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オリヴィエはそれはもう丁寧にディアに挨拶を済ませると、デイジーに会釈をし学長に何かを伝えた後、他の候補者たちが待つ隣室へと移動した。
(学長も神妙な顔で頷いていたけれど何かあったかしら)
デイジーには竜体で戻る旨の話がきちんと届いていたので、配慮を知らぬのはディアばかりなのであった。
「失礼しまっす!」
大声と共に入室してきたのはパライバ男爵家のテオドールだった。
ドスドスと音を立てて歩いてくると、これまた足を鳴らして揃えて背筋を伸ばす。
「先ほどは大変失礼を致しました!」
全員が微動だにしない中、ばさりと音がしそうな程勢いよく座ったままのディアに頭を下げた。
その瞬間、ディアの手に持った魔道具がピカリと光る。
ディアは口元が引き攣りそうになるのを堪え、逆に涼しい顔をして着席を促した。
「…チッ」
「…」
「んっん!」
「 」
小さくテオドールから音が漏れた後のディア、学長、デイジーの反応である。
ディアの沈黙と学長の咳払いまでは分かる…が、恐らくデイジーは何かを呟いたはずである。
ディアには聞き取れなかったが、目の前のテオドールに肩を跳ねさせるくらいの威力はあったのだろう。
チラリとデイジーを見やればにっこりと微笑まれた。
これは後で聞いても答えてもらえないやつであろうと諦め、手の中の物の存在を確かめるようにぎゅっと握りしめる。
これはテオドール対策として先程学長から渡された魔道具で、持っているだけで体に溜まった電気を放出してくれるものだという。
それにもう一つの対策として、ディアの横では良い香りのする蒸気がもくもくと立ち昇っている。
加湿器という名前の道具で、埃っぽいこの学び舎では必須らしいが、これを静電気が発生しにくいようにと使わせてもらっていた。
(能力への対抗策は何も力だけではないわよね)
ディアは竜族も力押しするばかりではなく道具などで解決を試みるものなのだと、当たり前のことを今更ながらに感じていた。
あんな演習を見た後だからこそ、力業が唯一だと感じてしまっても仕方ないのかもしれないが。
(これこそが先入観…絡め捕られる第一歩よね。気を付けましょう)
襟を正し、目の前で尻尾をゆらゆらさせながら座るテオドールに話しかけてみることにした。
「演習場で驚いてしまったのだけれど…私の髪が浮き上がりだしたのは貴方の能力?」
「…そうですね」
「身体が帯電しているとああなるのよね。私もよく冬になると悩まされたわ。その力は調整してこれくらいに止めてくれているのかしら」
「はぁ、まあそんなところです」
一応会話のラリーは続いているものの、気のない返事ばかりで広がることが無い。
そのくせテオドールの視線はディアの手に向いているし、手に持った魔道具は絶え間なく明滅を繰り返している。
「これが気になる?学長先生が貸してくださったの。そこの加湿器も」
ディアが手を開いて魔道具を見せるとテオドールがぎょっとした顔で身を乗り出した。
ディアは気にしていなかったが学長とデイジーも、大きさの差はあれど一様に驚いていた。
(うん、いい反応)
恐らくここへきて初めて素の反応が見られたので、折角の対抗策も無防備に晒してみて良かったとディアは感じていた。
「…んだよ、それー」
テオドールはそう呟くとふにゃふにゃと台に崩れ落ちて猫のように丸くなってしまった。
その様子にディアが目を丸くしていると、つい、と赤茶の瞳を向けられる。
「学長先生が贔屓してるのは判ってたけどさ、ここまでやる~?僕もうバカバカしくなってきちゃったんだけど」
テオドールは遂に、かろうじて繕っていた言葉遣いにさえ気を遣わないことにしたらしい。
ついでに一人称も元に戻してぶーぶーと文句を垂らしていた。
その変わりように目を丸くしたままのディアは、目の前に置かれた紅茶を一口飲んで気を落ち着けた。
「最初にも伝えたと思うんだけど、私は貴方達のことを知りたいの。率直に聞くけど、貴方竜王になる気はある?」
「ない!」
先程の会話とは打って変わって速攻で直球の返事が返ってきた。
(予想していた事とはいえ、ここまではっきり断られてしまう竜王陛下の認識とは一体
…?)
ディアが内心盛大に首を傾げているとテオドールがさらに言い募る。
「だって竜王陛下の仕事って細々したもの多いでしょ。そんな雑よ…細々したこと三百年もやってけないよ、僕」
王の執務を雑用と言いかけられ絶句するディアと頭を押さえて振っている学長。
その中ディアは絶句しながらも必死に考えている。
(待って頂戴な。この国の貴族の為政者に対する認識って雑用係なの?確かに故国のように為政者が王族ではないけれども、自国を豊かにしようと働いている者がしている事は雑用?…もしかしたらわたくしの認識がずれているの?けれどもカナリアから習った執務の概要はおおよそどの国の執務ともずれてはいなかったと記憶しているわ)
これは王の執務や権限についてもっと詳しく教えを請わなければと胸に留める。
そしてそれと同時に彼らにも伝えなければならないだろう。
部外者であった自分が、どのように伝えたら良いのか、考え続けていた。




