スタンピード
それほど間を置かずに林の中に転移する。
樹々の間から辺りを見回すと、今転移してきた場所が少し低いことが分かる。
予定通り盆地状の中央に移動したらしい。
「ヴァレンティーナさん、もう一度地図を確認させてください」
「ああ、見てくれ」
全員で地図を覗き込む。
正面の急な坂を登りきった辺りからは割と平坦になっており、そこを少し進むと林を抜ける。
若干の岩場を含む草原に部分部分に樹木が群生している感じだろうか。
当然、モンスターにも過ごしやすい場所であり、いろんなモンスター、おそらくは強いモンスターが棲息していると期待している。
「よし、じゃあ登るか。全員舞空術は使えるわけだな」
「ええ、問題ないでしょう」
俺達はヴァレンティーナを先頭に坂を昇った。俺が殿を務める。
昇りきったところで見渡すと、正面は広い草原が広がっていた。
しかし、剣呑な気配がする。
「ヴァレンティーナさん。これは、いったい・・・」
全員が息を呑んでいた。
「可能な奴は索敵魔法でも肉体強化で視力を高めるでもなんでもいい。兎に角、まず、全力で情報収集だ」
言われるまでも無い。
その気配だけで全員が平常時ではないことを感じ取っていた。
何かが居る。とても多くの何かが。
俺は視力を強化しながら、索敵の魔法も使った。
オークだ。オークの群れだ。
「さて、どうだ。私は索敵はできるがたいして得意じゃない。オークがいっぱい居ることだけはわかったが、誰かもっと詳しい情報をくれ」
「1キロ先辺りからですね。大群と言っていいと思うわ。千匹じゃあきかないかしら」
イザベラの後を俺が続ける。
「横幅だけで百は居る。最低でも一万だ」
「一万ですか・・・」
ノラは蒼ざめていた。他のみんなも同じように深刻な顔をしているか。
いや、シロウとジョナサンの表情は読めないし、ウーコンとバレンティーナは口角が上がっているように見える。ひょっとして喜んでいるのか。
「もう少し、いえ、その十倍くらい居そうですね」
シロウがペンダントを右手に透かすように見ていた。
「じゅ、じゅうまん・・・ですか」
「ノラ、足が震えているぞ」
なにか喋らないと、この緊張が取れそうにないな。
「む、武者震いですです」
「結構だな。さて、どうする」
ヴァレンティーナは落ち着いている。
「スタンピードという奴だな。私はスタンピードの経験もあることはあるが、リーダーではなかったので、闇雲に斬りまくっただけだ。こういう時の判断は決して得意ではないんだな。リード、キントウンのリーダーとして何か発言があるか」
「そうですね。まず、今の情報ですと、オーク十万の群れということですね。オークもゴブリン程ではありませんが、繁殖率の高いモンスターです。それが、ここまで巨大な群れになったとすると、上位種の存在も想像できます」
「ハイオークやオークメイジだけでなく、オークジェネラルやオークキングの存在も考えられるな」
「そうですね。前面に出ている奴らは、装備もなく、棍棒を手にしている程度ですが、上位種が居ればそれなりの装備をしている可能性もあるでしょう。
そして、この群れがどこを、何を目指しているかと言うことですが、オークは貪欲なので、この辺りのモンスターは喰いつくされているでしょう。すると次は餌場を求めて移動することが考えられます。つまり、通常のスタンピードの如く、人間世界を襲うことが危惧されます」
俺はそこで一呼吸置いた。
「もし、奴らが人里を目指すとしても、移動にはそれなりの時間がかかります。その時間にギルドに連絡を取る必要があることが一つ」
「そうだな。私も含めて、テレフォンがあるから、この後で連絡を取ろう」
「はい、それでギルドにはドラゴン退治の時のように準備、体制を整えてもらう、場合によってはこっちの方へ攻め込んでもらう必要があるかもしれません。そこで私達の役割は奴らの足止め、時間稼ぎですね」
「なるほど、七人で十万を足止めか。面白い。ただ、時間稼ぎとは言っても、そのまま殲滅してもいいわけだよな」
笑っている。この人は本当に笑っている。十万のオークと戦うのが楽しくてしょうがないんだ。
横を見るとウーコンも似たような表情をしていた。
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