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コトルー王国物語【完結保証】  作者: 三川三山
第1章 『平凡だが、偉大な者たち』
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第8話 『フラン共和国』

フラン共和国は、もはや国の形を保っていなかった。


エリオットが失脚し、サラザールが統治者となった瞬間から――国はゆっくりと、しかし確実に腐敗していった。


「治癒魔法を受けたいなら、七割の税を払え!」


サラザールはそう言い放ち、パトリックの治癒魔法を独占して、国民から重税をむしり取った。


税を払えない者は牢獄へ。病気や怪我をしても治療費が払えなければ、ただ天命を待つしかなかった。


孤児が増え、犯罪が増え、国はゆっくりと死んでいった。


そして――革命が始まった。


セントラル公園に立つエリオットの石像。


かつて「国民の裏切り者」と書かれた看板は、国民の手でペンキが塗りつぶされた。


「裏切ったのは……私たちの方だった。」


人々は涙を流しながら、エリオットの政治を思い出し、自分たちの過ちを深く悔いた。


「敵は……サラザールだ!」


国民は気づいた。


この国が病気なのだと。そして、その病気の原因はサラザールだと。


国民は立ち上がった。


その混乱の中――エリザベスが動いた。


「……今なら、助けられる。」


マーガレットの体を操り、パトリックが幽閉されている部屋へ空間移動した。


「マーガレット様……?」


パトリックは驚いた。そして、瞳の奥に宿る“もう一人”の意思を感じ取った。


「エリオットを助けたいのよ。」


エリザベスの声は低く、強かった。


パトリックは頷いた。


「石化を解くには……依り代が必要です。サラザールを依り代にすれば、兄さんを救えます。」


「決まりね。」


エリザベスは微笑んだ。


見張りの騎士に向けて、指先から小さな火炎魔法を放つ。


「ちょっとだけ熱い思いをしてもらうわ。」


騎士は悲鳴を上げて逃げ出した。


パトリックを連れ、二人は堂々とサラザールの部屋へ向かった。


「な、何者だ!」


サラザールの衛兵にも、ほんの少し“熱い思い”をしてもらい、道を開かせた。


サラザールは簡単な魔法しか使えない。


拘束は容易だった。


「離せ!私はこの国の――。」


「黙りなさい!」


エリザベスの声は冷たかった。


サラザールを拘束したまま、セントラル公園のエリオットの石像の前へ連行した。


それは――石化されたエリオット本人だった。


パトリックは静かに石像とサラザールの両方に手をかざした。


「兄さん……今度こそ助ける。トラン!」


石化の魔法が、エリオットからサラザールへ移動する。


サラザールは石化し、エリオットは生身の体へ戻った。


エリザベスは満足げに微笑んだ。


「これで……あなたは自由よ。」


エリオットとパトリックをサラザール所有の馬車に乗せ、コトルー王国へ向かった。


旅の途中――


「マーガレット……助けてくれて、ありがとう。」


エリオットの言葉は、マーガレットに向けられたものだった。


エリザベスは心の中で叫んだ。


「私が助けたのよ!!」


しかし――その声は誰にも届かない。


嬉しさと嫉妬が胸の奥で絡まり、小さなしこりとなって残ったが、マーガレットは大切な姉なのだ。意識の支配を解くと、マーガレットはエリオットを抱きしめた。


コトルー城に戻ると、マーガレット皇女はエリオットとパトリックをオーディナリー王に謁見させた。


娘に迷惑をかけたことを悔いて疲れ果ててしまった王は、久しぶりに寝所から出てきた。


「……よく戻ってきてくれた。」


王は深く頭を下げた。


「私が送った食材のせいで……本当に苦労をさせてしまった。許してほしい。」


エリオットは首を振った。


「王が悪いのではありません。サラザールの謀略です。」


王は静かに言った。


「私は引退し、アルフォンスに王位を譲ろうと思う。」


その言葉に、マーガレットは胸が締め付けられた。


こうして――エリオットとマーガレット皇女、そしてパトリックはコトルー王国に滞在して、新たな未来を考えることになった。

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