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■プロローグ 『荒れる騎士』
人の体の中には、小さな騎士たちが住んでいる――。
それは、ジャックとジョージが幼いころに母から聞いた物語だった。
「体の中に悪いものが入ってきたらね、その騎士たちが戦って守ってくれるのよ。」
母はいつも優しく笑いながらそう言った。
二人はその話が大好きだった。自分の体の中で、小さな騎士たちが走り回り、悪い敵をやっつけてくれるから元気でいられる――そんな想像をするだけで胸が躍った。
けれど、母は時々、少しだけ悲しそうな顔をした。
「でもね……騎士たちは、ときどき間違えるのよ。」
二人は首をかしげた。
「間違える?」
「本当は敵じゃないものまで、敵だと思って過剰に反応して大騒ぎしてしまうことがあるの。そのせいで、その人を苦しめてしまうことがあるのよ。」
母は静かに続けた。
「それがね……“荒れる騎士”って呼ばれる病気なの。」
その言葉は、幼い二人の胸に深く刻まれた。
守るために戦うはずの騎士が、間違えて苦しめてしまう――。
体の中に当たり前にいて、優しい存在が、偉大な力で守ってくれている。しかし、ときには恐ろしい力にもなって人を苦しめる。
母から聞いた物語の意味を、二人が本当に知るのは――ずっと後のことになる。




