13.ビー、妹ができる。
ビーさんの日常が垣間見えます。
楽しそうでいいですね。
ビーは朝方、夜が明ける前に大地の部屋の押入れに設置した通路を通って月からこっそりやってきて大地の布団に入る。
大地が起きてビーを認識したときにビクっとなるのを楽しんでいるようである。
大地が起きてから一緒に朝ごはんを食べる。
大地は目玉焼きにごはん、そして時間があれば味噌汁を作って食べる。それに対し、ビーは違ってて、ビーの最近のお気に入りは、深い皿にシリアルを入れ牛乳を掛けて食べることである。
ちゃぶ台の前にちょこんと座って右手にスプーンをもって待ってる姿に非常に癒される。と思うのは大地だけでは無いはずだ。
大地はその深い皿にシリアルをカラカラと子気味良い音をたてて入れてやり、そこに近所のスーパーで買ってきた1000ml¥198の牛乳を注ぐ。
別のコップに100%オレンジジュースを注いでビーの前に置く。
それを目で追いながら笑顔で黙々とシリアルを食べているビー。シリアルも何種類か買っており、その日の気分で変えている。
なにも入っていない普通のシリアルや、中にチョコが入ったものや、黄色やピンク、水色のつぶつぶがはいったものなど、はたまた、ほうれん草が入った緑色をしたものなど、なかなかにカラフルだ。
ちょっと、行儀が悪いと言われるだろうが、朝ごはんを食べながらテレビでニュースを見るのが大地の日課だ。
ニュースを見ながら最近の政治家どもはなんちゃらとか、風紀が乱れているなあ、とか、取り留めのないことをビーに向かって一人しゃべっている。
ビーも適当に相槌を打っていて、話の内容はわかっていない。
暫らくして食事も終わり、歯を磨き顔を洗ってから仕事着に着替える。身支度を整え、特に何も入っていないカバンを持って、そして「行ってくるよ」とビーに声をかけて大地は出て行く。
朝、家を出るとき誰かに「行ってくるよ」とか「行ってきます」などを言えることを嬉しく思っている大地。ビーには秘密だ。
大地を送り出してから、夏の間は朝の子供アニメ劇場を見ていたのだが、夏休みが終わった為、番組が終了したのか、今は朝のワイドショーを見ている。
そして朝の時代劇シリーズへとチャンネルを変え見終わってから動き始めるビー。
玄関でごそごそして黒い小さな靴を取り出し足に履く。先日、大地に買ってもらったものだ。
そして玄関から表に出て行く。
鍵は持っていないので表に出てから力場を形成して扉の内側から鍵を掛ける。
鼻歌を歌いながら、トントントンっと階段を降りて近所の公園に行く。
公園では近所のお年寄りがゲートボールに興じている。何の気兼ねもなくトコトコトコっと順番待ちをしているお年寄りに近づいていく。
「おはようなの~」
声を掛けてお年寄りたちの間にトスっと座る。
「はい、おはようさん」
「ビーちゃんおはよう」
顔見知りである。
「ビーちゃんこれ食べるかい?」
差し出されたクリームパンやジャムパンを笑顔浮かべて受け取る。
「いただきま~すなの~」
直ぐに、ぱくついている。
お年寄りたちはビーが現れるのを待っているようだ。
ある時、一人のご夫人が試合中に心臓発作を起こした、偶然ビーが通りかかり、あっという間に直したことが縁で最近はいつもこの時間にここに来ている。
いろいろ食べ物をくれるので餌付けされてるとも言う。案外、時代劇とか趣味があっているようなので話は合うようだ。
一度、試合に出てみないかと誘われやってみたところ、完璧に軌道計算、力加減を行うことが出来るので、ルールを覚えた後はミス一つなくやり遂げた。以後ピンチの時のスケットとして重宝されているようである。
ビーが出るとビーのチームが勝ってしまうので、今日のような仲間内での練習試合では傍観に徹している。
暫らくここで過ごしていると日によって違うのであるが、だいたいここで小一時間程待っているとやがて1匹の白猫がやってくる。
猫がやってくるとビーは目の色を変えて猫のもとに行ってしまう。当然頂いたパンやおかしを抱えて。
この日も白猫が現れたのでパンを咥えながら猫の元に走っていった。
ご老人たちには一応挨拶代わりに手を振りながら。ご老人たちも手を振り返す。
「明日も待ってるよ」
「また、明日なの~」
最近、アニメのト〇&ジェリーのト〇のぬいぐるみがお気に入りで、どこに行くにも持って行っていたが、そのぬいぐるみを持っていると猫が警戒して触ることが出来ないため、渋々大地の家において出かけている。
白猫の元にはせさんじたビーは白猫とともにいる黒い子猫に気がついた。
「あれ~?、おまえはどこの子なの~」
小さな黒い子猫はかわいい赤い首輪をしていた。首輪には小さな鈴と迷子フダだろう金属のプレートが付いていた。その金属プレートにはここからすこし離れた、隣りの町の住所が書かれていた。
「お前、迷子なの?」
その仔猫を抱っこして先ほどまでいたご年配の方々のところに戻ってきたビー。
「おや、どうしたんだい?」
「戻ってきたのかい、これ食べるかい」
お菓子を差し出されてそのまま口の中に掘り込むビー。
「ありがとうなの~、この仔、白ちゃんにくっ付いていたの~」
白猫はしろちゃんと呼んでいるようだ。
「迷子かい?」
「首んとこに住所が書かれているねえ。こりゃ、商店街の向こう側だね」
「届けるの~」
「ちょっと遠いよ」
「だれか、車ないかい」
「大丈夫なの~」
「そうかい?ビーちゃんなら大丈夫かな、しっかりしてるから、でも、気をつけて行くんだよ」
「ニャ~」
「この仔も行くっていってるの」
ご老人たちから大体の場所を聞いて早速出発するビー。
位置自体は、既に地図検索を行っており、わかっていたのだが、なんとなく、届けるという行動の後押しが欲しかったのだ。
早速、仔猫を届けようと行動を開始するビーであったのだが、もう少しするとお昼であるので一旦戻って、大地が用意してあるおにぎりを手にしてから出かけることに決めたようだ。
仔猫を抱いて大地のマンションまで戻ってきたビー。
最近のビーは体を手に入れてから自分の足で歩くことが好きなようで転送をあまり使わない。今日も、自分の足で戻ってきた。
大地の部屋に入る時も例によって力場を形成し内側からカギを開ける。
玄関で靴をぱっぱっと脱いで、揃えることもせず脱ぎっぱなしでそのままずんずん進み、流し台の横においてあったラップで包まれた少し小さめの2個のおにぎりを掴んで首から下げるお弁当入れに突っ込んだ。
ふと、仔猫をみて何やら思案顔になったかと思うと、そのまま戸棚に行き小さな皿を取り出し冷蔵庫から牛乳を取り出し少しだけ皿に注いで仔猫の前に置いた。
「さあ、飲みなさいなの」
仔猫は一声「にゃ~」と鳴いてからおいしそうにぺろぺろ飲みははじめた。それをにこにこしながら眺めるビー。時折、頭を撫でている。
「ニャッ」
その手が煩わしいのか仔猫は抗議の声をあげる。すると少しの間だけ撫でるのを辞めるが、暫くするとまた、撫で始める。
飲み終わるのを確認すると、仔猫を抱きあげ、皿は流し台の中にに入れ、
「さあ、出発するの」
声を発し玄関から元気よく出て言った。もちろん、手にはお弁当を持って。
表にでてきたビーは商店街の中を自信をもった足取りで歩みを進める。
途中、果物屋さんのおじさんに
「おはよう、ビーちゃん。今日も元気だねえ。これ食べな」
ぽん、とみかんを投げられたり。駄菓子屋のおばちゃんから
「ビーちゃんおはよう。今日は暑いねえ。これ食べるかい」
アイスクリームを貰ったり。
「あまりもので悪いけどこれあげるよ」
和菓子屋さんでわらび餅をもらったりする。
商店街を抜けるころには手にお菓子など様々な食べ物で一杯になっていた。それ以上に歩きながら既にお腹に入っている。
商店街ではなかなかの人気である。
なぜ、こんな時間に中学生が歩いているのかと様々な憶測を呼んでいるのだが
「お嬢様なので家庭教師がついているから授業は受けていない。」だとか。
「非常に頭が良いので、授業免除。」だとか。
「実はとんでもない不良で、・・・それはないか。」
それぞれに勝手に納得しているようで、面と向かって聞かれたことはない。まあ、ビーも言いわけを真剣に考えているわけではないので助かっている。
あまりにも多い貢物の数々に運ぶのに少々苦労したのか、商店街を抜けたところにある交番の横の小さな公園で一度、亜空間に収納する事に決めたようだ。
交番のお巡りさんに
「おはようなの~」
にこやかに挨拶をして、ふと、何を思ったのか交番内にとててて~と入っていく。
「これ食べてなの~」
わらび餅を置いてニコっと笑いかけて公園に入っていく。
お腹が、いっぱいになったようだ。
この交番に勤務するおまわりさんは新任なのか非常に若く、若干、顔を赤くしながらも、いつもの事らしく、にこやかに挨拶を返す。
「おはようございます。ビーさん。今日も気をつけていってらっしゃい」
ちょっとはあやしく思えよ。
公園の木の陰で貰ったお菓子類を亜空間に収納しているビー。
因みに亜空間の入り口は怪しまれまいようにお弁当入れの中に形成してある。お弁当入れを首から下げて両手をポケットに突っ込んでいる姿は某未来から来た猫型なんちゃらに似てなくもない。押し入れから出てくるしね。
話を戻しまして、ビーは、ふと、仔猫が居なくなっていることに気がついた。
「あれ、どこ行ったの?くろちゃん」
勝手にくろちゃんと名前をつけたようだ。
どこにいったんだろうと辺りをキョロキョロと見渡したが見つからない。よく探してみると滑り台の下にいるのを見つけた。
「くろちゃん、居なくなったとおもったの。心配したの~」
仔猫を抱き上げ、仔猫にむかって小言を言うビー。
その姿を公園の反対側の入り口から見ている少女がひとり。その顔は驚きと不安と安堵がないまぜになったような表情をしている。
その顔は非常に整っており誰に聞いても美人だと答えるだろう。日本的な美人で非常にさらさらの黒髪は長く、腰にまで達している。巫女さんの衣装を着せたらとても似合いそうだ。
着ている服はビーがきているものと同じ有名お嬢様中学校の制服である。おずおずとしたなんとも頼りない足取りでビーに近かより声をかけた。
「すいません。その・・・その仔はあなたの・・・猫さんですか」
消え入りそうな小さな声で尋ねた。
「んん?違うの。この仔は、しろちゃんにくっついていたの。それで、迷子みたいだから届けようと思ってるの~」
今ひとつ要領を得ない回答であったが意味は通じたようだ。
「ええ~、それじゃあ、ひょっとしてその仔は・・・、迷子フダ見せてもらえますか」
仔猫ごと両手で抱えて少女に掲げるビー。少女の顔に安堵の表情が広がる。
「ああ、やっぱり。この仔は家の仔です。くろちゃん、よかった」
名前は同じだったようだ。
「この仔の家の方なの?」
「そうです、2日前から居なくなってて、今日も学校休んで探してたんです。よかった」
涙を浮かべる女の子。
「よかったね、くろちゃん。家の方見つかって」
「申し遅れましたわ。私、暮新月帝と申します。あなたと同じ中学の1年生です」
少女はビーが着ている制服から同じ中学に通う生徒だと思ったようだ
「ビーはビーていうの。よろしくなの~」
「ビー様・・・、ビー様とお呼びしてもよろしいかしら。私の事は帝とお呼び下さい」
さすがはお嬢様学校気品が漂ってくる。
「わかった~なの」
(どことなく不思議な方、独特の気配をかんじますわ)
帝はなにか感じるものがあるのかその目は若干かがやいている。
「今日も、家の者には止められましたけど、心配で、心配で、こっそり探しに来ましたの。学校を休むなんて大冒険でしたのよ、でもそのかいありました」
その時、膝の上にじっとしているのに飽きたのか仔猫がトンと掛けだした。
「あ、くろちゃん、どこ行くの」
「こら、どこに走ってくの。捕まえないと」
二人して慌てて仔猫の後を追いかける。
公園の出口に明らかに不良ですって格好のチンピラ風高校生2人組。そのひとりの足にこつんとぶつかる仔猫。思わず息をのむ帝。
片手で仔猫を拾い上げ
「なんだ~、この猫」
もう一人の太ってる方が冗談なんだろうが、言葉を放った。
「なんか、うまそうだな。喰ったろか」
慌てて帝がうったえる。
「やめて下さい。その仔を返して下さい」
「ああ~ん?なんだ、おまえ。おっと、なかなか美人じゃねえか」
「おれたちが、拾ったんだから俺たちのもんだ」
チンピラは思案顔になったかと思うと意地悪そうな笑いを浮かべ、
「おめ~がいいことしてくれんなら、こいつをやってもいいがな」
「いいことって?」
「へっへっへ、決まってんだろ。いいことだよ」
チンピラが手を伸ばす。
バシッと音がしてチンピラの手を払いのける帝。
「触らないで」
「こっちの姉ちゃんもかわいいじゃねえか、ちょっと、発育が悪いけどな、まあ、俺たちが大きくしてやるぜ」
じりじりとチンピラ達は2人に迫ってくる。
その時、近くの木が大きな音を発てて二つに裂けて倒れる。
ドドーン。
思わず、身を低くするチンピラ二人。
帝はなにが起ったのか解らずきょとんとしている。
「なんだ?、木が裂けた?」
ビーが声を発する。
「ビーは怒ったの。あなたたち死にたいの?」
そこまで言ってから、少し間をおいて、なにか面白いことをおもいついたらしく、顔をニヤリとしてあるセリフを吐いた。
「愛と正義の、セーラー服美少女戦士、ビー。月に代わって、お仕置きよ」
(いま、月そのものだけど、ないしょなの)
ビーの後方1メートルのところに浮かんでいた黒い雲の塊。中では時折、放電現象のため光っている。
その雲の塊をチンピラめがけて投げつけた。
ビーは高電位体を形成し待機させていた。怒りとともに電圧が高くなってしまった為、チンピラとは言え、殺さないために、先ほど効果を弱めようと近くの木に落雷として放電したのだ。
それが木が裂けた原因だった。チンピラ達にそれをぶつけたのだ。
「「あ、ぎゃぎゃぎゃぎゃ~」」
「お仕置きは、まだまだ続くの~」
ビーは右手を空に掲げ人差し指でなにかサインを描いた。チンピラ達の周りにガラス状の四角いシールドが現れチンピラを包む。
シールドごと力場に包みそのまま二人を空高く舞いあげる。その後を追う様にしてビー自信もふわりと空に舞い上がった。
シールドはチンピラの顔の部分は包まれてなく、上空の冷たい風に晒されていた。
体はシールドで固定されているのか身動きがとれない状態だ。程なく、自分たちが空高くいることに気がついたチンピラ達二人はその傍にいるビーに恐怖の目を向けながらも下に下ろしてくれるよう懇願するようになった。
「ここでビーの力を切ったらどうなると思う?」
冷たい表情をしながらそんなことを二人に言って、にっこり微笑むビー。
頭を必死で左右にふるチンピラ二人組。
「それでは、バイバイなの~」
パチンっと指を鳴らして自由落下がはじまり、チンピラ達の絶叫が続いてそして途切れた。気絶したのだ。
地上2メートルまで自由落下をしたあと、慣性力を調整し急制動をかけ停止させるビー。
木の陰にチンピラ二人を寝かせる。あとは放置だ。そこで初めて、帝がいた事に想いが行く。
帝は空中での一部始終をみていた。それも、目を輝かせて。
(ビー様は能力者だったのね。それも私なんか足元にもおよばない)
そう、帝にはある能力がある。そのことについてはまた追々記されるだろう。帝の横にビーが戻ってくる。
「みてたの?ばっちりみてたよね。うみゅ~。このことは内緒にしてほしいの~」
「もちろんですわ、ビーお姉さま」
「!!!、お姉さま?」
「そう、ビー様は私にとってお姉さまですわ、ビーお姉さま。私のお姉さまになって下さい」
両手を胸の前で祈るように組み目を輝かせている帝。
今日、ビーに妹ができたようである。
怒ると怖いビーさんです。




