再集合
「再度集まってくれてありがとうございます、みんな。それで、我々の世界の救済案は考えてもらえたでしょうか?」
五人が中央区に集まり、円卓のそれぞれの席に着いたのを確認して、アインスが口火を切る。
――残りの二人はやはり欠席のようだ。この件には関わる気がないらしい。
「ハイハイハイハイ! アタシのトコだけど、勇者候補を一人立てたの。聞いて聞いて!」
真っ先に手を挙げたのはエマだった。自分で候補立てたならもうソイツでいいだろ、とも思うが、それだとチャルルンの案が潰れるからな。突っ込まないでおこう。
どんな人間にするか聞いてもらって、それについて意見が欲しいのかもしれない。一応黙って聞いておくか。
エマが指をクルクル回す。ヴン、と円卓の中央に映像が浮かび上がる。
へぇ、銀髪のイケメンだな。二十代前半くらいで、筋肉質。顔に大きな傷が入っていて、いかにも武闘派って感じだ。
「名前はクライン・ダーツ。小さな傭兵団の団長さんだね。剣の腕はトップクラスで回復魔法も使える万能型! 若いから長期になっても戦い続けられるし、これは決まりでしょー!」
ああ、覚えがあるな。僕が絞った三百名以上の候補の中の一人にいたはずだ。
たしかに剣の腕はかなりのものだったが、回復魔法の方は大したことなかった記憶がある。魔力量もそこそこだった気がするし、万能型と言うには剣に寄りすぎだと思うが。
それに――
「エマ、最終候補には残りませんでしたが、その人間個体に関しては私も考慮には入れていました。だから聞きますが、小さな傭兵団の団長という立場では人類社会への影響力が低いと思われます。その点についてはどう考えますか?」
アインスが質問する。
そこだな。僕があの段階でダム・ビクセンクルを第一候補としてたのは、大国の騎士団長という立場があったからだ。それだけの立場があれば国からの支援も受けられるし、動かせる兵の数も多い。
さらにダムは剣も魔法もハイレベルで使える真の万能型。正直、クラインは多少若いだけでダムの下位互換という印象が拭えない。
「フフン、影響力が低いから自由に動けるんだよ。あんまり立場の高い個体だと、会議して兵を集めて兵糧も準備してって感じで、動き始めるのが何ヶ月も後とかあるだろうしね。クラインの傭兵団は人数が少ない分フットワークが軽いし、ワンマンだから決断が早いし、各地を渡り歩くタイプだから旅慣れしてる。すぐに戦わせるならいい個体だよ!」
なるほど大国の騎士団長という立場だと、たしかに力を与えてもすぐには動けない可能性がある。というか偉い奴はどれだけ強くても、最前線にはあまり出られないかもしれないしな。
旅慣れているというのも大きいな。おそらく傭兵として、戦争を求めて各地を回っている人物なのだろう。そう考えると彼の立場は絶妙な人選かもしれない。
「なにより美形で映えるしね!」
コイツも顔か。
「なるほど……納得しました。徒歩や馬がメインの移動手段の世界では、大軍はどうしても鈍足になってしまうことを見落としていましたね」
アインスは感心したように顎に手を当て、何度も頷く。
そして、両手を肩の位置まで挙げて、降参の意を示した。
「それでは私は、エマの世界での候補を立てずにおきます」
アインスは真面目だからな。自分がピンチでも、ちゃんとエマの方の候補も考えていたらしい。そして僕と同じような候補を立てていたんだろう。
僕も見落としていたな。移動だけでかなりの時間がかかる場合、大軍はどうしても動きが鈍くなる。兵站もその分大量になる。立場がある者では戦場に立つまでに時間がかかってしまう。――これは、真面目に考えていたとしても、採用されるような候補を立てられなかっただろう。
……まあ、その辺りの問題をまったく考慮する必要の無い候補を立てた奴を、僕はもう一人知っているんだが。
「美形で、小さな傭兵団の団長ね。悪くないわね。いい人選してるじゃないエマ」
チャルルンが感心した声で褒める。実際いい人選だ。顔採用もありそうだが、かなり熟考して決めたのだろうし、ちゃんと褒めてるのだろう。
けれどその声音に含みがあることを、僕は知っている。
「じゃあわたしの番ね。ハイこちら」
チャルルンが指を鳴らすと、円卓の中央に僕……によく似た、ライ君の顔が映し出された。




