表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/118

116.ビー、ルルーちゃんと呼ぶ。


 大地は怖い顔をしているビーに気が付いた。


 大地はビーがそんな顔をするのは少し珍しいなと思いながら声をかける。


「あれ、ビーど~したんや?」


 ビーの肩がピクリと揺れる。ビーは見ている先から視線を外さず大地に答える。


「ダイチくん、あれ何だと思う?」


 ビーに判らないものが大地に判るはずもないのだが。


 ビーは視線を外すと消えてしまうかとでも言う様にじっと見つめている。


 コッコは横で「凄いです~凄いです~」と、盛んに唱えており、あちらの世界に行ってしまっているようだ。


 大地はビーに言われるままに、丸太橋の向こう視線を向けた。するとそこには一見すると黒い、いや、漆黒といっても良いほどの闇のウニ、針の一本一本がもやもやとして空間に溶け込んでいる、下側には割り箸にも似た小さな足が2本生えており岩の上にちょこんと立っていた。まるでこちらを観察しているようだ。


「お!ウニがおるなあ。ビー、あのウニがど~かしたんか?」


 大地にとっては、単にウニが居るってだけのもの。水の中ではないが、異世界なのだから、そんなことも在るだろうと考えていた。



「ダイチくん、あれね、あそこに居るように見えて、いないのね。存在自体がないの。たぶん、存在確率操作、ちがうわね、位相変換?・・・観測者であるこちらに動転位相を強制認識・・・、時間をずらしている可能性でも・・・」


 ビーが腕を組んで盛んにぶつぶつ唱えながら考えている。自分の世界に入ってしまったようだ。


 ビーが考え込むのはなかなかに珍しいのだがダイチはそんなには異常だとは思わなかった。


 ダイチはバシャバシャと川の水を飛ばしながらそのウニに近か付いていった。


 ビーが自分の世界から戻ってきたときには、大地はウニの目と鼻の先だった。


「あ、ダイチくん」


 ビーの少し焦っているような声がダイチの耳に届いたが、かまわず進み、ウニまで手が届くような場所でとまった。


「おい、お前はなんなんや?」


 大地は特に返答を期待していたわけではないのだが、その漆黒のウニに問いかけた。


 漆黒のウニは小首をかしげる様にして大地を見上げている。


「まあ、ウニはウニやな」


 大地はくるりと回り、ビーに向かって足を踏みだそうとしたタイミングでそのウニから声がかかる。


「ほ~、妾に問いかけるか」


 その声は少し低いが明らかに女性の声だった。


「え、今、声出したのだれや、ビーか?」


 大地は方眉を歪めながらビーに問いかける。


「ビーじゃないのよ」


 ビーはぶんぶんと首を振っている。


「コッコさん・・・は、まだあっちの世界に行ったままやね、じゃあ誰やって言うてもこのウニしか居らんなあ」


 如何にも面白そうにウニから声がかかる。


「くっくっく、お主、おもしろいのう」


 ウニは左右に体を振りながら数歩大地に近寄る。


「まあ、ぼけは関西人としてはやっとかんとあかんしね、で、あんた何者や」


 内心驚いていないわけではないのだが、努めて平静をとりつつ問いかける。


「ダイチくん離れてなの」


 ビーから鋭い声が掛かる。感知できない得体のしれないものに対して警戒しているようだ。


「なにもせんよ、幼き神よ」


 ウニは軽い口調でビーを制する。


「貴方は、何なの?」


「さて、妾が何者かとの問いなのだが、妾は何者なのかのう、皆からは、漆黒の神と呼ばれておるようだがのう」


 ウニはさもおもしろそうに答える。


「え、このちっこいウニが、死を司ってると言われる漆黒の神さんなんか?」


 大地が不思議そうに返す。コッコから聞いた話を思い出したようだ。たしかに、そう言われれば神々しさを感じないわけではないが、どちらかと言えば怪しさのほうが勝る。


「お前さん、ちっこいとは失礼な奴だのう。確かに妾は小さくてかわゆいが、ああ、言わねば判らぬかのう、ふむ。これは妾の僕ぞ。妾は今、僕の体を通して言葉を伝えておる。本物の妾に会えば心を奪われるのは間違いないからのう」


本体に会うと心を奪われるなど、自分の容姿には自信があるようだ。


「かわいいかどうかは知らんけど、(しもべね、ふ~ん。なんか、口調がミネラさんに似てるかも。」


「(ミネラさん、心配してるだろうなあ)」


「それに、妾は死の神というわけではないのう。まあ、死した者はすべて妾の基に来るから、あながち間違いでもないのだがのう。妾は時の管理者なのだのう 。死したもの達の生きた時を巻き戻しておるのだ、敬うがよいぞ」


「巻き戻す?」


「死した者が、何時までも生の時を覚えていたのでは次生に移れぬのでのう、生きたときを妾の基に置いていくのじゃ。妾に置いて次生に旅立つのだからのう」


 心なしかそのウニは胸を張っているように見える。


「その、時の神様がなにようで?」


 大地はさわらぬ神に祟りなしとでもいうのか、少し下手にでるようにしたようだ。


「なに、ここに大きな力を感じたのでのう、妾は動けぬのでのう、僕を遣わしたと言う訳なのだのう。そして、来てみればそこに、幼き神がいるではないか、これは挨拶でもと思うてのう」


「ビーも力ぐらい感じれるもん、今、感知器官休眠中だから、だいたいしかわからないけ ど・・・。時間を停めるぐらいならビーもできるもん・・・、限定空間の固体単体だけど」


 ビーは少し対抗意識があるようだ。頬を膨らませている。


 大地はなに言ってんだといった目でビーを見ながら、時の神であるウニに視線を向ける。


「そうですか。ビー、時の神様が挨拶したいって」


「ビーの方がぜったいかわいいもん、ぷいっ」


 口を尖らせて横を向くビー。自分でぷいって言っているのがおもしろい。


「ビー・・・」


「だって、ビーの方がぜったいぜ~たいにかわいいんだからね。ダイチくんもそう思うでしょ?」


「ビーがかわいいのは判るけど、時の神さんはしもべやし、ウニやし」


「そうじゃのう、そうじゃのう、ほっほっほっ、この場は妾の負けでかまわぬのう。直接会えば幼き神の敗北が決してしまうゆえ、ここは花を持たそうかのう」


「・・・なんか、負けた気分なの」


「改めて、妾が時の神、ルルー・ルロー・ロラー・ラルーじゃ。ルルーと呼ぶことを許そうぞ。僕の姿ですまぬのう、妾が動くと、死者の魂が迷ってしまうので動けぬのからのう」


「ビーなの、今はこのカッコいいダイチくんの嫁なの。ね、ダイチくん」


 少しだけ硬くなった声が自己紹介をするが内容はぐだぐだだ。


「嫁って・・・、俺は大地。水無月大地。まあ、このビーのパートナーってとこやな」


「パートナーって・・・。うん、もう、照れてるのねダイチくんたら、ふふふ」


 どこまでも前向きのビーだった。


「ほう~、お前さん、家名があるのか?貴族、いや、お前さん神の御使いじゃったな。ふむふむ、んん?幼き神ビー殿よ、気付いておるかの?」


 大地を見ていたウニがビーに視線を移し問いかける。ルルーは何かに気が付いたようだ。


「ん、なんのことなの?ルルーちゃん」


 ビーは神であろうと知り合いになればちゃん付けで呼ぶ。


「ルルーちゃん?むむ、ルルーちゃんとな、ふむ、ふむふむ、ふむ」


 大地は神に対してちゃん付けで呼んだことが癇に障ったのかと冷や汗をかいていた。


「えっと、ルルー様」


 大地の問いかけを塞ぐようにしてルルーが少し興奮したような声で返す。


「良い、良いのう。妾もビー殿のことビーちゃんとよんでも良いかのう?」


 ウニの僕はぴょんぴょんと飛び跳ねている。


「いいよ~」


「良いのか、良いのじゃな?では、ビーちゃん」


「なに~、ルルーちゃん」


「うんうん、ビーちゃん」


「ルルーちゃん」


「ビーちゃん」


「ルルーちゃん」


「ビーちゃん」


 ルルーはちゃん付けで呼び呼ばれるのが嬉しいのか終わりがにように見える。


「あの~、ルルー様?」


 大地がこのままでは永遠に続くと思ったのか、呼びかけに割り込んだ。


「むむ、お主、そのような呼び方は止めてくれるかのう、妾はルルーちゃんだのう。ルルーちゃんと呼ばぬか」


 気を悪くしたように少し越えのトーンが上がっている。


「そうなの、ルルーちゃんなんだから~、ダイチくんもルルーちゃんって呼ばなきゃだめなの」


 ビーからもダメだしだでる。意を決して大地は声を出した。


「えっと・・・、ル、ル、ルルーちゃん?」


 少しどもってしまった。


「むむ、妾はルルルルーちゃんではないのう、ルルーちゃんなのだのう。これでは狐ではないので妾は返事はできぬのう。コ~ンコンッ、もう一回言ってみるのだのう」


「なんだこれ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ