6話 起承転結への凱旋
野営っていいよね。一度でいいから野宿してみたいです。
いよいよこの日がやってきた。
天気は快晴。
荷物は纏めた。
12年過ごした村を離れて冒険者へと足を踏み出すめでたい日だ。
両親や村のみんなにも挨拶は済ませ村の門を出て歩みを進める。
後ろを振り返れば手を振り続ける母。
腕を組んで父が立っている。
顔が若干赤いので俺たちの姿が見えなくなればきっと泣き出してしまうのだろう。
ほかにもヴァンパイアの兄さんは麦藁帽子を被りコートを着て手を振っている。
日光に当たると皮膚が焦げるのに 態々この日が強く刺す中見送りに着てくれたのだろう。
雷親父のドワ爺も見える。狼人族のおっさんもいる。
村のほとんどの人たちがみんなしてこちらを向き思い思いの形で門出を祝ってくれているのだ。
さぁ 歩き出そう。
歩みを進め街道を進んでいく。
「さて王都までは5日だから俺たちの足で2週間くらいは掛かるかな」
「まぁ単純に行けばそうでしょうね。でも行商人が通りかかったら交渉して載せてもらえればもう少し早まるんじゃないかしら?」
まぁ山を越えるわけでもないのでそこまで難しくはないだろうがよく親父たちもこんな子供を送り出したもんだ。
普通は12歳なんてもっと子供だし分別もつかなさそうなもんだろうしなぁ
「まぁそこは人間よりも成長が早い亜人さんたちもいるし、一概に12歳は子供って言うわけじゃないんじゃないかしら?
現に虫の亜人さんなんか生まれて一週間で孫が出来ましたなんていう話も聞くし、そこまで不思議な事じゃないわよ。」
王都に行けば今まで見たことのない人たちはたくさんいるのだろう。
定番のエルフにワーキャット、サキュバスにノームにドライアドにハーピーやセイレーンなんて人もいるかもしれない。
「ケイト鼻の穴が大きくなってる上に口元がだらしないわ。あんまり節操ないようだと捥ぐわよ?」
「やめてくれ。まだ俺は姉妹になる気はない。」
リュックを背負いなおし、気持ちを落ち着ける。
「そういえば王都には学院があるらしいけどどうする?」
「魔術とか学べるらしいけど結構お金が掛かるらしいわね。冒険者としてある程度稼ぎが出来てから、
宿を卒業して部屋でも借りれるようになったら考えてもいいと思うわ。年齢制限もなかったはずだから案外いい考えかもしれないわね。
私は魔術苦手だからあまり気が進まないけれど武技に関しての専攻も出来るらしいから私が入るならそちらに進むのもアリじゃないかしら?」
「まぁ最初は生活基盤なのは分かってるさ。母さんは純血のエルフだから魔術は種族的に生まれたときから行使できるらしくてあまり
理論は知らなかったけど、俺たちはきちんと理論で行使しないとだしなぁ。」
この世界の魔法には幾つも種類があり、
魔法は最上位の能力で、自身の体に魔の理である法を宿し、感覚的に行使が出来る事や、
炎の技一つにしても、『焼き尽くす』という概念レベルでの技を使用できるが、身に属性を宿すため、
相性の悪い属性は威力が落ちたり、自身にとっての弱点となったりする場合もある。
他にも魔力を込めればその対価で行える範疇であれば無詠唱や発動後に形を変えるなどというのもこなせる。
その下に精霊術があり、属性を司る精霊を使役し魔法を行使することが出来るが。
精霊を媒介にするため魔力のロスが大きく、精霊の位によって権限可能な魔術も限られるなどのデメリットがある。
高位の精霊と契約するのにも苦労するが、比較的融通が利きやすい特徴を備えている。
その下には「魔術」
これが最も一般的で、自身の魔力を魔石やその土地の媒介に捧げ、
決まった口上で式を形作り、魔力と引き換えに現象を交換すると言うものだ。
媒介となるのには魔石などが一般的だが
魔石自体属性的な土地に長い間さらされることによって生成されるため高価だったりする。
森では植物、火山では溶岩など属性の強いものを媒介にすることが出来る分、比較的だれでも行使できたりするので普及している。
最後に固有現象と呼ばれるもので、ドラゴンのブレスやドワーフの鍛冶など、種族的に生まれ持ったものだ。
これは種としての素質が大きいためにあまり自分たちには期待できないだろう。
まぁ母の受け売りだけれどね。
そのままぽつぽつと会話をしながら進んでいたが日が暮れてきたので一足先に野営の準備をしよう。
「レナス、ちょうど湖が見えるし今日はこの辺で、野営しよう。」
レナスが荷物の中の油や飯盒を取り出し俺が干し肉を出し、近くの街道付近まで火を起こすための
石や焚き木を集める。
土を軽く掘り、円周に石を並べる。
中心には枯れ葉を敷き詰め細い枝から積み上げ太い枝を乗せて土台を作る。
こうして日が暮れ辺りが闇に包まれ始めた頃準備を終えた俺たちは、火をともす。
心の奥底の情熱をほんの一つまみ、その情熱を体の中で循環させ指先から送り出す。
「クスト・ラーヴァ(願う、初めの熱を)」
指先からちっこい閃光花火のような火が起こる。
それを土台に急いで近づけ息を吹きかけ飛ばしてやる。
吹き込まれた魔術は枯れ葉へ小さな火をつけるがその光を消してしまう。
その火を消えてしまわないように、風を送り込む。
次第に大きくなる火を枝で動かし燃え広がらせる。
俺が使える魔術はこんなものでしかないが、結構感動ものだ。
まぁ ゲームみたいな火炎弾にあこがれない訳じゃないんだけどね。
火をおこしたのを確認するとレナスが水筒から水を取り出し飯盒に注いで肉や米を入れていく。
調味料は塩くらいしかないけど 静かな森の中で空を見上げるとまぶしい位の星が空を照らし、
月が2つ浮いている。
突っ込んじゃいけない。
これがその世界なんだ。
あぁ。なんだか生まれてから一番異世界にきたことを実感できた気がする!
レナスの中身はよく知っている奴だが小うるさい口を閉じていれば、きれいなエルフのお姉さん。
森に住まう民であるエルフであり、白い髪を持つものは少ないが儚げな雰囲気はまるで絵画のようだ。
だがそんな感動をかみ締めてる間に、
当の美少女は炊き上がった飯盒からごっそりと干し肉を自分の器によそいでいるとは、
このときの俺はまだ知らなかった。




