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【すぐできるように準備しとこっかあと言われ僕は靴下を履いたあの日】
昼間にふれたサボテンのちいさなトゲが、抜けていないみたいにかすかな痛みとして胸にある。気にしなければ、たぶん大丈夫なくらい。でも、ちょっとでも気にしてしまえば、みるみる積もっていって我慢ができなくなっていく。痛いのだか、かゆいのだか、わからないようなその感覚に振りまわされるのが嫌で、僕は自分のカラダごと放り出したくなってしまう。
―どれ、見せてみろ
お狐さまがのぞき込んでくる。いくらお狐さまでもこればっかりは。僕は背中を向けてしまう。
「ごめんね」
―何がかな?
「だって… 契り…」
―気にするな。また来年がある
満月はいつの間にか、すぎてしまっていた。
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引っ越し先をさがすのは、思っていたより楽しかった。一般的な意味での楽しいではない。あっちの物件を見て、今度はこっちの物件と、忙しく動きまわることで、一時的にでもトゲから目を背けることができるから。そういった点において。
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いくつ目の物件だったか覚えていない。その物件はすんなりと真っすぐ伸ばすだけの土地が確保できなかったようで階段がやけに曲がりくねっていた。意図的になのかどうなのか、複雑に曲げられた階段をその通りに沿って登っていき、やけに青い夏の空と、白いもくもくとした雲を見たのを最後に、僕の意識は… 途絶えて… しまった―




