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コトルー王国物語【完結保証】  作者: 三川三山
第1章 『平凡だが、偉大な者たち』
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第2話 『天龍』

コトルー王国の空に、突如として影が落ちた。


「……あれは、天龍だ!」


城下の人々が一斉に空を見上げる。青い鱗をきらめかせながら、巨大な翼で空を切り裂く中型の天龍――。赤い大型種ほどではないが、それでも街を破壊し、人を捕食する脅威だ。


第一魔法師団長アルビスと、第二魔法師団長ユージンはすぐに動いた。


「ユージン、サーチを使うぞ!」「分かっている!」


二人の瞳が鋭く光り、天龍の弱点を探る。


「首だ!そこが弱い!」


「魔法師団、総攻撃!」


無数の魔法が空へ向かって放たれた。炎、雷、氷――色とりどりの魔法が天龍の体を撃ち抜く。


「落っちろぉぉぉッ!」アルビスとユージンも最大の魔力を込めて炎魔法を放つ。


「キエイャー!」天龍が悲鳴のような咆哮を上げ、ついに入江へ落下した。


海面が盛り上がり、巨大な水柱が上がる。


騎士団が船を出し、息絶えた天龍を海岸へ引き上げた。


その知らせを聞いた皇太子アレクシスと弟アルフォンス皇子は、興奮しながら駆けつけた。


「すごい……これが天龍か!」


騎士たちの歓声の中、アルフォンス皇子はつい調子に乗ってしまった。


「どうだ!」


地面についた青い天龍の頭を、足で踏みつけたのだ。


アレクシス皇太子もその隣で右腕を上げ、ポーズをとった。


「兄上、私も!」「おう!」


二人が勇ましいポーズを取っている――その瞬間だった。


ピクリ。


「……え?」


天龍の頭が動いた。


次の瞬間――


ガブッ!!


「ぐあああああッ!!」


天龍は最後の力を振り絞り、アルフォンスの右足に噛みついた。血が噴き出し、皇子は地面に倒れ込む。


「アルフォンス皇子!!」


アルビスとユージンが即座に炎魔法を放ち、弱点の首を撃ち抜いて両断した。今度こそ天龍は完全に絶命した。


しかし――


アルフォンスの右足は、膝の下から嚙切られて、既に失われていた。


「治癒魔法師を呼べ!!」


城から治癒魔法師が駆けつける。たまたま休憩時間だったゴードンとモーガンも同行した。


「……残念ですが、皇子様。私の治癒魔法でも、右足を再生することはできません。」


アルフォンスは静かに目を閉じた。


「すべては……私の責任だ。傷口を、きれいに切り落としてくれ。」


治癒魔法師がうなずき、処置の準備を始める。


ゴードンは、父アルビスの険しい表情を見た。モーガンは、叔父ユージンの苦悩の顔を見た。


(このままじゃ……皇子が……)


ゴードンの胸に、強い思いが湧き上がった。


「先生……僕たちに治癒魔法を試させてもらえませんか?」


治癒魔法師は驚いた。


「……本気か?」


「はい。やらせてください。」


迷いながらも、治癒魔法師はうなずいた。


「……分かった。やってみろ。」


ゴードンとモーガンはアルフォンス皇子の右足に手をかざした。


「いくよ、モーガン」「ああ」


二人の魔力が流れ込む。


骨が――戻る。筋肉が――戻る。血管が――戻る。皮膚が――戻る。


少しずつ。本当に少しずつ。


右足が、完全に元通りになった。


「……!」


治癒魔法師は言葉を失った。アルビスもユージンも、騎士たちも、誰もが息を呑んだ。


ゴードンとモーガンは疲れ果てて座り込んだ。


「……治った?」「ああ……治ったみたいだ。」


騎士たちが歓声を上げる。


「すごいぞ!!」「皇子様の足が戻った!!」「双子の料理人がやったぞ!!」


アルフォンス皇子は、元通りになった右足を見つめ、深く頭を下げた。


「ありがとう。」


ゴードンは慌てて言った。


「皇子様、頭を上げてください!」


「いや……私は調子に乗っていた。敵であっても、最後まで敬意を払わなければならない。今日、そのことを教えてもらった。」


その日から――


アルフォンス皇子とゴードンは親友になった。


そして、アレクシス皇太子も心を決めた。


「私も……治癒魔法師になって国民を幸せにしたい。」


四人はともに治癒魔法を学び始めた。


それは、コトルー王国の未来を大きく変える第一歩だった。



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