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暇だから宇宙を作ってみた。とりあえず七つ。  作者: KAME


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異常事態

 始めは、なにもなかった。なにもないということを認識するのに、悠久とも言える時間がかかった。

 けれど自分の周囲になにもなかっただけで、意識を伸ばしてみれば、自分と同じような存在がいることが知覚できた。けっこういたが多くは脆弱で、ほとんどは自己崩壊した。泡のように……当時は泡なんて概念もなかったが、発生してすぐに消えるものも多かった。


 誰も自分が存在する意味というモノを知らなかった。なぜ存在するのか誰も知らなかった。おそらくそんなものはなかった。

 ふと思いついて、宇宙を作った。別次元を区分けし、後にビッグバンと呼ばれる現象を気まぐれに起こしてみた。空間が広がっていく様はなかなかに見応えがあって、星々が生まれ、死に、ぶつかる様を見るのが面白くて、ブラックホールの発生など最高にスリリングで、そのランダム性ある変化を眺めるだけで刺激的だった。

 そのときいた他の六人にも同じように作って配ったほどだ。


 宇宙という物理現象の観察、解析、予測に、退屈を持て余していた僕らは沸き立った。新しい発見を共有し、互いの世界を比べあうために交流が増えた。

 結果として、僕を含めたそのときの七人は誰も崩壊することなく今も続いている。


 そしてアインスの宇宙に生命が発生し、僕たちはますます世界観察にのめり込むようになる。






「いやぁ、実は私の世界で暴走したAIが反旗を翻しましてね。人類の総数が五分の一まで減ってしまいました」

「なにやってんのお前?」


 思わず隣の席の老紳士を見る。

 五分の一ってけっこう壊滅状態じゃないか。インフラ維持もできないだろそれ。……ああいや、アインスの世界のインフラはすでに完全自動化してるんだっけ。


「アインスのとこは早送りしたんだっけ? ゲインのとこよりかなり科学技術が進んでる世界だよね。なに? やっぱり科学って発展しすぎるとヤバいやつなの?」


 自分の席に着いた白い羽もつエマが、テーブルに頬杖をつきながら首をかしげる。

 他惑星の開拓、移住まで果たした世界だな。かなり順調だったと思うのだが。


「科学技術はヤバいものではありますよ。ゲインの世界の人類だって、星の表面を焼き尽くすくらいのことはできるでしょう?」

「技術的には可能だな。技術的には。だが、世界中の国々のトップが結託して地球滅亡を決定すればできる、という注釈がつく。お前の世界みたいに本当に滅ぼしたりしないぞ」


 本当に一緒にしないでほしい。

 でもアインスの世界はただ早送りしただけだから、僕の世界も同じような道を辿るのかもしれないんだよな……。

 これも歪んだ結果だったりしないかな。


「アインスの世界はエマのとこ以上にゴチャゴチャしてて好かなかったけれど、その結果はさすがの我もちょっと引くニャァ……」

「うちは科学あんまり発達しないようにしよ……」


 角の生えた茶虎猫のベルディラットが呆れ声を出し、白い羽もつエマが恐怖に震える。


「んー、AIねぇ。そいつら、快楽を理解してる? 人を殺すのが楽しいからやったとかなら、わたし的にはアリなのだけど」

「暴走したと言っても、あくまで人間を管理飼育するためです。私の世界の人間は他惑星への進出を果たしていたのですが、近隣惑星から採取できる資源の総量を算出した結果、順調に人口増加していくと千七百六十年後に資源枯渇するという結論に達したそうでして」

「資源枯渇によって滅亡するのを先延ばしするために、人の数を管理しだしたわけなのね? なら、わたし的にはナシね、それ」


 だろうな。AIが快楽を解するなら、チャルルンも興味が湧いたかもしれないが……むしろ新しい娯楽に繋がるかもしれないと歓迎したかもしれないが。


「けど、五分の一の人間は生き残ってるニャ? AIの目的が人類の存続なら、絶滅しないニャ」


 さすが人間を滅ぼしたベルディラットの視点だ。五分の一も残ってるなら問題ないと。


「残念ながら暴走していますからね。AIはいずれ枯渇する資源の浪費を避けるため再計算を繰り返し、再生可能資源によるエネルギーのみで人類が維持できるようにと、さらに数を絞ることにしたようです。また生命活動による資源消費も削減の対象になっており、コールドスリープでの人類存続が最終目標となっています」

「実質滅亡だな。人間側の反応は?」

「もちろん戦争ですね。ですが今までがAIに頼りすぎていたため、勝利確率は極めて低いでしょう」


 じゃあほぼゼロだろそれ。コンマの後にどれだけゼロが続くんだ。

 だいぶん終わってるな。暴走したAIの計画通りにいけば、最終的に活動する人間はいなくなるのだろう。ディストピアってやつより酷い。


「暴走したAIとやらに干渉して、正常に戻すことはできないのか?」

「それが、情報にはアクセスできるのですが干渉を受け付けない状態でして」

「あ、アタシのトコと一緒だ!」


 エマがバサバサと背中の羽を動かす。


「アタシのトコもアタシの干渉を受け付けない魔王が現れて人類のピンチなんだよ。数もかなり減らされちゃって、自然環境とかも破壊されちゃってさー」

「ええ、エマのところの問題は私も把握しています。私は七つの宇宙の全てを定期的にモニタリングしてますからね」


 真面目なアインスらしいな。どうやら彼は、エマの世界の異常事態を知っていたらしい。


「ですので、今回の集会を提案しました。二つの宇宙で同じような問題が起きているとなると、偶然とは思えませんからね」

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