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115/118

115.ビー、全部採ったらだめなのよ。

ハートはいいですね。ハート様はダメだけど。

* * *


 「ここがコッコの秘密の採集場所なのです。誰にも言わないでくださいね」


 門番さんに軽く会釈をして街をです。暫く道順に進んで、大きな岩が林立する処を過ぎてから、よく見ないと判らないような踏み分け道を辿る。さらに進むと、小さな川に丸太を数本掛けただけの橋の影に植物が密集する処があった。橋のたもとでコッコは笑顔で振り返って説明していた。


「えっと、葉の真ん中が赤いのがタキリキ草で、クロウ草はこんな形をした方です」


 そお言いながらコッコは胸の前で手でハートの形を作った。


「(顔は笑顔でまるでどこかのアイドルのCMのようやな)」なんて大地は思った。


「あ、ハートなの~。ダイチくんハート、ハートなの~。はい、ビーのハートあげるの~」


 ビーもコッコと同じように手でハートを形づくり、大地に向かって差し出す。


「おう、ありがとさん」


「ビー様、ハートってなんでしょうか?」


 コッコは不思議そうにしながらビーに尋ねている。その世界にはハートと言う言葉は存在しないようだ。


「えっと、ハートはね、心、ん~と、想いってことなの。だからね、ダイチくんにビーのハートあげるってことはね、ビーはダイチくんが好きってことなの~。ね、ダイチくん」


「ん、まあな」


 ぽりぽりと頬を掻いている大地、照れているのだろうか。


「え~、なんかおざなりなの~」


 頬を膨らませて怒っているビー、でもすぐに笑顔になっている。


 少し薄暗い場所ではあるのだが、川に反射する日差しがキラキラと光り少し眩しく感じられる。


「採集の依頼はですねえ、ギルドで大体の場所を教えてもらえるので採集に行く前には、聞いた方がよいですよ。今日は、コッコが居るので大丈夫ですけど。あ、それと、採集品の資料もギルドにあります。絵が載った本が沢山あるのです」


 ビーはコッコに採集量について訊ねた。採集にでる前に確認しないといけないことなのだが、いや、それ以前に依頼を受ける前に確認が必要な点であるのだが誰も気にしていないようだった。


「コッコちゃん、それで、どれだけ採集したらいいの?全部でも一瞬で採集できるの~」


 コッコは持ってきていた採集カバンの中からごそごそと探って採集依頼票を取り出す。


 ビーと大地もコッコと同じようにその依頼票を覗き込んでいる。


「全部採ったらだめですよ。えっと、タキリキ草が30株、クロウ草が10株ですね」


「ん、全部はだめなの?」


「はい、だって、全部とっちゃったら、次がなくなってしまうじゃないですか。だから、残しておかないとダメなんです。あ、採取するときも、根っこは残しておいて下さいね」


「大目に採ってもだめなんや」


「はい、中級ポーションを作れる人が少ないから、大目にとっても無駄になっちゃいます」


「ふ~ん」


「えっと、じゃあ、このナイフをつかって・・・」


 コッコは採集カバンの中に手を突っ込んでごそごそしていたが、ビーに視線を向けて停まった。


「これで、いいのね?」


 ビーは、タキリキ草とクロウ草を両手で抱えて立っていた。


「ビー、それど~したんや?」


「ん、だって見れば判別できるし~、採集するものだけマーカー付けて、根っこの処に切断箇所設定してちょちょいって転送すれば一瞬なの~」


「凄いです、ビー様。しかも枯れ葉なんかも全て取り除いて綺麗になってる。あの一瞬で処理までされて・・・」


「転送時に劣化した部分やゴミなんか取り除けば綺麗なの~、これで依頼達成なの~」


 ビーは褒めて褒めてっと頭を大地に差し出している。大地は眼を細めながら頭を撫でた。


「えへへ」


「それじゃあ、依頼も達成できたし戻りましょうか?」


「そうやね、なんか、あっと言う間やったね」


「なんか、物足りないの~」


 次の瞬間、ふと、コッコは違和感に気づいた。少しだけ眉を寄せて考えていたが、なにかに気が付いた。


「あれ、ビー様?採集したものは何処に置かれたのですか?」


「ん、えっとねえ、異空間に仕舞っちゃった」


「異空間?ひょっとして、魔道具の無限カバンをお持ちなんですか?でも、今、カバンお持ちじゃあ無いですよね、何処に・・・」


「異空間の入り口はね、ず~と接続しっぱなしだと機械設置してエネルギー供給系準備しないとダメだけど、一時的に小さなものなら何処でも開けるの~、ほらこんなふうにね」


 ビーは左手をお腹にあてて、自分の腕とお腹で小さな円を形作る。すると、その小さな円の向こうが灰色に色あせて向こう側が見えていた。そこに右手を差し込む。そのまま右手を奥に進めると、見えるはずの右手の先端が見えない。とうとう肘まで差し入れたが一向にみえなかった。そして、ビーが右腕を引き出すと手にはクロウ草が握られていた。


「円形フィールドが作れれば何処でも入り口はできるんだけどね、ビーの体を媒介にすれば瞬時に開けるの~」


「そ、それは、魔道具じゃなくて、空間魔法じゃないですか?」


 コッコは大きく見開いていた。


「え~、魔法じゃないよ~」


「魔法じゃないんですか?固有スキル?でも、それにしても初めて見ました。それで、その空間にはどれくらいのものが入るのでしょう?」


「いっぱい、い~ぱい入るの~、何処まで入るかはやったこと無いからわからないけど、多分限界は無いと思うの~」


「無限・・・、ビー様、凄いです。無限カバンなんか足元にもおよびません」


 大地はビーがコッコに褒められて頬がにやけているだろうと想像しながらビーに視線を向けたが、ビーは少し怖い顔をして川の上流、丸木橋の向こう側を見ていた。


「あれ、ビーど~したんや?」

短くてすいません。

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