第二回 ベッドの上
私はベッドの上にいる。ということは寝ていたということになる。掛け布団は引っ剥がされている。パジャマを着ているから、風邪はひいていない。手のひらを見つめると、いつもの手相になっており、M字型という成功者に多いタイプのものだった。織田信長や、モーツァルト、あと、東日本大震災を当てた予言者の人とも同じタイプである。
辺りに微かに香水の匂いが漂っている。ひょっとして義母が部屋の中を探索していたかも知れない。私の父が義母と結婚したのは三日前であり、家に住み始めたのは二日前であった。バストは120センチあった。まるでメロンのようになっている。天然ものなのか、人工ものなのかはわからない。タプタプと服の下で揺蕩っている。唇は下品だし、髪の毛はソバージュだ。朝食を作ってくれるというのだろうか。昨日の朝食は作ってくれなかったので、カップラーメンを食べた。別に何でもいい。もともと死んだ母も料理は苦手であった。だから、勝手に作っていた。
義母と父とはキャバクラで知り合ったのだそうだ。この色々小うるさい時代に、よくぞ、そんな感じで結婚できたものであるが、父は物に拘らないことでその界隈では有名であった。どの界隈かというと、父の会社の関係の界隈であろう。私は頭を振って、胡座をかいて天井を見上げる。
マイケル・ジェイ・フォックスの顔が大きく映っている。バック・トゥー・ザ・フューチャーのものであろう。父は大好きだったが、私はこれを近所のゴミ捨て場で拾ったのである。筒状に丸く包まれていたので、何だかわからなかったが、つい衝動的にカバンに入れた。結果、父は喜んだが、私は微妙だった。あの映画は、確か過去を書き換える筋のものであったが、私の家族の過去もそうするべきものがあるのかもしれない。
もちろん、それはあのソバージュの毛とも関係してくるが、本来存在してはいけない出来事のような浮ついた感じはしている。だが、お腹が空いたので、そんなどうでも良い妄想に付き合っているよりは、今この現実に向き合った方が良いだろう。しかも、今日はとても大切な、そして面倒臭い用事があるのだった。ベッドの上からジャンプして、カーペットに着地してわかったのであるが、身体が縮こまってしまっているようだ。首をトントンと叩いて背骨を少し伸ばす。爽やかな空気が頭の中に入ってくる。とっとと、階段を降りてキッチンにゆこう。




