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46.ビー、一休み。泪、天花、白雨の秘密会議

すいません。拳法対決はまだまだ先です。

 時は少し戻って、帝が桃と対決を決めた日の昼休み。

 

 トゥーネックパーレント女学院には、公式、非公式問わず様々な組織が存在する。


 これは、非公式団体のひとつ、その名は『麗しの帝会』、そう名前からおわかりの様に、帝のファンクラブのひとつだ。


 中学生ながら非常に美しい帝は学院でも人気のある人物のひとりである。今までは『孤高の暮新月』と言われ、恐れられる存在で会ったのだが、その反面、美しすぎる容姿からファンも多い。 


 最近、特に、表情が柔らかくなったと噂され、その笑顔を向けられる機会も増えた為、にわかファンも多い。

 

 そのファンの定例会で話である、表向きは。

 

「今日、帝様は桃と言う転校生と衝突されました 。なんでも、次の日曜日に勝負をなさるとか。その勝負は、帝様が懇意にされているビー様が相手をされるらしく、勝負の商品は帝様ご自身とか」

 

 その報告を聞いていた中学生とはとても思えないナイスバディーの巻き巻きドリルの髪型のお姉さまがパイプ椅子を蹴倒して立ちあがる。


「なんですって~?もう一度お願いします。わたくし、自分の耳が信じられません。なにか、とても異常な話を聞いたような気がするのだけれども」

 

 彼女の名前は竜潜月泪りゅうせんづきるい隣に座る、ショートカットで小麦色をした如何にもイケイケの活動的な少女、いや、女の人は、三十日月白雨みそかづきはくうと言う。


 白雨が「あらあら」と言いながらパイプ椅子を起こす。この少女もとても中学生とは思えない。立派なその胸に注目してしまう。どう見ても25、 6ぐらいだ。

 

「いいえ、泪、事実です。勝負の商品は帝様ご自身ということです」


 泪に答えた少女は、偃月天花えんげつてんか)と言う名だ。すこ~し、先の二人とちがってスレンダーである。

 

「天花、それは、本当のことなの?」


「ええ、白雨、真のことです。嘘、偽りございませんこと、わたくし帝様に御誓い申し上げます」

 

 『麗しの帝会』は、トゥーネックパーレント女学院の3年生を中心に構成されており、この会の発起人である会員番号001の竜潜月泪りゅうせんづきるいが会長を務める。


 構成メンバーは30人ほどの比較的大きな組織である。会のおおやけの目的は、非公式の組織なのにおおやけもなにもないのであるが、帝を愛でる事にある。最終目標は一緒にお茶をしたいと言うことらしい。


 会の本当の目的は陰ながら帝のサポートを行うものである。そう、会員番号001、002、003の三人は暮新月家を陰から手助けする家の者で、帝のことを信仰の対象にも似た憧憬で見ている。


 実は3人はこの学院の生徒ではない。帝のそばに居るために生徒の振りをして入り込んでいるのである。


 3人は学院に入学以来の孤立する帝の状況に影ながらなんとかしようと画策していたがことごとく失敗をしており憂えていたのであるが、ビーの出現によって若干の好転をみせる。今の状況は3人にとって喜ばしい出来事でずっと続いて欲しいと願っている。

 

 因みに、帝が猫を欲しがる原因となった構内に迷い込んで来た猫はこの3人が帝の孤独の慰めにと手配したものであったのであるが、結局、帝のクラスメイトに阻まれて帝は猫を抱く事は無かったのである。しかし、結果的に帝は猫に興味を持ち、猫をねだり、弾いてはビーと出会う切っ掛けになったのである。やる事はすこし抜けているが、えらいぞ3人。


 定例会と言っても、今、部屋には3人の姿しかない。毎昼時の例会はこの3人だけの秘密会議である。


「これは一大事です、皆さま、帝様が好いてらっしゃる、わたくしたちの大恩人とも言えるビー様でしたら、納得ですが、どこの馬の骨ともしれず、野山を駆け巡っているようなお猿さんに盗られる事などあってはなりません。ビー様を疑うわけではありませんが、わたくしたちでなんとかしないとなりませんわね」


 泪は拳に力を込めてドンっと机を叩いた。それは彼女自身の決意の表明であったのかもしれない。その目は少し狂喜に染まっている。


「この件に関しても、皆さま、何時もの様に帝様には知られてはなりません。よろしいですわね」


「「はい」」


 この3人の活動は暮新月の現党首である帝の父親の愛は知っているが、帝は知らない。知らないどころか、この3人とは面識がない。


 3人は帝の前に出ない様に細心の注意を払っている。帝の能力がまだ未熟だからと言っても流石に目の前に出てしまっては心中を読み取られてしまうからだ。


 因みにビーはと言うと、たまに物陰にいる3人に向かって笑いかけたり、頭を下げたりしているところをみると認識はしているようだ。邪魔をしなければ放っておくと言ったところだろうか。


「天花はこの桃とか言う者の調査をお願いします。白雨はこのまま、引き続いて帝様の護衛を、わたくしは、党首様に現状報告にまいります。以上です 。解散」


「「はっ」」


 と、そのまま、飛んで消えればカッコ良かったんだが、残念ながら、普通に扉を出て行く3人だった。


* * *


 その日の放課後、また3人は、人気がない今は使われていない教室に集まっている。天花から報告をしたいとあった為である。


「今、帝様は図書館で中国拳法について調べられていますわ、少し時間がありますが、警護の為、手短にお願いしますね」


 直ぐにでも警護に戻りたい泪は少しいらいらした様子だ。


わたくし天花が桃について報告をさせていただきます。早速ですが始めさせて頂きます。この者は、本日、トゥーネックパーレント女学院に転校して参りました。長月市にやってきたのは昨日のようです。 昨日、港のビー団の拠点に姿を見せております」

 

 手に持っているレポート用紙をチラチラ見ながら話す天花。


「何故、ビー団の拠点に現れたのかな?」


 白雨がふと疑問に思った事を口に出す。


 白雨と天花は子供のころから見知った中で同い年だ。なので、基本ため口である。今は天花が主に調査、情報収集、白雨が警護を中心として活動している。それらを纏める形で泪がいる。泪だけ他の3人より数歳年上だ。何歳かは判らない。秘密だそうだ。


 窓の外の木立には雉鳩きじばとが不思議そうに教室の3人を覗いている。


 時折、思い出したように「で~でぽっぽぽ~、で~でぽっぽぽ~」と機嫌良く鳴いている。


 気温は道行く人々が襟を立てて歩むほどの寒さであるが、なんとなく日差しが暖かである。いまだ木々の芽は堅く閉ざされてはいるが少しだけ日差しが優しくなっている。


「どうも、不良を探していたみたいです」


 泪が怪訝そうに問い返す。その指は苛立たしげにとんとんとんっと、机を忙しげに叩いている。


「不良?」


 天花は泪に視線を向け報告を続ける。


「はい、この者はどうやら、不良に喧嘩を売って回ると言う事を繰り返しているようです。以前、住んでいた町でもそんな事をしていたようです」


 さらに泪は短く問いかける。


「なぜ?」


 天花は泪の性急で苛立たしげな様子にひとつ小さくため息を付いた。泪の苛立たしげな様子は、いつもの事であるのでそのまま話を続ける。


「はい、これから、話すことに繋がるのですが、どうも強い者を探していたように思えます。桃の家は中国拳法の道場を営んでいたようで、以前は相当羽振りが良かったようですが、2年前の同門同士のトップを決める大会で負けそれ以来道場が傾きはじめ、道場を手放してこの町にやってきたようです。因みにこの町は桃の父親の故郷です」


 泪は簡潔にこれまでの話から結論を述べる。


「桃は帝様の能力に目をつけ、帝様をその大会に出場させたいってことかしら?」


 天花は肩をすくめながら同意を述べた。


「はい、そのようです」


 今まで黙って聞いていた白雨が一堂の思っていたことを口に出す。


「ずいぶん、稚拙な計画、計画とも呼べないわね。帝様に勝てるんなら、自分の方が強いんだろうし、もし、負けたら、相手は協力してくれないだろうし、どの道、うまくいくとは思えない話よね。まあ、帝様の剣術は発展途上なので旨く立ち回れば勝機はあるのだろうけど。所詮、中学生の頭で考えた計画ね。今はわたくしたちも中学生だけど、そろそろ、年齢的に中学生っていうのはそろそろ無理があるかしら」


 ふふふ、と自嘲ぎみに自身の今の様を笑う。どうやら、彼女は中学生と称してもぐりこんでいることに限界を感じているようである。童顔な彼女たちはまだまだ若いといえるが、流石に中学生とは言えない体つきをしている。実年齢は10歳ほどプラスされなければならないようである。


 白雨は胸を付きだし、扇情的に自身の胸から腰にかけてを両手で撫でるように 滑らせる。それを見ていた天花も同じように自身の体で滑らせてみたが白雨と目が会い、なんとも言えない苦虫を噛み潰したような顔になり、咳払いをひとつしてから話を続けた。


 天花はこのコスプレとも言える中学生に扮することを結構気にいっているようで、白雨の言葉に少し反論がある様だったが、口には出さなかった。天花だけ少々胸の辺りが控え目で、つる~ん、ぺた~んだった為その事を持ちだされるのは明白だったからだ。


「桃は言葉巧みに、帝様との勝負を避け、ビー様との勝負に持ち込んだようです」


 泪は少し真面目な顔をしながら話した。初めこそ真面目な表情であったが、我知らず表情が少し緩んでいた。


「帝様はビー様のことになると我を忘れる処があるから、そこを突かれたのでしょう。まあ、そこも帝様の可愛らしいところではあるのだけれども。もう少し冷静になってもらわないといけないわね、次代の党首なのだから」


 彼女たちの口元には笑みが浮かんでいる。可愛くて仕方がない様子である。お姉ちゃんたちが歳の離れた妹に思い描く感じだろうか。


 泪はビーの格闘経験について意見を話す。少し、心配そうだ、もちろん、ビーではなく負けたときの帝に対してであるが。


「ビー様は格闘経験はおありなのかしら?未経験だとちょっと御辛いことになるかも。あの御姿からは、ある様にはみえませんわ」


 天花が否定的な意見を述べる。


「ないでしょうね。あのぽわぽわした雰囲気のビー様にはとてもじゃありませんが、無いと思います。逆にあの雰囲気が消えてしまっても悲しいですしね」


「ここは、わたくしたちが頑張らないといけませんわね」


 もちろん、帝の為である。


 次いでとばかりに天花が試合について話す。


「ひとつ、面白い情報があります」


 白雨が興味深々とばかりに聞き返す。


「なんなの?」


「直接、本件とは関係ありませんが、発端となった桃の家が負けた試合なのですが、どうやら、万年2位だった、道場が裏工作を行って出場者に怪我を負わせることをしたようです」


 天花は写真を数枚机の上に載せた。その写真は2年前の試合の時のものでガッツポーズをしている大男のうしろで、悔しそうに俯いている桃の姿が映っていた。若干今より幼く見えるが小生意気そうな感じは変わっていなかった。足でも痛めているのかテーピングされていた。


「なんでも、桃の父親が交通事故に会い、次の者は食中毒になり、桃に代表が回ってきたとか。その桃ですがいつも使っている得物が無くなり、靴までもなくなっていたらしく、極めつけは、前の日に、数人の暴漢に襲われて足を痛めたらしいですわ」


 白雨が呆れて言葉を発する、その声には若干の桃に対する同情が含まれていた。


「それはあからさまな、それで、よく疑われなかったものよね」


 方を竦めながら天花が答える。


「どうも、結構な額のお金が動いたらしいです」


 泪が理解出来ないとばかりに口を挟む。基本、不正行為には嫌悪感をを持つ泪。自分のことは少々棚に上げている。


「そんな事をやるメリットがその大会にあるのですか?同門同志の試合なのに」


「名誉かな?」


「それで、その方たちの強さはどれくらいなのですか?」


「話になりません。所詮、アマチュアレベルですので問題ありません。わたくしひとりでもすぐに制圧できるレベルです」


「それならば、すぐに潰しておきましょう、2年前の不正の証拠を集めておいて桃との取引材料になるかもしれません。帝様の学院で血なまぐさいことはしたくありませんし。それでも、桃がごねるようなら叩きつぶしますが」


 泪によって、その道場は潰す事が決定された。御気の毒である。


 非常にあっさりと了承する天花。


「それでは、これから、潰してきます。報告は以上です」


 後ろを向き、直ぐに扉から出て行こうとした天花に、声を掛ける白雨。


「あ、天花、私も行くよ。最近運動不足でさあ。ちょっと鈍ってるんだよね。泪、いいかな?」


 一応、泪にお伺いをたてる。やめる気はさらさら無いのだが。


「白雨、ほどほどにするようにね。殺しや永久に残る様な傷害は駄目ですよ 」


「了解。それじゃあ、行こっか。く~、久々に暴れられる~」


 左手を肩に置いて、右腕をくるくる回して準備運動のアピールをする。


「白雨、相手は弱っちぃですよ。あんまり期待しない方が良いかと思います」


 ため息をつきながら歩く天花、それに対し、うきうきしながら教室を出て行く白雨。なかなか対照的な二人だ。

 

 ひとり残された泪は誰に言うでもなく言葉を発する。


「やり過ぎなければ良いのだけれど・・・。さて、警護に戻るとしますか。帝様まってて下さい。泪が直ぐに参ります」


* * *


 次の日の朝、いつものように集まる3人。


「昨日はどうでしたか?二人とも、結構疲れたのではないですか、小さいとは言え、それなりの道場をひとつ潰したのですから」


 それなりの使い手が居てるだろうと思い、二人で行かせたのだが、それも杞憂だったようだ。


「泪、全 然、ぜんぜ~ん、たいした事なかったよ。厳つい兄ちゃんたちがさ~、わらわら、わらわら出てきてね~、こりゃ行けるかもって期待したんだけどね。弱っちいの。でもね、ひとりね、可愛い子が居たんだよね~、私ね~、思わずお持ち帰りしちゃった」


 にひひ、と笑顔で答える白雨。その話を聞いて、そちらのほうも釘を刺しておくべきだったかと反省する泪。


「これが、証言を録音したボイスレコーダーと裏金のリストです。一応、主要相手先にも確認取ってあります。拳でですけど」


 天花が一纏めにした資料を泪に渡した。


「そう、御苦労さま。何時もながら流石です。白雨にも見習ってもらわないといけませんね。色と力ばかり追いかけなければもっと良いエージェントになれるのだけれど・・・」


 悪びれもせず、あっけらかんとして、白雨が口を出す。


「へへへ、昨日はね、結局6回もしちゃった。最後は、あの子泣いて許してくれって言ったので、逃がしてあげたけどね、一応、紐は付けたよ。また、やりたいし」


「ほどほどにしなさいよね、白雨。・・・わたくしのほうも報告があります。ビー様についてなのですが、昨日、帝様とビー様はビー様のご自宅で中国拳法について御勉強会を行われました。その後、近くの公園にて演武を行われたのですがそれはもう美しいものでした」


 天花が驚いた表情で


「ビー様って拳法の嗜みが御有りでしたのね」


 泪がきっぱりと否定する。


「いいえ、学院を出るときは知識はありませんでした。そして、勉強会の後、家からでてくると達人のような素晴らしい演武を舞われたのです。あれは、少し綺麗過ぎる気 がしますが、基本に忠実で、技の巧みさは秀逸で手数は無限を感じましたわ。わたくしと競ってもいいとこ行くのではないでしょうか。でも、わたくしは負けませんが」


 天花は驚きの表情のまま聞き返す。


「そんなに凄いのですか?ビー様。ビー様の能力でしょうか?」


 泪は腕を組みながら話を続けた。


「たぶん、そうでしょう。帝様が心酔するはずです。党首の愛様も一目置いてますし」


 天花は以前聞いたことを話した


「私、以前、愛様から話を聞きました。なんでも、昔、ビー様とその保護者?の大地様と若い頃に一緒に戦ったとか、正義のサイキッカーとかなんとか。若い頃って何歳なのって突っ込みはいれませんでしたけど、最初、冗談かなって思ったんですが、あれって本当なのでしょうか?」


 白雨も同意するように、以前、聞いた話しを話す。組んだ腕の間から、暴力的な胸が主張している。清楚な女学院の制服からは逆に酷く妖艶に見える。


「あ、私も聞いた聞いた。あれは、クリスマスの日だったかな 。帝様の護衛で影から聞いてたんだけど。愛様、嬉しそうに正義のサイキッカーやってたって話してた」


 白雨はビーに対する疑問がすこしづつ大きくなってくるのを感じた。 


「ビー様って何者?ひょっとして私たちよりずっと年上だとか。それはない、ないよね?愛様のこと愛ちゃんって呼んでるみたいだし。大地様は愛様のことを愛って呼び捨てだし」


 天花は自動販売機で買ったオレンジジュースに口を付ける。その横では朝ごはんがまだだったのか、白雨がメロンパンにかぶりついている。


「ビー様がテレポーターて言う事は判ってますけどね。それだけでも、凄いことですよね」


 大口を開けてかぶりつきながら白雨が話す。なので、少し聞き辛い。


「もごもご、あ~それそれ、護衛泣かせよね~。昨日も急にビー様と帝様消えちゃって暫く途方に暮れましたよ私は」


 鞄から1リットル入りの牛乳を取り出し、そのままごくごく飲み始めた。なかなかに豪快である。けぷっっと少し可愛い音を出しながら机に牛乳を置いた。


「私たちにはそんな能力無いもんね~。あれは困るわね、控えて貰うってこと出来ないかしら。ビー様は私たちのこと知っているのよね、偶に目が会うし、こそっと帝様に内緒で頼んだら駄目かしら」


 泪が立ち上がり窓辺から外を眺めながら話す。まどの外では、通学する生徒たちの姿がちらちら見え始めている。


「今までは帝様を連れてのテレポーテーションってしなかったのに、なにか、心境の変化かしら。それだけ、帝様に気を許してるってことだったら嬉しいのだけれど」


 天花も一緒に窓辺に移動し眺めている。


「そうですね、困りもんですよね。今度、御菓子でも持って御願しに行ったらどうでしょう?」


 段々と、護衛愚痴大会となりつつある。


「ビー様、御菓子好きだもんね。案外、聞いてくれるかも。うん、そうしようよ、はい、決定~。天花が御菓子、買ってくるのよ」


「なんでよ~、私、別にいいもん」


「あ~、天花が言いだしっぺでしょ、だから、買ってきて~」


「え~、嫌よ。私、護衛あんまりしないし~、調査担当だもん」


「あ~、ずる~。ずるっ子がいる~、ここにずるっ子がいま~す」


 天花が折れた。


「わかった。判りました。買ってくればいいんでしょ」


 にこにこしながら、白雨が話す。問題起これば大抵天花が折れる。 


「ありがと。だから天花好き。愛してる」


「調子いいんだから、でもお願いしに行くのは白雨だからね」


「え~、それもおねがい。だめ?」


「上目使いで言っても駄目です」


「けち~」


 泪はちらちらと時計を気にしている。そろそろ、生徒も登校してきているので教室を出て行かなければならないのだ。


 因みに、帝は車通学であるのでその間は護衛は必要ないので、彼女たちは、ここで帝が来るまで会議をしている。


 帝が家に居る間は他の護衛がいるので護衛はしなくてもいいのであるが、彼女たちは秘密で護衛をしている。彼女たちの担当は帝が登校してから家に帰るまでであるのだが・・・。


 泪が盛り上がっている二人にそっと声を掛ける。二人の邪魔をしてはいけないような気がしたからだ。


 泪は、結構荒れ事の多い自分たちには、こんな和気藹々とした時間が貴重であることを知っている。


「え~と、いいかしら?」


「「はい」」


 少し、ばつが悪そうにしている天花、それに比べて白雨は、返事はしたのだが、なにも考えていないようで、きょとんとした顔をしている。


「そろそろ、今日の会議は終了するはね。ああ、もうひとつ情報があったわ。ビー様には綺麗な妹様ががおられました。名前はミネラちゃん。凄い綺麗な子でね。わたくしファンになってしまいました。」


 泪はキラキラした瞳で話を続ける。昨日のことを思い出しているのか、少し頬が赤く上気している。泪は可愛いものには目がない。


「ビー様の演武の後でね、このミネラちゃんがとことことこっとやって来て、ちいさな体でビー様と同じように演武されましたの。それはもう可愛くて、わたくし思わず、白雨じゃありませんけど、お持ち帰りしたくなりましたわ。もちろん、一番は帝様ですが」

 

「あ~、はいはい。それじゃあ、警備に戻ろうか、天花、行くよ」


「あ、待って、白雨。泪、それじゃあ行きますね。まってよ、白雨」


 二人が教室から出て行った。


「もう、・・・。ミネラちゃん、お可愛らしいのに」


 ひとり残される泪であった。

お読みいただきありがとうございます。

警護者の愚痴大会ですね

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