第7話 『エリザベスの模索』
コトルー城の北塔――厳重に封印された宝物庫の前に、ひとつの影が現れた。
「……ここね。」
エリザベスだった。
空間移動の魔法で、誰にも気づかれずに侵入する。
「マーガレットを巻き込んで悪いけど……何か復讐に使えるものがあるはず。」
彼女の瞳は冷たく光っていた。
エリオットの石化を解く方法。サラザールを倒すための道具。
そのどれかが、この宝物庫に眠っているかもしれない。
エリザベスは宝物庫の中の大金庫の前に立ち、空間移動で内部へ侵入した。
「……これは」
厳重に保管された、大きな卵型の飾り。
古代文明の遺物だと思われる。
「攻撃道具かもしれない……試してみよう」
エリザベスは卵型の飾りを宝物庫の壁へ向けた。そして、少しだけ魔力を込めた。
その瞬間――
バチィッ!!
「えっ――!?」
彼女の体が光に包まれ、マーガレットの体とエリザベスの意識は吸い込まれた。
封印された。気が付くと、小さな玉座に座っていた。
暗闇の中で、声が響いた。
「初めまして。私は封印のオーブのパイロです。水先案内人という意味です。どうかよろしくお願いします。」
小さな光の粒が集まり、人工知能の姿を形作る。
「私は科学の進んだ古代文明の力をもってしても原因がわからない未知の病気にかかった人の体を封印するために作られました。」
「病気……?」
「あなたは“一人双子”という特殊な状態です。これは病気ではありません。それから、封印のオーブは一人用ですから、とりあえず出ていただけると助かります。封印を解くには、四人分の魔力が必要です。」
エリザベスは眉をひそめた。
「四人……?」
パイロは静かに言った。
「あなたたち二人の魔力を合わせますと、四人分に相当します。」
その瞬間――
マーガレットの目の中の瞳が変わった。
四つの瞳が現れた。すべて色が違う。赤と紫、青と緑
「……これが、私の力。」
エリザベスが四人分の魔力を注ぐと、オーブの封印が解除された。
光が弾け、解放された。
「あっぶない……。」
エリザベスは息をついた。
さらに、パイロの声が頭の中に響く。
『封印のオーブは一人用です。今後は、二人同時で入ることは禁止します。エリザベスならば自分だけの魔力を流すことができると思うので、次はお一人でどうぞ。』
「……もう入りたくないわよ!」
エリザベスはオーブを金庫に戻し、空間移動でマーガレットの部屋へ戻った。
その時――
エリザベスがマーガレットの体を支配していた。
「いつか……サラザールを封印してやる。」その呟きは、誰にも聞こえなかった。
4つの瞳がゆっくりと元の二つの黒い瞳に戻っていく。
一人双子であることは、絶対に知られてはならない。
知られれば、復讐は不可能になる。
マーガレットは表向き、“一人で魔法を使えるようになった皇女”として扱われている。
しかし――
エリザベスの黒い瞳が、闇の中で鋭く光った。
「復讐の準備は、まだ始まったばかりよ……。」




