第六回 歩道
よれよれと歩道を辿っている。この町は、どこからどこまでがどういう町名なのかということまで、そんな細かいことはわからないが、ぼんやりと意味内容ということでは、頭の中に入っている。いや、足が覚えていると言い換えても良いだろう。隅から隅まで歩き尽くしている自信がある。小さい時からこの町に住んでいるので、誰よりも詳しいことは確かである。
なんならいつかこの町を舞台にしたRPGを作っても良いだろう。誰がやるかは知らないが、好きな人は好きかも知れない。今、ご当地RPGというのがプチ流行しているのだ。もちろん、一部のマニアックな人々の間で、であるが。私はそういうマニアックな人々の中に溶け込むのが好きであった。カッコいい人たちと一緒にいると、何だか変な気持ちになる。高級車に囲まれた軽自動車のような感覚である。
車道では車がビュンビュン行き交っており、流石は朝である。今日は休みで良かったが、出かけるというイベントを入れてしまった。本当は部屋でゴロゴロしていたいが、デートなのでしょうがない。どうやら私は女にとって魅力的らしくて、フェロモンを振り撒いているらしいのだ。だから、青海沙耶香という女の子と付き合うことができたのである。数日前の放課後に、肩をプルプル顫動させながら、付き合ってくださいと言われた時は、まさに青天の霹靂であり、南極の北極熊であった。
私は恋愛というものについてどうもしっくりこないのであって、何をすればいいのかわからない。とりあえずセックスすればいいのか。となると、公衆便所や、草藪でしないといけない。しかも、根本をちゃんと見ないと間違えて肛門に入れてしまうかも知れない。そんなことになったら絶交門であるから、慎重にしないといけないし、他にも色々エスコートなどをしないといけないのである。そうしないと、「紳士じゃないのね」と文句を言われるであろうし、そもそも紳士であったことなど一度もないので、戸惑うばかりであるが、何とか収まるところに収まるだろうという、楽観があって、だからこそ人類が存続しているのだから、続けることを続けるだけさ。ということになるだろう。ある種、バトンタッチみたいなところがある。それにしても何て大胆不敵な女性だろうか。よく、デートだなんて言えたものである。歩道を曲がると、四車線の広いところに出たのだった。このせせこましい町で一番開けたところなのであった。




