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目が覚めたら今川家の軍師になっていた私。しかし当主は今川氏真。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』


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書類の

 目を覚ますと私は机の上に突っ伏していた。

「入院に必要な書類を揃えていたんだ……。」

と思い直し紙を触ってみた所

(これは和紙?)

電子化が進んだ現在においても紙の書類は必要なもの。特に役所に絡むものは猶の事なのではありますが、流石に今和紙で提出しなければならないものは存在しない。辛うじて

(藁半紙ならば……。)

「でもあれ……。」

(汗掻いてると終わりなんだよな……。)

「それはさておき必要事項を。」

と筆記用具を探した所

(……筆?)

その横には

(硯?)

更には

(自分で磨るの?)

墨汁も無い。

「いやいや今の時代。筆で書かれた物でないといけないのは……。」

(将棋の免状。それも段位の方向け位。)

筆で書かれている風の印刷物はありますが。

「しかし数が多いな……。」

と途方に暮れていた所

「目が覚めたか?」

の声が。

(私は独り暮らし。故にこの苦しみの中、書類集めをしなければならない。にも関わらずここに居ると言う事は?)

不審者に違いない。しかし驚かしてはいけない。私は静かに落ち着いた口調で……。

「どちら様ですか?」

と尋ねた所。

「いやですね。私の事をお忘れか?まぁここ1ヶ月の激務を考えれば仕方無いか……。」

(激務?)

「と言われますと?」

「つい先日まで尾張に戦いに行って、ほぼ勝利を手中に収めた所で御館様があのような事になり急ぎ撤退。無事撤退する事は出来たのは良かったが、待っていたのは(私の方を指差しながら)書類地獄。これをしない事には国衆に指示する事は出来ないからな。」

(尾張?)

それに

(御館様?)

そして

(国衆?)

「私は確か入院の……。」

「入院って何だ?……ああそうかお前。出家でも考えていたのか?まぁ気持ちはわかる。殿がああなってしまわれたわけだからな。だがお前はまだ20代。殿もまだ若い。支えてやってくれ。」

(私は今20代?)

それに

(殿っていったい?)

「すみません。」

「どうした?」

「少し疲れが溜まっており、記憶が飛んでしまっていまして……。」

「惚けているのでは無いのか?」

「いえ。幾つかお尋ねします。」

「答えてやろう。」

「御館様と言うのは?」

「そこからか?今川義元様だ。」

「殿と言うのは?」

「今川氏真様。」

「私の名は?」

「そこもか?まぁ良い。付きやってやろう。お前の名は朝比奈泰朝。忘れるな。」

「すみません。貴方様の御名前は?」

「俺か。俺の名は三浦氏員。お前と同じくここで家老を務めている。」

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