4話 起承転結を始める為の課題
戦闘篇です。なんか早速時が飛び飛びになってきているので、技量が追いついたら自然になるように改稿したいなぁ。
息を潜める、
前方40mほど先に獲物がいる。
熊のような体を持ち口元には太い牙が生えている。
太い牙は噛まれたならば岩にでも穴を開けるようなとても鋭いものであり、
前足で殴られようものならば骨なんて簡単に砕けてしまうであろう暴力を秘めている。
この「アストンベア」こそが俺たちの標的であり、父からの冒険者になるための課題である獲物だ。
「アストンベアは冒険者ランクで2のモンスターだ。重厚な筋肉で打撃は通りにくく、一撃でももらうと命の危険すらある。
お前ら子供ではとても強いだろうが頭をきちんと使えば大して難しい敵ではない。このモンスターを倒せるようであれば
冒険者としては生きていく才能が認められる。引くことも冒険者としては重要な資質だ。無理はすんなよ」
後ろに控える父は俺とレナスの頭をなでると背中を押し、俺たちを送り出した。
目の前を進むレナスの後ろに張り付き小さな声で耳打ちをする。
「まずは20m手前で弓による一撃を加える。麻痺毒を打ち込むからしばらく様子を見て麻痺が効いているようならレナスが交戦してくれ。
その間に毒矢を打ち込み、こっちは武器を変えて援護する。使える魔法は強化とシールドのみだから、交戦する前に強化かけるからね。」
レナスは大剣を静かに構え茂みに身を隠す。
「わかったわ。今日こそあいつを仕留めて熊鍋にしてやんないとね。」
静かに近寄る。
アストンベアは自分で仕留めたウサギをむさぼっているようだ。
食事に夢中とはいえ あまり音を立てないほうがいいな。
身を低く保ち、足音を立てないように距離を詰める。
木から木へ身を隠しながら矢を打ち込むのに最適な場所を吟味していく。
アストンベアの左斜め後ろの木がいいだろう、
少し土が見えてるから身を伏せてから茂みへ移り矢を打ち込もう。
小さく小さく歩みを重ねてさらに距離を詰める。
レナスも逆サイドから近づいていく。
エルフの大剣持ちである。
普通エルフって魔法が得意なイメージがあるのだが、レナスには魔術の素質はあっても勉強への才能がなかった。
脳筋とまではいわないが、剣を振り回すことに関しては驚くべき才能を見せ、
細身ながら背の高くなった彼女はクレイモアの重量を遠心力で器用に振り回すのだ。
そして俺は片手剣や大型ナイフなどをメインにしている。
魔術も多少は使えるのだが如何せん杖などを持つとパーティーの少なさから無理が出てしまうのだ。
レナスの大振りな攻撃を活かすために小細工を施し、レナスの隙を埋めるというのがいつの間にか出来上がっていた。
弓もそのひとつであり、父から毒や鏃の加工なども教わりそこそこ扱える。
セオリーとして弓の一発目は 待つことが重要である。ある一定の距離に入ったら狙うのではなく
自分にとって望むべき位置に狙いを置く。首筋は血管が多く毒が即座に巡る為、一撃目はここに当てていきたい。
弓を静かに引く、短弓をぎりぎりまで引き絞り息を抑える。
小さく細く息を吐き薄く息を吸う。
アストンベアは食事を終えればその場から立ち去るであろう。
その立ち上がった瞬間こちらへ首を見せるはずだ。
その瞬間を待ち続ける。 ウサギの頭はすでに胃袋におさまり後は足元を残すのみ、
アストンベアが残りを口に入れた。 何度も租借しそのたびにごりごりと骨が砕けるような破砕音が聞こえる。
もう少しだ。
息を止め、神経を集中する。あの牙で噛まれたら俺は簡単に死ぬだろう。
恐怖に身が震え、手が汗ですべる様な錯覚がする。
だが冷静になればそんなことはない。こちらは風下だ。茂みに完全に身をうずめているためこちらには気づけない。
理性で震える心臓を押さえつける。
まだだ。まだ慌てる様な時間じゃない。
獲物が口を拭う。
お食事終了の合図だ。
爆発しそうな心臓を意識しながらもだんだんと気分がさめて来る。
頭のどこからか声が聞こえる
「ステンバーイ・・・ステンバーイ・・・ステンバーイ」
きっと狩人の神様マクミラン様のお告げだ。
俺は冷静だ。 多分。
アストンベアが身を起こす。
パスッ
「グルォォォォォォオオオオオオ」
ビューティホー!
狙い通りアストンベアの首元に矢が刺さり、尻に矢が刺さったアナグマのようにアストンベアが怒り狂う。
刺さったの首だけどな!
それを合図にレナス飛び出す。
20mの距離を一瞬で詰め、咆哮をあげるアストンベアの首を落とさんとクレイモアが一閃、
だがそれに気づいたアストンベアが前足ではじく様に剣を逸らす。
やっぱり一筋縄ではいかないな。
強化の時間は大体60秒、レナスの体は強化による魔力光で薄く光り、はじかれた剣を構えなおした。
レナスがアストンベアの気を引き付けた事を確認し、弓を構まえ直す、今度は狙いやすい胴体へ毒矢を打ち込む。
アストンベアが痛みから咆哮をあげるが目の前のレナスから目を離せば自身の首が飛ぶことを理解しているようで、隙は見せない。
弓を捨てダガーに持ち代えて俺も飛び出す、狙うはアストンベアの脇の下、
強力な前足は潰しておきたい。
強化のかかっているレナスだからこそ耐えられるが強化が切れればレナスも弾き飛ばされてしまうだろう。
アストンベアが体勢を低くしレナスへ突っ込むと同時に右手を振りかぶる。
そのまま体の重さを生かし重厚な筋肉から重い一撃が繰り出される
ガチンッ
レナスはそれを右手で上段から足元に落とすように構えたクレイモアの横腹を左肩で支え盾のように受け止める。
あの筋肉バーカーサー(バーサーカーではない。)は熊の一撃を正面から受け止めるとかどんな体してんだよほんとに。
なんかトラックが衝突したような激しい音してたし 足元が衝撃でえぐれてるよ。
こんな事考えてる場合じゃない。
早く援護しないと。
レナスの剣を突き破ろうと右手を突き出すアストンベアの後方に回り、走る勢いを乗せたまま右のわきの下を切りつける。
硬い肉を押し切る。筋を切り落とした手ごたえを感じ、そのまま軸足で地面を蹴りとばし反転すると同時に、返す刀で足に突き刺す。
「グッガァァァァアアアア!!!!!!」
アストンベアはいきなり現れた襲撃者を殺すために動かなくされた右手をそのままこちらへ振り回す、
「あっぶねぇっ!」
やばい ブオンとか頭の上で鳴ってたよ!あんなん食らったら死ぬわ!
そのまま後ろに距離を取りアストンベアと向かい合う、右手をだらりと下げているようだ。
これなら腕は潰せた。
後は左腕を注意すればいいだけだ。
今度はこちらが体勢を落とし疾走する、 アストンベアが左手を振りかぶるのが視界に移る。
右足で強く地面を蹴り左へ体を流す、振り下ろした左腕を間一髪で回避し今度は左わきの下を切りつける。
筋を引きちぎった感触とともにそのまま左前方へ走り抜ける。
また距離を取り直しアストンベアと向かい合う。
息は少し上がっている。だがレナスの強化のリミットまであまり時間がない。
両腕を潰されてもなお 闘志をさらに燃やし咆哮を上げるアストンベア。
残るは凶悪な牙から繰り出される攻撃のみ、
だが大きな体なので 首にナイフは届かないであろう。
そのままにらみ合う、
相手には毒が回り、このまま時間を稼げば俺たちの勝ち、その顎で俺を殺せればアストンベアの勝ち、
分かりやすいねまったく。
そのままにらみ合っても分が悪いと判断したのかアストンベアがこちらへ走り出す、2.5メーターはあろう体格から繰り出される突進ですら
恐ろしいというのに 重さと速さを乗せた牙はさらに凶悪だ。
だが頭を下ろせばこちらも攻撃できるので打つ手がないわけじゃない、
俺はナイフを正中線に両手で構え足を地面に踏ん張り重い一撃を受け止めるために構える。
アストンベアはそのままこちらへ突っ込んでくる、
だが相手の重さはこちらの強さへも転化させられるのだ。
そのまま相手の額へナイフを突き出す。
ここが気合のいれどころだ。
ガツッ
「ガァァァァァアアア!!!!!!」
ナイフは半分も刺さらずそのまま体を押し出される。
想定外の硬さに冷や汗が吹き出る。
不味い事態かもしれない。
この手を離せば体を食いちぎられるだろう。
そのまま後ろにあった木まで押され後がなくなる。
「ゴァァァァ!」
だんだんとナイフを突き出す腕は押し込まれあと少しで腸は食い破られるだろう。
力を込め踏ん張る。こんなとこでゲームオーバーとかあっけなさ過ぎる。
あと少し、あと少し耐えれば!
アストンベアの口がこちらの腹へ届くかと思われた瞬間
白い光が飛翔する、
白い剣士は近くの木に疾走し、木を蹴り上げ、その反動で宙を舞う。
クレイモアを振り上げそのまま空中からアストンベアの元まで飛び上がる
「そぉい!」
銀光が一閃、
アストンベアの首を打つ。
急にずしりと重さがナイフを持った腕に掛かる。
ナイフを手放す、ゴトリと強者の首は地面へ赤い染みを落としながら転がった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・」
安堵から溜息を吐き腰が抜けてしまった。
死ぬかと思った。
こうして俺たちは森の主を討伐した。
冷や汗はまだ止まらないが とうとう課題をクリアした。
しばらく震えが止まらないまま放心していた
そして30分ほど経ってからようやく立ち上がれるようになったので、
アストンベアを再度強化魔法をかけたレナスに待たせて村へ帰る。
「女の子だからこんな重いのもてないよ!お姉ちゃんを大事にしようって気がないのかしらね?」とか文句をぶちぶち垂れていたが、
普通のお姉ちゃんは、熊の首はねない。クレイモア振り回さない。
まぁ「獲物は最大の功労者が初めに食べれるんだぜ?」とかいったら。
「くっまなっべ くっまなっべ♪」とかスキップしてアストンベア(300kgはあると思う)を引きずり風のように駆け抜けていった。
筋肉馬鹿はちょろいね!まったく!
そして村に帰り村長に熊を討伐した旨を伝え、宴を開こうと話し熊鍋の準備をしていると、父が森からとぼとぼと帰ってきた。
あ・・・・・
やべぇ すっかり忘れてた。
「パパ泣いちゃう。」鼻水たらして目を赤く晴らした元高ランク冒険者がいた。
すっかり拗ねた父を慰めなくてはならないのだが、正直熊討伐より気が進まない。
あぁ 今日は二人そろって抱き枕決定だな・・・・・。
親父のヒゲいたいんだよな・・・・・。
でもこれで冒険者になることができる。
ああ 待ってろよ 男のロマン!




