17.ビー、勝負する。
今日もあついですねえ。
お昼の時間、ここは生徒会室。会議用のテーブルの向こうにパイプ椅子に座る女生徒がひとり。
朝、興味深い目でビー達を見ていた少女だ。テーブルの上には盗撮したと思われるビーたちの写真。どの写真もビーだけは全てカメラ目線だ。
少女の名は夢見月楓、この学院で生徒会長をしている。
この生徒会はこの少女しか役員はいない。おっとりしたお嬢様が集うこの学院ではなかなかになり手がいないのである。この学院にしては珍しくアクティブな少女だ。
少女の前にはこれまた朝一緒にいたカメラを持った少女が若干うなだれながら報告をしている。
「これ、ビーって子、全てカメラ目線じゃない。きずかれたの?」
「はい、超望遠レンズで撮ったものまで全て気づかれてしまいました」
写真の中には手を振るものまである。
この少女は新聞部の部長である。名前を令月刃と言う。新聞部として部員は一人しかいないので廃部目指して一直線なのだが、生徒会と結びついて諜報活動を行うことでなんとかまぬかれている。盗撮には絶対的な自信があったのだが、全てビーに気付かれてしまい意気消沈しながらも報告している。
「感のするどい子なの。それで調べはついたのかしら?」
「はい、名前は水無月ビー、この町の商店街の先のマンションに住んでます。今日から2年A組に入る事になりました。編入試験は全教科100点の天才。体の発育は14歳にしては少々遅れているようで小学生並みです。商店街での人気は凄いもので悪い噂は聞こえてきませんでした。ゲートボールをしている御年寄たちのアイドル的な存在になっているようです。」
「最近、倉庫街にたむろしているグループと諍いがあったようで、そのグループのリーダーを倒しトップに納まったようです。名前をビー団とか。朝、正門前にいた男の集団もビー団だったようです。」
「この不良グループとの諍いの中で1年C組の暮新月帝と知り合ったようで、今、暮新月帝はビー団の中では『お嬢』と呼ばれ実質No.2となっているようです」
「そう、ありがとう。さすがわ新聞部ね。この短い間によく調べたわね」
「ありがとうございます。それが新聞部ですから」
「諜報活動はお手の物ってわけね」
「それにしてもこの子、凄いわね。名前がビー、二世なのかしら、かわいくて、頭も良くて、力もある。そして手足となる男達も率いていて、しかも『孤高の暮新月』が小娘みたいにじゃれている」
「『孤高の暮新月』ご存知ですか?」
「そりゃ知ってるわよ、時の権力者を陰から操ってたと言われる、あの暮新月家よ、
不思議な力を使うと言うわ、『孤高の暮新月』もあの高貴さと美貌、近寄りがたいものがあるわね」
「しかし・・・この子欲しいわね。どうにかして生徒会に迎えられないかしら」
思案顔になる。
「この人に生徒会がなにを提供できるかによりますね」
「会って話をする必要があるわね。いま、どこに居るのかわかるかしら」
「多分中庭の方にいるとの情報が入っております」
「そお、案内してちょうだい」
時間はすこし遡って昼休み開始直後のビーの教室。ビーの周りに輪になりビーを御菓子攻めにしているクラスメイトたち。
「これも、たべる?」
「あ、ビーちゃんてよんでもいい?」
「いいよ~」
「これも食べて~」
もぐもぐと食べている姿が小動物っぽくてかわいい為、みんなから御菓子攻めを受けている。そんな中、帝が教室の入り口に現れた。一堂、帝の気配に気圧されたのか左右に道を開く。
「お姉さまがた、少しビーお姉さまをお借りしますわね」
「あの暮新月様がなんの用なのかしら」
一堂不思議に思いながらも、その有無を言わせぬ物言いに一堂頷き散っていく。
「帝ちゃん、お昼たべるの~」
ビーがその場にそぐわない間延びした声を掛ける。
「ビーお姉さま、中庭に行きましょう」
そう、言って手を引っ張り教室を後にする二人。
ここは転入試験の時、大地とお昼を食べた中庭だ。中庭に着くなりビーに抱きつく帝。
「ビーお姉さま分充填」
なにやら口走っている。
「ビーお姉さまの為に、今日はお弁当を作ってきましたのよ~、ほら、これ、食べてみて下さい」
「ありがとうなの~」
満面の笑みで返すビー。食べ物に対しては全てを受け入れるビー。
「その笑み、反則ですわ」
みるみる赤くなっている帝。
「はい、あ~ん」
箸でたこさんウィンナーを摘んで差し出す帝。釣られて口をあけるビー。
「あ~ん。」
一見するとラブラブな二人である。そんな二人のラブラブ空間の前に邪魔する者、生徒会長の夢見月楓が姿を見せる。手には御菓子を沢山携えて、もちろん、脇には新聞部部長令月刃が控えている。
「ごきげんよう。みなさん。私もご一緒させていただいてよろしいかしら」
「生徒会長?」
帝は知っているようだ。
「いいよ~」
「ビーお姉さまが良ければ私は別に○△×□※・・・」
「私は当学院の生徒会長夢見月楓です。以後お見知りおき下さい。私の事は楓とお呼び下さい。ビー様とお呼びしてもよろしくて」
「いいの~」
のほほんと答えるビー。
「今日からビー様が当学院の一員ななられましたので、その歓迎の意も含めましてこれらの御菓子を御持ちしましたの。どうか、召し上がってください」
躊躇なく受け取るビー。御菓子に貴賎はないのだ。
「ありがとうなの~」
目の前の御菓子の山に目を輝かせるビー。二人時間を邪魔されて不満顔の帝。唸るように声を発する。
「生徒会長、なにが目的なんですか」
「暮新月さん睨まないでください。私はただ歓迎をしに来ただけですわ」
「嘘!」
帝は睨む。その目的についても帝には解っていた。
「ビー姉さまの力が目的なんでしょう」
楓は降参とばかりに手を広げた。
「さすがですわね。『孤高の暮新月』の目は誤魔化せないってことかしら。私はビー様を生徒会にお迎えしたいんですわ。入っていただけないかしら。悪い話ではないと思いましてよ。一緒にこの学院を良くしていこうではありませんか」
「ビーお姉さまの力を利用したいだけなんじゃないんですの」
「この世は利用し利用されで成り立っているのでしてよ。いいじゃありませんか。あなたも生徒会を利用すれば。生徒会は一応権力でしてよ」
「そんなこと、必要ありません」
「高潔なんですね。しかたありませんわね」
思案顔の楓。なにか思いついた風を装い話しはじめた。
「朝、ある集団が正門前を占拠しておりました、男どもの集団です」
「なにを言っているの?」
ビーは話の推移と関係なしに御菓子に夢中になっている。
「その集団は以前、不良グループだったものだったとか」
「彼らはもう不良グループじゃないわ」
まあまあ、という感じで軽く手を上下に振る楓。
「その集団のトップ2がなんとこの場にいる、ビー様と暮新月様だという噂を聞きました。これは由々しき事態です。この聖なるトゥーネックパーレント女学院にあってはならないことだと思いませんか。そこで提案です。このまま生徒会に入ってもしこりが残ってしまいますと、その後の運営に支障をきたします。そこで、勝負をしましょう」
「どんな、勝負をしようって言うの」
「ビー様はなかなかに気配察知にたけてらっしゃるご様子、今日も、朝から狙っていたのですが盗撮はすべて失敗しました。そこで明日から1週間、正門から入った時から出る時まで。そこの新聞部の令月刃が写真を撮ります。その写真に全てカメラ目線で映ってください。1枚でも盗撮が成功すれば私たちの勝ち、撮れなければあなた達の勝ち。もちろん、授業中は除きます。休み時間、朝と昼休みそして放課後は含みます。いかがですか」
「この勝負に私たちが勝てば、お二人には生徒会に入っていただきます。もちろん、御菓子食べ放題もお付けしましょう。暮新月様には願ってもないことでしょう?放課後もビー様と一緒にいられるのですよ」
「それは、むむむ。う~ん」
「私たちが負ければあの集団については聞かなかった事にします。あくまでも噂ですしね」
「・・・」
「決まりですわね。それでは精々頑張ってくださいませ。私にとっては頑張ってほしくないのですが。それではごきげんよう」
二人が去って行った。
「ごめんなさい、ビーお姉さま。へんな勝負をすることになってしまいました」
「問題ないの。面白いからいいの~」
わかっているのかどうなのか良く分からないが、勝負をやることになって楽しんでいるようだ。。
「ビーお姉さま頑張ってください。私もサポートいたします」
拳を固め力を入れる帝。
(私の能力をフルに使ってサポート申し上げます)
次の日から帝のサポートが始まった。
朝、正門前でビーが来るのを待っている帝。朝から気合十分である。合流すると、すぐどこからカメラが狙っているか詳細な位置を伝える。帝の能力から予見した結果だ。それを休み時間ごとに伝える。その結果。先読みにより全て盗撮は阻止される。
しかし日付けが進むにつれて、帝にどんどん疲労が蓄積されていく。それはそうだろう予見には多大な精神集中が必要とされ、そんなぽんぽんと続けられるわけがない。
集中度合いにもよるが普段なら成功率70%ぐらいなのだが、今100%の驚異的な的中率である。どれだけ力の入れようかわかるというものだ。そのため、最終日の午後、遂に限界がきてしまったのである。
その日、ビーにカメラの方向を教えた後、ピーと一緒にお昼を食べていると急に頭が左右にゆれはじめ、ビーに倒れ込むようにして気を失った。
すぐさまビーにより保健室に転送、昼食をとる為いなかった保険の先生をドローンにより探し出し、ビー自ら転送によって連れ戻し、転送により少々混乱していたがなだめすかし見てもらったところ、疲労という結果に胸をなでおろすのだった。
帝のリタイアにより、勝負の行き得は解らなくなったかに見えたがビーが負けるはずもなくあっさり勝ってしまうのだった。
帝が倒れてから二日はさんだ三日後。ビーのもとに頭を下げる帝の姿があった。あまりにも疲労が酷くてまるまる二日寝込んでしまったのだ。
「ごめんなさい。ビーお姉さま。最後までサポートすることができなくて」
しょぼんとする帝。気にすることはないとばかりに頭を撫でるビー。何時もは撫でられる側なのに撫でるのもいいなとおもってるビー。
(今度ダイチくんの頭撫でてみるの、喜ぶかなあ)
「勝負は面白かったからいいの、またやってみたいの」
そんな二人のもとに生徒会長と新聞部部長が現れる。二人が揃うのを待っていたようだ。
「完敗だわ。まさか、全ての写真にピースサインを送るとは考えられないわ」
「ここまで撮れないとは驚きです。盗撮できなかったなんてあなたが初めてです」
手にはおびただしい数の写真。御菓子を口いっぱいに頬張りながらもピースをする写真や体育の授業に出る為、着替えているのであろう、上半身ブラだけで笑顔でピースをする写真。正門まえで一陣の風に舞いあげられたスカートのなかに水色の水玉模様のショーツと共に笑顔いっぱいでピースをする写真。階段の下から上っている最中のビーを捕えて、右手はピースをしており左手は軽くスカートを押さえているが意味がなく、真っ白いショーツに苺のワンポイントがばっちり写っている写真。または、かごんだ瞬間をとらえたもので、胸元を大きく開けて、あるかなしかの胸の谷間が見えているが、顔はこちらを向いており手はしっかりとピースをしているなど、マニアが泣いて喜ぶ写真が沢山撮られていたが1枚としてピースサインの無いものはなかった。
「私たちの負けね、諦めるわ」
ビーは神妙な顔になったかと思うとぽつりぽつりと言葉を紡ぎ出した。
「ビーね思ったの・・・。帝ちゃんには申し訳ないの・・・、こんな面白いことを考える生徒会に入ってもいいかなって」
上目づかいに生徒会長をみる。
「もっと楽しませてくれる?」
鼻を押さえて叫ぶ楓。
「もちろんよ」
帝には申し訳なさそうに言葉を掛ける。
「ごめんね。帝ちゃん」
「ビーお姉さまが良いなら私も問題ありません」
「それじゃあ、生徒会に入ってくれるのね」
「うん」
その顔は満面の笑顔だった。
「今日から一緒だね。楓ちゃん、刃ちゃん」
ここに新たに生徒会に副会長としてビー、書記として帝が加わった。
決して生徒会に入った時の条件としての御菓子に釣られたのではないと思いたい。
お読みいただきありがとうございます。
夏バテ気味です




