す様に反対の手を配置している。また、隠す手も左右交互に変えておりどちらで攻撃を行うか判らなくしている。
翳した手の平らで幻影を生み出すがごとく動かす。ビーは惑わされぬようにしっかりと手の平らを追うが、そこにこの拳法の意地悪さがある。集中して追うあまり、もうひとつの手から注意が逸れる。それた処で必殺の拳を叩きこむのである。
残念ながら、ミネラの思惑は外れることになる。その小さな体ゆえに。たしかに、ビ ーは惑わされはしたが、上体をすこし反らす事によって難なく回避する事に成功したのである 。
「むう。ずるい、ずるいのじゃ。手が届かぬではないか」
「だって、しかたがないの。ミネラちゃん、ちっちゃいから」
「奥の手じゃ」
ミネラは、ビーから距離をとった、少し、腰を落とし、両手を耳の横に広げる、そして技の掛け声を発する。
「太陽拳~!」
強烈な光に包まれるミネラ。ゼロ距離の転送を行ったのだ。今だ本体との常時接続プラグは無くとも自身を近距離転送するぐらいは余裕である。転送時に発する光を利用し、某アニメの技を再現したのだ。
「ミネラちゃん、ず~る~い~。それ、拳法と違う~。ミネラちゃん、目が二つだから使ったらだめなの」
ビーが抗議の声を上げる。変な処にこだわるビー。3つなら良かった のか?
「一 応、拳とついとるではないか、問題なしじゃ。昨日、漫画に載ってた技なんじゃが、存外効くもんじゃのう。ビー、目が眩んだじゃろう、これでわしの勝ちじゃ」
不敵な笑みを浮かべるミネラ。
「いいもん、ビーも使うもん。え~と、界王拳~」
「まて、ビー、お前、脳のクロックタイムを上げる気か?それでは相手にならんでは無いか。わしはまだ、この体の制御そこまで深くできんのじゃ、」
高速に動きまわるビー。目では追い切れない。ビーがやったのは、ミネラの言っている様に、脳と体のアクセスする時間を倍加したもので、一時的に体に負担はかかるが通常の倍の速度での稼働が可能になるものである。見た目、非常に界王拳に似ているからいいか。
ミネラは簡単に捕まる。ビーは目が霞んでいるといっても、薄 ぼんやりとは判っているので簡単にミネラに迫りころんと倒すことが可能だった。その状態 からなおも、ビーはある、技を繰り出そうとした。
「か~め~」
手首を合わせて腰だめに構える。その間も手の平部分には赤黄色い光がぼんやりと生まれ始める。
「か~め~、ん?あ、間違ったの。もう一回ね」
「うわ~、ビ、ビー、ストップじゃ、ストップ、ストップ。はやまるな~」
「ん?あ、ミネラちゃん?」
「ビー、お主、今、なにをやろうとしたんじゃ?お主の手から高エネルギー体が活性化しているのがみえるのじゃが」
「え~とね、本体からね、手首のところに、亜空間繋げてね、太陽のプロミネンスをちょこっとだけ出そうと思ったの。ね、良い考えでしょ。なんかそれらしく見えるような気がするの。でも、技を出す時の言葉間違えちゃったの、てへっ」
ミネラはビーの言葉を聞いて青冷める。
「てへっじゃないわ。ビー、お主、プロミネンスの 大きさをどれくらいと思っておるんじゃ?この地球より大きいんじゃぞ。そんなものほいほい出されたんじゃたまったものじゃないわい。空間、開いた瞬間に辺り一帯焦土と化すわ」
のほほんと返すビー。
「え~、そうなの?・・・あ、ごめんなの。本体のサイズで考えてたの」
それまで黙って見ていた帝が感激で声を震わせながら声を上げる。その顔は赤く上気している。
「ビーお姉さま!凄い、凄いです。ミネラちゃんとの攻防、凄かったです。私では手も足もでません」
「ありがと。帝ちゃん」
「ビーお姉さまなら、あの世紀末漫画の北斗や南斗を出来るんじゃないでしょうか?」
「ああ、あれは出来るけどやらないの~、血が出るの はちょっとやりたくないのね、痛いのも駄目なの。あの漫画、ビー苦手なの」
「そうなのですか?」
「だって、触ったら死ぬのよ、そんなの嫌じゃない?帝ちゃんは好き?」
「う、カッコ良いとは思うんですが・・・。ビーお姉さまがお嫌いなら、私も嫌いです」
「ん?ビーは嫌いじゃないよ、ただ、苦手なだけなの」
「そうなのですか?・・・よかった」
帝は好きだったようだ。帝にとっては空想物語でも、ビーにとっては技術的に模倣可能なので現実的な問題である。
茂みの中に居る3人。目が点である。
泪は自身が目にしたことが信じられなかった。
「今の、み、見ましたか。私、ビー様の最後の動きは、全然みえませんでした」
泪の言葉に反応する天花。その声はすこし緊張しているようであった。
「見えませんでした。あれも、ビー様の能力なのですね・・・。ビー様、超人?一瞬に消えて、次に見えたのが、ミネラ様が倒れてその傍らに立つビー様でした」
白雨も皆と同意見だった。
「ビー様、凄いよ。あの御歳であの力。将来どこまで強く成られるのか。もう私、叶わないよね。ビー様と対決?無理無理無理無理~。負ける。私、結構強いはずなんだけど。それにしても、負けたとは言え、ミネラ様も凄いよね。まだ、小学生低学年ぐらいよね。あれ、5年生だっけ?どんだけ強いの?あの姉妹。それにあの光った技ってなに?フラッシュライト?」
「今までは、不思議能力を使う、ぽわぽわした少女って思っていましたが、見方を変えなければなりません。これほどの御力を御持ちだとは、この泪、露とも思いませんでしたわ。気配察知にも長けているご様子、なるほど、これほどの達人でしたら納得です」
ビーの武人としての評価が高まった。
「天花、御菓子の件よろしくね。ちょっとでも早く顔見せしとかないと、こりゃまずいっしょ。ビー様なら、私たちひと捻りだもんね。あ、ミネラ様、こっち見てる。あれって判ってるって顔だよね」
天花が顔をあげると、怪訝そうな顔のミネラが泪たちが潜む茂みを見ていた。あまりに騒がしい為、気になったようだ。一歩二歩、逡巡しながらも近かづいていこうとしている 。
「まずいですわ、天花、白雨、移動しますわよ。宜しいですわね」
「「はい」」
ミネラが声を掛けるのが一瞬遅かった。出来るだけ遮蔽物の影を利用して撤退する3人。正に風、逃げ足だけは速い。
「のう、御主たち・・・。むむ、居なくなりおった。なんじゃ?消えんでも良かろうに、なんとも恥ずかしがりな奴らよのう、まあ、よいわ」
くるりと回って戻るミネラ。
「とりあえず、ビー。あの先ほどの『かめはめなんとか』は封印じゃ。わかったか」
ビーにも思うところがあったようだ。
「うん、ミネラちゃんも太陽拳は駄目だよ」
言いがかりだと主張するミネラ。
「むむ、それはいいじゃろ」
ビーには明確な基準があるのかきっぱりと否定する。
「駄目駄目駄目、だってミネラちゃん、目ふたつだもん。あれは、三つないと使っちゃだめなの。これは決まりなの。ね、帝ちゃん」
帝は基本的にビーが黒といえば白でも黒である。
「はい 、ビーお姉さまがそう言うのですから、そうなのですわ」
帝がそこまで盲目的ではないと思っているミネラ。
「むう、そうなのか」
まじめな顔で断言する帝。
「そうなのです」
帝がそうと断言するのでミネラもそうなのかと思い始める。
「うむ、判ったのじゃ」
うやむやの内に太陽拳も封印されたようだ。
そんなこんなで、その日は、暗くなるまで練習をするのだった。
お読みいただきありがとうございます。
格闘の表現は苦手です。




