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8話 起承転結の前の遭遇

魔眼って良いよね。fateのライダーさんを見てから石化の魔眼は強力なチャーム(魅了)じゃないかと思ってます。

「ほうほうでは 君たちは生活のためではなく旅をするために冒険者になると?」


御者はガストンさんが務め、俺たちはこの商隊の長であるウェルキンさんと話をしていた。


「そうですね、村では生活には困らない程度の自給自足が出来ているので、

何をしたいかを探す上で冒険者と言うのが一番都合が良いので登録をしようと考えているんです。」


ふむ、と思案をするようなそぶりを見せたウェルキンさんだが、

特に悪い考えでもないと言うように微笑を浮かべた、


「冒険者組織は知っての通り国や思想に縛られない自由を掲げていますし、その人材を活用するためにさまざまな国での身分は保証されるし、旅をするには良いかもしれませんね。」


けれど商人もそこら辺はあまり変わらないのではないだろうか?

禁制品を扱うわけでもなければ自国で商売をされる分には経済的な活動によって

紙幣や商品が巡り、豊かになるのでそれを制限されたりはないでしょう?と疑問を口にしてみる。


「外から見る分にはそう見えるのでしょうが商人も国を超えたギルドのような組織である《統合市場管理団体》という組織があるんです。一般的には義務商会などと呼ばれていますね、この団体は商業を行うための資格である、商業証書を発行する唯一の機関なんですよ。」


それなら何度か耳にしたことがあるな。


「経済支援だけではなく、貧窮した国の資源の権利を買い取り、実質で国を幾つか掌握していると言う話まで聞いたことがありますね。やっぱり一概に商人を守るための組織と言えるわけではないのですね?」


俺の答えを聞き、驚いた顔をして馬車の窓に肩肘をついていた体勢から、こちらに向き直り

腰をすえて話をするようだ。こちらを会話相手として認めてくれたようだ。


「年の割りにとても聡いですね。君の言うとおりです。この組織の出す証書には各国での自由貿易の権利、入国する際の過剰な税の取立ての禁止や義務商会の経営する銀行での証書の換金など商道をする上での必要な権利の一切が含まれていて、加入しなければ商売をすることはほとんど不可能なんです。そしてこの義務商会は証書の対価として商会が命令書を発行した際の履行義務もついてくるんです。つまりは商会は全商人の財布の紐を握っているのに等しい力を持っているんですよ。」


ということは商会に敵対した組織への経済制裁が簡単に行えるまでの力を持っていると言うことだ。

それこそ国一つを飢餓で滅ぼすことも可能なほどに。


「財布を握られているだけではなく命令として商路の指定なんかもありますね。だから自由とはかなり縁遠いんです。」


なかなか難しいものだな。数多くの命がある以上ルールを守らなければいけないのはどこも変わらないようだ。苦い顔で笑うウェルキンさんもあまり良い気分がするものではないだろうと思い話を打ち切ることにしよう。


「商人は利益の対価に自由を支払い、冒険者は自由の対価に、命を支払う お互い隣の芝は青く見えるようですね。」


そう返すとウェルキンさんは苦笑いを崩し一言「違いないですね。」と微笑んだ。


そのまま夜になるまで商隊一行と他愛ない話を続けたりしたのだが一度 魔獣に襲われるとこともあった。




丁度、夕暮れになる一刻ほど前だろうか街道の様子がおかしいと思い外をのぞくと

少しピリピリした雰囲気のガストンさんが「音がしない」と馬を止め周りに耳を澄ましている。


そういわれてみると

街道脇の森からは不自然なほど物音がしない。

普段は鳴いているだろう鳥や虫の音がしないのだ。


狩りをしていた時に染み付いた経験上、森が静まっている際は何か強いものがいる証。

広範囲から音が聞こえないと言うことは、点在して何かが潜んでいると言うことに違いない。


その様子に警戒を強め弓を持つが、ガストンさんが右手をだし制止されてしまった。


「俺たち先輩冒険者が未来ある若人たちにかっこいいとこ見せてやんなきゃ示しがつかねえさ」

と大きく笑う。

その体にはかすかな緊張が込められているが体を硬くするようなものではなく、本当の意味で慣れているだろうことが伺える。


「クラムは前で囮を頼む。」

ガストンさんが素早く腰に下げたロングソードを抜き指示を掛ける。


「あいさ」と返事を出すまえからクラムさんは器用に蛇のような足をうねらせ先へ行ってしまう。


あのように突出してしまって大丈夫なのだろうかと心配をするが、

ベテランの仕事に口を出せるような身分でもないのでここは見学させてもらおう。


「レイナ広めに炙り出してやれ!」と指示を受けるや否や、


レイナさんが小さな体に杖を携え魔術を構築していく。


「-------------------」


何を唱えているのかは分からないが一言重ねていくたびにレイナさんの周囲から魔方陣が現れ、

輝きはじめる。


「-------------------」


幾つも魔方陣を重ね、輝く魔方陣が20を超えた所、

「-----」


強くレイナさんが何かを唱えたかと思うと空中に点在した魔方陣は輝きを白から赤へと変え、激しく回転を始める。


全ての魔方陣が色を変え激しく回るのを確認すると、レイナさんは杖を掲げ、振り下ろす。


「アンロック!」


その瞬間、魔方陣から幾つもの火を纏う矢のような光が飛び出し 左右の森に飛ぶ。


その矢は森の至る所に突き刺さり爆炎を吹き上げる。


------ギャウッ!


ー----ガァ!


------グルルルァ!



その火を受け炙り出された影が幾つも躍り出た。

一匹は足に炎が突き刺さり毛皮をさらに燃えさせ、また一匹は目に刺さった矢を抜こうを前足で必死に顔を拭う。だがその火は前足にも火を移しその体を焼き広げていく。


影はその数15にも及ぶような狼の群れであった。



しかし、矢の直撃を受けたのはせいぜい2、3匹で群れを全滅させた訳ではない。

この炎に怒りを露にする狼達は近くに突出してきていたクラムさんに襲い掛かる。

これは不味いと思い、なにかクラムさんを守る手立てはないかと弓を引き絞り考えるが、

弓を放たんとする前にまた何かの詠唱を完成させたレイナさんが振り上げた右手を振り下ろす。


「-------」


口上を詠むと同時にクラムさんの周囲から炎のカーテンが吹き上がった。


そのカーテンはクラムさんに襲い掛かっていた狼達を火達磨にし、他の狼には攻撃を躊躇させる。


そのまま睨み合いをするのかと思ったが、その火の壁より飛び出す影があった。

その影は驚きから立ち直れず 動きを止めていた狼達の額にエストックを突き出し、あっという間に絶命させていく。


影は巻き起こる炎の揺らめきのように狼を屠ったかと思うと次の狼の横に現れ死体を増やしていく、


その眼には煌々と光る紫の輝きを灯して。



そして最後に残ったボスと思われる狼は、呆気にとられていた事から立ち直り、

回りに仲間がいなくなった事に気づく。

そしてなぜか狼の前に立ち尽くしている仲間を殺した元凶であるクラムさんに、

今が好機だといわんばかりに飛び掛ろうとする。


が、狼はその場から一歩も動けていなかった。


クラムさんが一歩づつ緩慢な動作で狼の元に近づいていくが狼は時が止まったかのように硬直して動かない。


一歩、また一歩と近づくクラムさんが エストックを軽く体へ引き戻す。


-----ガスッ


狼は其のまま微動だにしないまま額を突かれ、命を散らした。



◆


いやぁ夕方の戦闘は凄かった。


あれだけの狼に囲まれるだけでも絶望的な状況だと言うのに、

こちらは相手のエリアに飛び込むような形で戦闘を行ったうえにほとんど2人での戦闘だったのだ。


それを危なげもなく圧倒的に終わらせるなんて相当なものだろう。


日が暮れたためキャンプをはり焚き火を囲んでいる。


朝仕留めた 鶏肉の残りをレナスとともにもっきゅもっきゅと

ほっぺたを限界ちかくまで頬張っているクラムさんと

火の近くでうとうとと舟をこいでるレイナさんからは想像も出来ない。


だが先ほど興奮のあまりクラムさんに

「やっぱり長年冒険者をやってらっしゃる方は別格でした!やっぱり何年もずっと冒険者をやっているとここまで違うものですね!ところで凄く旅慣れてる感じがするのですがいったいお幾つなのですか?」


などと馬鹿なことを聞いてしまった際には。


無表情でこちらの頬の両手で押さえ顔を近付けてきたクラムさんに

「うちは若いんや。ベテランだろうがぴっちぴちなんや。」と強制的に納得させられる羽目になった。

何か触れてはいけない所に触れてしまったらしい。

あまりの気迫に混乱してしまった俺は「年齢を気にされている様でそれを気づかず尋ねてしまい、すいませんでした!」


と自分で止めを差してしまった。


そのまま答えを聞き、にっこりと笑うクラムさんはアイマスクを外し、

紫色に光る目で此方を見つめたのだった。

 

 <●><●> と見つめられた俺は体の自由が一切利かなくなった。


あれはヤバイ。

ボス狼の気持ちがよく分かった。南無。

 


そして過去にもし声を届けられたのなら30分前の俺よ。

デリカシーを覚えろ、早急に。


そんなことを後悔しながら俺は一晩中、立ったままで体を動かせないまま

朝日を拝んだのであった。


ちなみにレナスは俺が動けないことをいい事に顔をつつき回したり、

バッグの中の最後に残ったなけなしの鶏肉を貪っていた。



あれ。ガストンさん何もしていない。

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