14.ビー、怒る。
学校いっていないことがばれました。
ビーが帝に出会って数日後、授業が終わった放課後にビーを探して構内をうろつく帝の姿があった。
「ああ、ビーお姉さま、ビーお姉さまはどちらに居られるのでしょうか。全然お見かけしません。あの愛らしい御姿、直ぐにも見つかるかと思われたのですが・・・。先生方にもお聞きしましたが、いっこうに行方が知れません。」
「もう一度あの場所へ行けば会えるでしょうか。」
公園に現れる帝。
「ビーお姉さま、居ませんわね」
公園のベンチに座ってこの後どうしようかと思案に暮れる帝。
帝の前にチンピラ風のいつぞやの二人組が現れる。突然、目の前に迫ったかと思うと土下座をする二人。
「「姐さん。助けてくれ、いや、助けて下さい」」
二人の声がハモる。突然のことで言葉も出ない帝。
(なに、なんなの、この二人。この前の二人組?仕返し?)
「ひっ!」
慌てて逃げ出そうとする帝。
「まってくれ」
「行かないでくれ、あんただけが頼りなんだ」
慌てながらも二人の様子に徐々に冷静さを取り戻す。
(なに、これは、仕返しじゃないの?頼み?)
「大の男が二人がかりで中学生の女の子を捕まえてなにかしら」
震える声を何とか出さないよう言葉を発する。
「さっきも言ったが、あんただけが頼りなんだ。俺達を助けてくれ」
「何を言っているの」
男達の話はこうだった。
ビーにこてんぱんにやられ、この公園に放置され気絶しているところをこの男たちが所属するチームのリーダー格の男に見つかった。
事情を話させられ、それが、中学生のそれも女にやられたとあっては立場がなく言い訳もできなかった。
その後二人はリーダー格の男にぼこぼこにされた。そして、その女を連れてこいと命令され今ここにいる。
連れて行かないと二人は殺される。
「そんなこと私しりませんわ。勝手に死んだらいいんです」
情けなさそうな顔をしながら頭を下げる二人。
「そんなこと言わず、助けて下さい。このとおりです」
恥も外聞もなく土下座を繰り返す二人。
その様子を怪訝そうな顔で見ている公園前のおまわりさん。暫く考えていたがやはり気になるのか三人の方に歩いてくる。
「君たち、どうかしたのかい」
大の男がそろって中学生の女の子に向かって土下座している姿は滑稽でもあり何処か現実離れした光景だ。
少し太った男が答える。
「なんでもないっす、こちらのもんだいっす」
「姐さん、お願いします」
うんざりした顔の帝。
「もう、私も知らないんです。ビーお姉さまの居場所なんて」
「そりゃないよ~、姐さんだけが頼りだったのに」
情けない顔の二人。
「ん、ビーちゃんのことかい?」
そんな会話の中に気になるビーの名前が出た為、思わず口に出したおまわりさん。
「「「知ってるんですか」」」
三人の劇的反応にびっくりするおまわりさん。
「知ってるほどじゃあないけど、よく昼前にくるなあ。たまに差し入れくれるときもあるし。商店街の向こうにすんでるんじゃないかなあ」
「「「ありがとう、おまわりさん」」」
すぐさま商店街に移動する3人。
「あなたたち、聞き込みしますわよ」
「「はい、姐さん」」
なんか、「アラホラサッサー」とでも言いそうな二人。
駄菓子屋さんにはいって聞いてみる。
「すいません、こんな制服を着たビーという名前の方ご存じありませんか」
帝が尋ねる。
「ああ、ビーちゃんかい、知ってるよ。11時ぐらいかな、よくくるよ。家はしらないね、どっか向こうのほうじゃないかい」
「ありがとうございました」
果物屋にて、チンピラその1が尋ねる。
「あそこの姐さんがきてる制服きたビーさんって名前の人、知りませんかね」
「お前ら、ビーちゃんになにしようってんだ、なんかしたらただじゃおかねえからな」
「なんも、しねえっす。失礼しました」
八百屋にて、チンピラその2が尋ねる。
「すんませんっす、ビーさんってひとしらねえすか」
「なんだ、お前、ビーちゃんに悪さしようってんだな。でてけ」
「すんませんっした~」
100円均一の店で帝が聞いてみる。
「私がきている制服と同じものを着たビーさんて方ご存じないですか?」
「ああ、朝、そこのゲートボール場のとこでいつもいてるよ。どっか、その辺のマンションにすんでるんじゃないかな」
「ありがとうございます」
暫くして商店街の入り口付近で合流する三人。
情報を纏める為にあつまった。結局、有力な情報は帝ひとりが集めたものだけで使えない二人だった。
「あんたたち、使えないわねえ」
「面目ねえ、姐さん」
「次、頑張りなさいよ」
「「へい」」
なんか三バカトリオになりつつある。
(それにしても、ビーお姉さま大人気ですわね、さすがはビーお姉さまですわね)
「結局、確実な情報としては、朝いつもこのゲートボール場に来てるって事だけですわね」
思案顔の帝
「明日、朝10時に、ここに集合ですわよ。わかりましたか」
「「へい」」
帝に命令されることが定着してきたようだ。
できれば、返事に「アラホラサッサー」と入れてほしいと思わないでもない。
次の日の朝、ゲートボール場に集まる3人。
お年寄り達がすでにゲートボールに興じている。うまいことボールをゲートに通すことができたのか、たまに老人らしからぬ歓声が上がる。
そんな中、ビーがゲートボール場に現れる。飛び上がって喜ぶ3人。
訝しげに視線を向けるお年寄り達。
「おはようなの~」
いつもの通りお年寄りたちの間に座るビー。
「はい、おはようさん」
「これ、食べるかね」
「これも、あげるよ」
差し出された御菓子類にパクつくビー。
(ここでも大人気ですわね、ビーお姉さまさすがです)
「おはようございます。ビーお姉さま。やっと会えましたわ」
「ん、帝ちゃん。どしたの~」
興味なさげに問い返すビー。
「どーしたもこーしたもありませんわ、私、学校にて、づ~とお探し申しあげましたのに、いっこうに現れてくれませんでした。一体どうしたのですか」
「あ、ビーねえ、学校いってないのよ。行っては見たいんだけどね。事情があったのよ。この服はね、かわいいからきてるの~」
「そうなんですの。知りませんでしたわ」
お年寄りたちが横から話に加わる。
「ほう、ビーちゃん、学校行ってないんかのう、学校はいいぞ」
「わしもいけるもんなら、もう一度行ってみたいもんじゃわい」
ほう、そんなに学校って楽しいものなのかと思案顔になるビー。今度、大地にいってみようかと考えている。
そんな話の中、悲壮感を漂わせながらチンピラ二人が頼み込む。
「「ビー姐さん、俺達を助けて下さい」」
「んん?なに?」
「姐さんからもよろしく言って下さい」
私は関係ないわよって顔で横にいた帝に突然振られたので、少々慌てながらも渋々事情を話す。
「この二人はね、ビーお姉さまにボコボコにさたことを自分の所属するチームのリーダーに知られて、ビーお姉さまを連れてくるように言われてるんですって。それで連れて行かないと殺されるらしいよ。自業自得ね」
ビーは笑顔だ。
「ふ~ん。よかったね」
驚愕の表情で答えるチンピラ二人。
「「よくな~い」」
呆けた顔で返すビー。
「ほへ?」
「ビー姐さんの力でちょこちょこちょこってやってほしいんです。ビー姐さんの力がありゃ無敵です」
「こいつらはビーちゃんに負けたのかいのう、ほう~、ビーちゃん強いんじゃのう。でも勝ったからには最後まで面倒みてやりゃにゃあ、あかんぞい」
お年寄りが横からチンピラの肩をもつ。
「そっかな、ふむ」
「爺さんありがとう、うう」
チンピラ二人が泣きながら感謝を伝える。
「わかったの~。きゅっとしたらいいのね」
両手で雑巾を絞めるジェスチャーをするビー。
「そうじゃぞい、きゅっとやったったらいいんじゃぞい」
「それじゃあ、いくの~」
「行ってくれるんですかい、ありがてえ」
「ビーお姉さま、私も行きます。ビーお姉さまひとりだけをそんな危険な処に行かせられません」
「それは、あまりお勧めできやせん。万が一、ビー姐さんが負けたら姐さんも餌食になってしまいますぜ。奴は女好きで有名ですから、姐さんは確実に犯られますよ」
「あなた達も最初、私といいことしたがってましたしね、でも、ビーお姉さまは負けません。絶対です」
「それは言わねえで下さい。そこまで言うならお連れしやすが・・・、情が移っちまったかな」
「それじゃあ、ぱっぱとやって、お昼ご飯ここで食べるの」
「まってるぞい」
お年寄りたちに送り出されて一行は溜まり場となっている倉庫街にやってきた。倉庫街といっても本当の倉庫ではなく、空になったコンテナが一時的に積んでいる区画である。
コンテナが積みあがった奥の方に、長年置きっぱなっしになった部分があってそこを溜まり場にしているらしい。
コンテナ内に色々と持ち込んでさながらバーの様になっている。
たばこの煙で煙っているそんなコンテナの前に4人は立っていた。
コンテナの上の部分にはおどろおどろしく骸骨が書かれてある。入り口には門番みたいにひとりの男が立っていて、ビーと帝に好色そうな視線を向けていた。手には折りたたみ式の警棒を持っている。
「よう、やっと帰ってきたな、そいつらがそうか、いや、こりゃ貢もんか?リーダーに貢もんもってきて許してもらおうって腹か?」
「・・・、いや、この方にやられたんだ」
「おいおい、正気か?」
「ベッドの中で負けたっていうなら解るが、力で負けた?お前が?は、笑えないジョークだぜ。・・・まあいい、さっさと行きな。後でおれもよろしく頼むぜ」
「けがらわしい、なんなのここ。今時こんなとこがあるなんて」
「まあ、そう蛇嫌にしないで下さい。奴もリーダーが怖くて強がってるだけのものなんで」
「俺達も先日まで同じだったんですよ」
「おもしろいの」
何処か映画の舞台にでも来たようでビーは楽しんでるようだ。
コンテナの一番奥に設置してあるソファーに男が座っていた。両側にケバケバ衣装の女が座っている。どこかのキャバレーの様だ。
男が口を開いた。
「よう、やっときたか。そいつらがそうか?マジ?マジなの、お前らバカか?。色香に迷ったか、不意打ちでも喰らったんだろ」
嘲笑を含んだ笑いを響かせ男が立ち上がった。
「それにしても二人ともすげえ美人だな、こりゃ、楽しみだ」
下卑た笑いを二人に投げる。それに対し帝が怒りの表情でぼそっと言葉を発する。
「汚らわしい。私を見ないで頂戴、汚れます」
「いいねえ、いいねえ。その顔が屈辱に歪む様を早く見てみたいね、そして直ぐに歓喜に代わるんだな」
男の声に怒気が混じった。
「どっちだ」
その声にのほほんとした声で答えるビー。
「ビーが相手するの~」
「こっちはかわいいっちゃかわいいが、女としての魅力がすくねえな。まあ、いいや、早くやって、あっちの女ヒイヒイ言わしたるからよ。じゃあ、やろうぜ、きなよ」
ビーは最初それほど怒っているわけではなかったが、男の「女としての魅力が少ない」発言で一挙に怒りMAXとなっていた。
顔はにこにこして楽しそうにしていたが、内部では毒黒い怒りがふつふつと湧き上がっていた。
とことことこっと男の前にきたかと思うと男の胸の真ん中にとんっと三本の指で付いた。
男が急に右方向に吹き飛ばされた。男はそのまま壁にぶつかり動かなくなった。
左手と左足がおかしな方向に曲がっており、折れているようだ。
一堂、男になにが起こったのかわからなかったが帝だけはにんまりして手を叩いて喜んでいた。
「さすがです、ビーお姉さま」
じつはここに来る途中、帝から助言を受けていた。
「ビーお姉さまの力は凄過ぎます。空を飛ぶなど人間業を越えています。なるべくこの力は見られないようにしないといけません。その為、これから行きますところでもなるべく押さえた力を使ってください。私にはお姉さまの力がどのようなものか判りかねますが、なるべく目立たないように助言をさせていただきます」
「お姉さまは慣性というものの制御がおできになられる様です。先日の空から落下させたチンピラさんたちを地面すれすれで停止しておられました。そのことからビーお姉さまは慣性制御ができます、それを利用します。」
「相手を三本の指でちょんと突いてください。その突いた部分だけ慣性の影響をゼロにします。するとその部分だけ慣性の影響がないわけですから、地球の自転と逆方向にふっとびます。それでおしまいです。」
「地球上にある物体はすべて地球の自転の影響で慣性力が働いています。体の一部分の慣性力が無くなれば、その部分に秒速500メートル程ののパンチを受けたのと同じ効果がでます。」
「ふ~ん、そんなんでいいの~」
「それで十分です」
* * *
帝の助言を実行したのだった。
あっけない結末に一堂、唖然としつつも、チンピラ二人が声を張り上げた。
「これで、これからここはビー姐さんのものだー、リーダーはこれからビー姐さんに決定した。みなに伝えろー」
慌ててみんなに伝えるよう下っ端が走り出す。これまで、男が怖くて従っていたのだが、ある意味、革命が起こったのだ。
コンテナから出て行くビーたち。その後姿に怒気を放つ存在が一人。女に支えられながら手には拳銃が握られている。
「ふざけるな、俺は認めんぞ、お前、なにか、トリックを使ったなー」
男は負けたことを認められないのか尚も言い募る
男をつき動かしているのは強い怒りである。怒りの為か手足が変な方向に捩れたことからくる痛みも忘れている。
精神力だけで立っている様は尊敬に値すべきことなのかもしれない。
「許さん、ぶっ殺してやる」
のろのろと銃口がビーに向けられる。その様に冷たい視線が向けられる。
うんざりしたようにビーが返す。
「あなた、まだやるの、死にたいの?」
「うるせえー死ね」
引き金を引く。
ダーン。
付近に大きな音が響き渡る。ビーに向かって弾丸が進むかに見えたが、ビーの30センチほど前の空間で弾丸が静止している。
続けて数発引き金を引くが全てビーの前に静止している。
「化け物め」
ビーの目がさらに冷たくなる。
「ふふふ、ビーがいつ人だといったの?あなたの前にいるのは人とは別のものなのよ、それを理解してる?ビーは人が好きだからおとなしくしていたの、でもあなたの心は、人の範疇を越えているようなの、それなら遠慮は要らないの」
男の足元にある石がはじけ飛んだ。
男は「ひっ」っと短く悲鳴を上げその場にへたり込んだ。
内部に圧縮した空気を転送したようだ。一歩一歩男に近づいていくビー。一歩近づくに従い男の近くの石や空き缶、その他いろいろなものの内部に圧縮した空気を送り込み内部から弾ける様にする。
ついには男に手の届くところまで進む。そして男の頭を撫でてやる。
男は緊張に耐え切れなくなったようだ。急にうつろな目をし笑い続ける。
「あなたを殺すとダイチくんが悲しむから今回は止めておくの」
「でも、次はないのよ」
「さあ、帰るの。お昼ごはんがまってるの。・・・ちょっとみんなを怖がらせすぎたかな?まあ、しかたがないの」
突然、帝が抱きついてきた。その顔は笑顔に包まれている。
「ビーお姉さま、素敵。ずっと付いていきます」
「ビー姐さん、凄いっす。惚れました」
「凄い、凄い、凄い、うおーーー、かっけ~、ビー姐さん付いていきます。これで、ビー団誕生だぜ。うおーーーー」
ここに、ビー団が誕生したようだ。
お読みいただきありがとうございます。
すこし迫力が足りませんね。
勉強しないといけません。




