44.ビー、一休み。桃と帝、再び、対峙する。
桃と帝が再び対峙します。
あたしの名前は月輪桃って言うね。今日からトゥーネックパーレント女学院に通うことになったんだけど、早速、窮地に陥っているのね。御約束とは言え神様のいじわるね。
あたしは実は、昨日のことはすっかり忘れて、ウキウキ気分で家を出たのね。制服可愛いし、トゥーネックパーレント女学院って言ったら結構有名だしね。
トゥーネックパーレント女学院は、丘の上にあって、いやいや、もうあれは丘のレベルを越えていると思う訳ね、山登りね、ひぃひぃ言いながら登ったのね。
階段付近に厳つい御兄さんたちがいたのね。
不良かな?ってちょっと期待したんだけどね・・・、なんでも自主警備してるって言うじゃないね、昨日、瞬殺されてたビー団と同じ人たちらしいのね。
結構人気あるらしくってね、なんか女の子からクッキー なんか貰ってる人いてたんだ~。最近の不良はたるんどるって思っちゃったね。
だって、そうじゃない?
なに、良い人ぶってんのね。桃が倒せないじゃないね。倒したら。即、桃、悪者決定ね。
昨日の綺麗な女の子、勇気があるね、その、ビー団をやっつけてたんだからね。絶対、悪者ね。悪者の女幹部、その名は「お嬢」へへへ、なんつってね。
触らぬ神に祟りなしって言うね、ビー団は放置ね。桃の悪い噂が立っても困るね。
フフンフンフン~♪。
鼻歌を歌いながら来客用のスリッパ履いて職員室に向かったね。
場所は編入試験を受けた時に来た事があるから判ってるね。
そういえば、編入試験オール100点で入った子がいてるらしいね。信じらんないね。
桃の点数は教えて貰えなかったけど、桃の答案用紙見てた先生は「普通、こうよね」って呟いていたけど、あれって、どお言う有意味かしらね?
あたし、結構できるはずなんだけどね。
靴は下駄箱がどこか決まっていないから来客者のとこに置いてきたのね。
職員室は校舎がO字型に配置されていて昇降口からは一番奥にあるのね、角を2回曲がった先にあるんだけど、ここであたしは会いたくなかった人物に合ってしまったのね。そう、神様が意地悪をした結果、昨日の、あの「お嬢」にね。
会った瞬間、あたしは、まわれ右したね。
そのまま、何食わぬ顔をして戻ろうとしたのだけれど、ちょっとだけ「ひっ」って言う悲鳴が漏れたのは仕方がないことだと思うのね。
我ながら素早い動きだったと思うね、でも、一瞬遅かったね。相手は覚えていたみたいね。
どうして、神様はあたしに試練を御与えになるのですか?って、信じてもいない神様に聞きたくなったね。
あたしって、不幸ね。絶対不幸確実、二重丸ね~。だれかこの哀れな仔羊ちゃんを助けて下さい~。羊毛のなかに三節棍持ってるけどね。にひ。
* * *
「あれ、あなたは?どこかで会ったわよね」
内心焦りながら無駄な抵抗と知りつつ初対面であると主張する。
「イエ、ワタクシハ、アナタトアウノハ、ハジメテデスノネ」
完全に棒読み口調だ。心なしか体の動きも角々している。安物のおもちゃのような動き。
「いえ、それは、嘘です。私には判ります。会ったことがあるはずです」
帝はきっぱりと否定する。それはそうだろう、能力を使うまでもなく、対峙している人物の動きがあからさまにおかしいのだから。
いかし、いまだ、能力のコントロールの甘いところのある帝は対峙している人物の表層意識に限定して常時読みとってしまう。さすがに深層意識については集中しなければ無理なようだ。
(うう、さすが、お嬢、見逃してはくれないね・・・この目、凄みがあって怖いのね~)
「あなた、今、「お嬢」とか思いましたわね?私を「お嬢」と呼ぶのはビー団の方々ぐらいのもの・・・、ビー団・・・、あなた、昨日、ビー団の処にいましたわね。そう、確か、桃とか言う名前の」
(え、今、この人、思ったって、お嬢とか思ったって言ったね、それって?)
「あ!つい、うっかり言ってしまいましたわ、仕方ありませんわ。ええ、言いましたよ。あなた、私の前では嘘は無意味です。あなた、なにを企んでるんですか?」
(この人、本当に心を読んでるね~、それって、でも、昨日のは瞬殺だったから心を読む事は関係ないね、元々強いってことね?この人最強じゃないね?)
桃は自分でも気がつかず、呟いてた。
「欲しいね」
桃は何時の間にか前に進み出ていた。自分でも気付かない内に。
「は?あなた、何を言っていますの」
桃の中で、怖いと言う感情より欲しいという感情が勝ったようである。帝の手を両手で包み込み、あたかも愛の囁きにも似た心からの渇望を吐露した。
「あなたが欲しいね。その強さ、あなたの強さがあればあたしの夢が、あの世界が取り戻せるね」
帝は混乱している。その顔は少し赤かった。慌てて、桃の手を振りほどく。
「駄目です。わたくしの身も心もビーお姉さまのもの、あなたには、あげられません。それに、わたくしより、ビーお姉さまの方が何倍も強いです」
帝は大きく深呼吸をしている。何とか平静を保とうと努力しているようだ。横で見ているものが居たら安物のメロドラマを見ている様だと思ったに違いない。
「あなたよりも強いって、そんなの信じられないね、絶対ありえないのね。本当ね?」
桃の疑う言葉に帝の雰囲気がすこし変化した。わたわたしていた雰囲気を一変させ、目つきも鋭くなっている。
「あなた、ビーお姉さまを疑うんですか?」
桃に帝から膨大なプレッシャーが伝わってくる。
(やば、虎の尾を踏んだね?あたしは無事、帰れるね?さすがにこのプレッシャーは怖いのね)
桃は試合で上位者と対峙した時と同じようなプレッシャーを感じている。
やはり、この人は強い。と、認識を新たにする。その上でなんとか考える。この状況を旨い事乗り越える事が出来ればあの夢に近づく事が出来るかもしれないから。
「あたし、ビーさん知らないね。その人そんなに強いの?え~、本当に?あなたの妄想じゃないのね」
妄想と言われて激昂する帝、今にも掴みかからん勢いだ。
「あなた、それは聞き捨てなりません。ビーお姉さまは最強です。なにものにも負けません」
帝の反応にほくそ笑む桃、意外に豪胆である。
武道家として培ってきた勝負師魂の賜物であろうか、先ほどまで怖がっていた桃とは別人のようである。
流石は勝負師、切り替えが早いと言うべきか。
「それじゃあ、こうしましょうね。あたしとそのビーさんが勝負して、もしビーさんが負けたらあなたはあたしのものね、あたしが負ければあたしはあなたのものね、要らなければ放置すればいいね。そしてそのビーさんには侮った事謝るね。どおね?」
「なんか、こちらに勝ったときのメリットが全然ないんですけど」
呆れた顔で応じる帝。
すでにこの勝負を受ける気でいてる。もちろん、勝負に臨むのはビーであるのだが、負けるはずは無いと思っているのは明らかだ。
「ビーさん 最強なのでしょう?だったら良いじゃないね、負けないんだからね~。はい、決まり。あたしは、月輪桃、今日から、この学院にお世話になる3年生よ、転校してきたのね、よろしくね」
「私は暮新月帝1年生、生徒会で会計をやっています」
「え、あなた、1年生なの?じゃあ、今日から後輩ね、よろしくね。でも、見えないわね。その堂々とした立ち位振舞い、どうみても3年生よね。桃のことはそうね、桃姉さまって呼んでくれてもいいのね」
「呼びません。私のお姉さまはビーお姉さま、只、御一人です」
「あら、そう?それは残念ね。無理じいはしないけどね、ああ、そうだ、勝負に負けたら呼んでもらうね。あたし、こう見えて、結構強いね」
桃は両手の指先を揃えてくの字に曲げて鎌の形を作る。足は半歩だけずらして配置する。ゆらりゆらりと体を左右にゆらしながらゆっくりと近ずいていく、俗に言う蟷螂拳である。
帝の胸元に刺さっていた赤のボールペンに狙いをつけ、一陣の風のごとく素早さでその鎌で抜き取る。
帝は警戒をしていたが蟷螂拳のそのゆらりとした動作に惑わされあっさりと取られた。
帝の顔に驚愕が現れた。
帝は読んでいたのだ。初めからボールペンを取りに来る事は判っていた、あとは、タイミングさえずらせば絶対に盗られる事はない、なのにあっさりと取られたその事実に愕然としている。
それほどまでに桃の動作は素早かったのである。
スイッチの入った桃は達人であった。
「これは、勝負まで人質ね、物だから物質かしらね?あたし、職員室にいかないと駄目だから行くね、ああ、勝負は次の日曜日に昨日のとこでいいね?朝10時にね、それじゃあね」
桃は悠然と歩いて行く。
呆然と見送る帝。その口元は下唇を噛みしめていた。
* * *
やっちゃったね、やっちゃったよね~。
あたしがんばったね、がんばったよね。本当にがんばったよ~。
うう、あたし、偉い、偉いよ~。あの子相手に良くやったね。やったよ。
なにあたし「結構強いね」よ、挑発してど~すんのね。
よっかった~。蟷螂拳、決まった~。あたしってかっこいい?
でもビーって子、どんな子だろ?あの子より強いって絶対、思い込みよね。うん、絶対そうよ。好きな人を盲目的に信じてるって感じじゃない?あの子にとってビーって子はあこがれの存在なのかも。うん、きっとそう。これは楽勝かもね。
あたし、そんじょそこらの子には絶対負けないもん、大丈夫。うひ、あの子、手に入れちゃった。
あの子に桃の拳法を習ってもらって、そしたら、無敵よね。大会には、うちの代表で出てもらって、もう完璧。完璧よ。
でも、もうあの子とは対峙したくはないわよね。今回は、偶々、ボールペン盗る事に成功したけど、もう、次は無理よね。
ああ~よかったね。神様ありがとうね。やっぱり、あたしって神様に嫌われてなかったんだわ、うふ。神様ありがと。
ボールペン獲れてよかったね~、あれで取れなかったらどうなってたか、本当に良かったね。あたしカッコよかった?
最後、あるいて去る時、もう心臓バクバクよ~。あの子から見えなくなったとたん、へなへな~となっちゃったね。
お読みいただきありがとうございます。
さてさて、この勝負どうなることでしょう。
緊張感ない文章ですいません。




