第1話 『ゴードンとモーガン』
コトルー王国の朝は、いつも活気に満ちていた。市場では魚の匂いが漂い、遠くの畑では穀物を刈る音が響く。山では果実や木の実が取れて、山野草も豊富だった。
そんな平和で豊かな国に――双子の少年がいた。
「兄ちゃん、今日のスープ、絶対うまくなるよ!」モーガンが大鍋をかき混ぜながら笑った。
ゴードンも笑う。「昨日も同じこと言っていただろう?」
二人は料理が大好きだった。まだ見習いの身だが、城の厨房で働きながら、いつか立派な料理人になることを夢見ていた。
けれど――二人にはもうひとつ秘密があった。
治癒魔法の修行。
父アルビスと叔父ユージンは、魔物との戦いで傷つくことが多い。だから双子は、いつか自分たちの魔法で助けたいと思っていた。
「兄ちゃん、今日も練習しよう!」
「ああ。いつか……誰かの命を救えるようになりたいな!」
ゴードンとモーガンは、生まれながらにして強大な魔力を持っていた。青と緑のオッドアイ――それは、この国で“強い魔力を持つ双子”の証だった。
そのため、この双子の父親であるアルビスは頭を抱えていた。
「なぜだ……せっかく魔法の才能があるというのに。」
ゴードンは真っすぐに言った。「料理をするのが大好きなんだよ。」
モーガンも続ける。「人に食べてもらって、笑ってもらうのが嬉しいんだよ。」
アルビスはため息をついた。「……なら、城の料理人になれ。ただし、俺たち、魔法師団の仕事を嫌でも見ることになるから、かっこいいと思ったらこちらの世界にいつでも来るがいいさ。」
「いいよ!」「やった!」
双子は声を上げて喜んだ。
そして十五歳になった日、二人は城の料理人として働き始めたのだった。
最初は洗い物と仕込みばかりだった。野菜を洗い、肉を下ごしらえし、魚をさばき、鍋を洗う。
「はぁ……今日も仕込みか」モーガンがため息をつく。
「でも、いつか料理を任されるようになるさ」ゴードンは笑った。
その言葉どおり、少しずつ料理を任されるようになった。サラダ、スープ、簡単な料理――
騎士たちが笑顔で言う。「今日のサラダ、うまかったぞ!」「特にドレッシングが最高だ!」
双子はその言葉がたまらなく嬉しかった。
そんな二人のそばには、もう一組の双子がいた。
皇太子アレクシスと、その弟アルフォンス皇子。
二人もまた赤と紫のオッドアイで強大な魔力を持っており、父親のオーディナリー王からはいつもこう言われていた。
「力を持つ者ほど、国民を愛しなさい。そして、国民を大切にして守りなさい。」
先代の王から“平凡”という意味を持つ名を与えられたオーディナリー王は、『国民の平凡な幸せを守ることこそが偉大である』という言葉を信条としていた。
そんなある日――
空から、一頭の天龍が飛来した。




