それでも生きている
学生が通うには狭い商店街を通り大学に向かう。大学入学当初は長く感じたこの道のりは、今では何も感じなくなってしまった。歳をとってしまったせいか、それとも堕落しきってしまったせいか、その両方かもしれない。教室に入り、見慣れたやつが目に入る。
「全然勉強してねえ、でもなんとかなるか」
「まあ、なんだかんだ言って単位はもらえるしな」
「ここのレジュメ書いてないから見せて」
「いいよ」
俺はコバンザメのように生きている。成績なんてものはまるで存在しなかったかのように。GPAでいうと最優秀防御率が取れるほどの成績で、施しようがない。それといって低いわけも話せるほどのものはない。
昨日一緒に遊んだやつがこっちに来る。
「そういえば、昨日どうだったすか」
「まあ、よかったよ」
嘘だ、なんもよくなんてない、現状から悪化したくらいだ。いつか本当のことを言おう、その上で、俺は幸せになろう。
「めちゃくちゃかわいかったねえ、これで晴れて童貞卒業かな。おめえはコブダイみたい顔のした女だっけか」
「でも、お前、素人童貞じゃん」
「そうだけど、あれはねえよ」
中間試験が終わり、単位が取れそうなそう感覚だけが残る。
百人いたら百人が俺のことをどうしようもない奴だと思うだろう。それでも、そんな俺をいい奴だからと許してくれる友達がいる。サーカスの動物小屋を覗くような感覚だろうが、それでもいい。
「これからどうすっかな、就職とか、大学院いくとかあるじゃん。インターンで行ったとこは早期で落ちちまったよ。なんだよ、マジで専攻と関係あるのかとか詰められなきゃいけないだよ。どういった製品開発に携わりたいかとか具体的に刺されてきたわ。」
「まー、しゃーない」
「浅はかな人間だって見抜かれたか、ガクチカだってさ、1年半前にやめたバイト先の経験だぜ、もう腐ってんだろ。やめた理由もパチンコ行ってて、2コマ飛んで居づらくなったからだしな、ほかにもあるけど。どうすればいいのよ、これから先、永遠ともいえた大学生活もあっという間だな。そっちは進路とか決まってんのか」
「これからって感じだし、早くね」
3年の10月にまだ就活って時でもないことが当たり前という世界に俺はいる。きっと、これから先もそうなのかもしれない、そんな何も進まない世界なんて滅んじまえ。
「そうだな、俺はもういいや、就活の話をするとブルーになるからやめにしよう。」
「最近、彼女とはうまくいってるか」
「まあ、うまくやってるよ」
「彼女めちゃくちゃかわいいんだっけ、うらやましいなあ。もうないね、はっきりいって大学でだめなら、これから先もきっとだめだ。素人童貞として責務を真っ当するわ。」
「これから先、ながいんだからきっとあるって」
「ラインの内容も、大学でのふるまいもキモキモ男だから、ねえよ。」
「まあ、確かにそうだけど、服買ったらどうだ。」
俺は運動なんてたいしてしないくせに、一年中スポーツウェアを着ている。通学用のリュックは肩に片方だけ引っ掛け、まるでトートバッグみたいにだらしなくぶら下げる。バッグの底からはペットボトルが覗き、奥には飲み終えた酎ハイの缶が転がっている。歩くたび、それが背中にぶつかって、かしゃん、かしゃん、と乾いた音を立てる。バックの中で風邪薬の瓶が漏れだし、バニラのような匂いが立ち込める。
「金ねえから無理だ。そもそも全部じゃねえか直さなきゃいけねえ所、自分らしくでいいよ。それで彼女ができたら、きっとその女はいいやつだよ」
「確かにそうかもな」
そうやって、互いにこの事で考えることをやめにした。




