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コトルー王国物語【完結保証】  作者: 三川三山
第1章 『平凡だが、偉大な者たち』
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第3話 『マーガレット皇女』

コトルー城の中庭では、馬車の前で侍女たちが慌ただしく動いていた。


「姫様、こちらの衣装も積み込みました!」「化粧品もすべて確認済みです!」


マーガレット皇女は微笑みながら頷いた。


「ありがとう。フラン共和国でも、きっと役に立つわ。」


その横では、ゴードンとモーガンが大量の食材を馬車へ積み込んでいた。


「兄ちゃん、果物は全部そろった?」「ああ。魚介も氷魔法で鮮度ばっちりだ。」


これはオーディナリー王からの心づくしの贈り物。娘の輿入れを祝うため、そして隣国との友好を深めるための大切な食材だった。


そして――


マーガレット姫はフラン共和国へ嫁いでいった。


フラン共和国民は喜んだ。隣国の姫が持ってきた食材は各家庭に配られ、食卓には珍しい料理が並んだ。


「こんな美味しいもの、初めてだ!」「マーガレット皇女とエリオット代表議員の結婚は本当に素晴らしい!」


しかし――その幸福は長く続かなかった。


ある家族の子どもの一人が、食事の最中に突然呼吸困難を起こした。治癒魔法師であるパトリックが駆けつけても原因がわからず、治療ができない。


そして、命を落とした。


同じような事件が続けて起きた。


国民の祝福は、一瞬で恐怖へと変わった。


「姫が持ってきた食材に毒が入っていたんだ!」「フラン共和国を滅ぼすつもりだったんだ!」


人々は怒り狂い、エリオットとマーガレットの居宅へ押し寄せた。


「違う!マーガレットはそんなことしない!」エリオットは必死に庇った。


しかし――


この混乱を利用しようとする者がいた。


サラザール。


貴族であり議員の一人。以前から代表議員の座を狙っていた男だ。


「この国を救うのは私だ!エリオットではない!」


サラザールは国民を扇動し、革命を起こした。


「マーガレットを斬首にせよ!」


エリオットは叫んだ。「そんなこと、許されるはずがない!」


双子の弟パトリックも駆けつけた。「裁判もなしに刑罰など受け入れられない!」


四人は議場へ向かった。


しかし、それは罠だった。


サラザールの手下がマーガレットを拘束し、エリオットとパトリックを取り囲んだ。


「パトリック。お前の石化魔法でエリオットを石にしろ。さもなくば、マーガレットの命はない。」


パトリックは震えた。


「兄さんを……石化しろというのか……。」


しかし、マーガレットの命がかかっている。


「……ごめん、兄さん。」「ああ、やってくれ。」


パトリックは石化の魔法を唱えた。エリオットの体がゆっくりと石へ変わっていく。


「必ず……必ず助ける。いつかサラザールの体を依り代にして、石化を転移させる……。」


パトリックは涙をこらえながら誓った。


しかし――


マーガレットの心は、悲しみと怒りで崩れ落ちていた。


愛する人が石にされ、自分は毒混入の濡れ衣を着せられ、国民に追われ、命を脅かされている。


その瞬間だった。


マーガレットの中に、もう一人の人格が生まれた。


「……エリザベス?」


それは、怒りと悲しみから生まれた“もう一人の自分”。


エリザベスは叫んだ。「こんな場所、もう耐えられない!」


そして、黒い二つの瞳が4つになり――長距離空間移動魔法を発動した。


光が弾け、マーガレットの体は消えた。


次に現れたのは、コトルー王国だった。


サラザールは逃げられたことを悔しがったが、国内唯一の治癒魔法師であるパトリックを幽閉し、治癒魔法を独占した。


「治癒を受けたいなら、七割の税を払え。」


こうして、フラン共和国は圧政の時代へと変わっていった。


そして――コトルー王国に戻ったマーガレットの中には、誰も知らない“もう一人の姫”が潜んでいた。

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