↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/26

第18話 森の恵み② 森に潜むもの


 翌朝。

 森には、夜の間に降りた露が残っていた。

 葉の先から雫が落ち、湿った土の匂いが漂っている。

 五人は村人から教えられた道を進み、採蜜場へ向かっていた。

「この辺りだな」

 先頭を歩いていたジュリオが足を止めた。

 道の脇には、低木の枝が折れた跡があった。地面には、落ち葉が不自然に掻き分けられた場所もある。

 ジュリオは腰を落とし、土の表面を指先でなぞった。

「足跡……というより、何かを引きずった跡か。こいつは大きいぞ」

「フォレストマンティスの脚が擦れた跡かもしれないわね」

 ミレイが傍らから覗き込んだ。

「カマキリ型の魔物は、獲物を追い回すよりも、身を隠して待つことが多い。周囲の枝葉が不自然に揺れていないかも見ておきたいわ」

「木の上にも注意した方がよさそうですね」

 ユノは視線を上げた。

 枝が重なり合い、木漏れ日が細かく地面に落ちている。確かに、何かが潜んでいてもすぐには気づけそうにない。

「そうだな。ユノ、足元の痕跡も見てくれ。変わったところがあったら教えてくれ」

「わかりました!」

 ユノは頷き、ジュリオから少し離れた場所を注意深く調べ始めた。

 しばらく進むと、彼女は地面に散らばる小さな緑色の欠片に気づいた。

「ジュリオさん、これ……」

 拾い上げずに指差す。

 ジュリオが近づき、目を細めた。

「殻の欠片か?」

 ミレイもそれを確認し、しゃがみ込んだ。

「おそらく魔蜂の外殻ね。ここで襲われた個体がいたのね」

 少し離れた場所には、細い木の幹に刻まれた傷があった。

 刃物で切ったような、鋭く深い傷だ。

「これがフォレストマンティスの鎌によるものなら、かなり近くまで来ている可能性があるわ」

「ならば、そろそろワシの出番というわけじゃな」

 ゲオルグが背負っていたアイアンラージシールドに手をかけた。

「まだ敵の姿は見えていませんよ、ゲオルグ」

 エルマが穏やかに釘を刺す。

「わかっておる。見えてから構えるのでは遅いこともある、という話だ」

 そう言いながらも、ゲオルグは盾を背負ったまま、周囲への警戒を強めた。

 五人はさらに奥へ進んだ。

 やがて、木々の間に小さな開けた場所が見えてきた。

 その向こうには、太い枝が幾重にも伸びる古木がある。周囲には小さな花が咲き、何匹もの魔蜂が行き交っていた。

 採蜜場の近くだった。

 ジュリオが片手を上げ、仲間たちを止める。

「……いたぞ」

 視線の先。

 枯れ枝と見分けがつかないほど、周囲に溶け込んだ巨大な影があった。

 長い脚。細い胴体。そして、胸元で折り畳まれた鋭い鎌。

 フォレストマンティスだった。

 魔物は枝にしがみつき、フォレストキラービーが近くを飛ぶのをじっと待っていた。

「魔蜂を狙っているようね」

 ミレイが声を潜める。

「このまま放置すれば、また被害が出るでしょう。けれど、魔蜂の巣に近づきすぎるのも避けたいわ」

「どうする?」

 ジュリオが尋ねた。

「この開けた場所まで誘導できれば、周囲を確認しながら戦えるはずよ。少なくとも、巣の真下で戦うよりはましでしょうね」

「よし。ワシが前に出る。ジュリオ、お主は退路を見ておけ。ミレイは魔物の動きを読め。エルマは後方を頼むぞ」

「はい!私も周囲を見ておきますね」

 ユノはショートソードの柄に手を添えた。

 ゲオルグが盾を下ろし、ゆっくりと構える。

 その金属音が、静かな森に小さく響いた。

 フォレストマンティスの頭部が動いた。

 次の瞬間、魔物は枝を蹴って飛び降りた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。