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実存的転生  作者: ウィリアム輝夫
公園まで
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第三回 キッチン


 階段を降りてキッチンにゆく前にトイレに入って小用をしてキュッと雫を絞ってドアを開け洗面台で顔を洗って鏡を見ると高校二年生っぽい男の顔になっていた。少し分けた感じでツーブロックの髪型、奥二重の眼差し、少し外人的な鼻の高さ、全体的な顔の面長な大きさ、歯は真っ白であったが、顎に少しできものがあった。まあ、相対的には中の下と値踏みされてしまうようなルックスであろう。だが、そんな男でも幸せを掴むことはできるのである。いや、それは市民の当然の権利かも知れない。それは今日の用事と関わってくることであるが、まだ、その話はしないことにして、私は、薄暗い廊下を抜けてキッチンにゆくとテーブルの上は伽藍堂であった。そんなもんだろうなあと、呟いてから、冷蔵庫の上にある籠を手に取ると、中にカップスターがあった。電子ポッドのお湯を注いで、私は椅子に座ってテレビをつける。


 海外にも名が知れている有名な女流作家Yが小説論を話していた。そして、作家は食えないやめておけ。と話していた。私は、偶然、彼女の父である有名評論家Yの晩年のエッセイ本が父の部屋の本棚に置いてあって読んだことがあるが、そこでも、作家はもはやアルバイト業になってしまった。一生の生業とするには無理だろうということを話していたので、そんなものだろうなあとは思った。私は工業高校で科学部に入っていた。小説は一生書かないし、多分、読むこともしないだろう。どうしてあんな文字の羅列を読まなくてはいけないのか。拷問に思えるからだ。しかし、文芸書は好物である。小説という拷問具の被害者を眺めるのがとても楽しいという意味で。だが、考えようによっては読まされる側よりも、書かされる側の方が拷問ではなかろうか。あんなくだらないものを書かされて知識人ぶらないといけないのである。ある種、ゲームクリエイターとも共通してくるが。


 何となく、電子レンジの蓋を開けると、そこには皿があって、サランラップに包まれて朝食があった。それは、目玉焼きと、ライスとソーセージである。赤いハートが、ケチャップで描かれていた。もちろん、義母の私への特別なメッセージということになるだろう。心臓がドキドキして、急に心が飽和状態になってしまった私は、


「もう、いい。カップスターでいいよ」


 と、些か無機質な遅い朝食をかき込んだのであった。しかも、それは、重すぎず軽すぎず、その日の体調と、朝食としてとてもマッチしているのであった。

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