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目が覚めたら今川家の軍師になっていた私。しかし当主は今川氏真。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』


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多忙なのは

 状況を整理すると、私は21世紀の現代では無い朝比奈泰朝なる人物になってしまった事。立場は家老。今川義元が当主であったが、不慮の事態により今川氏真に代替わりしている最中。これに伴い書類の作成に追われていると言う事。今川義元や尾張と言うキーワードから推測するに……。

「今川義元様が亡くなられたのは織田信長に?」

「桶狭間であのような事態になってしまわれた。て言うかその時お前も近くに居たであろう?」

 朝比奈泰朝は今川義元の織田信長攻めに同行。大高城救援のため鷲津砦の攻略に貢献。

「信長は救援に動く事が出来ず鷲津の砦を見殺し。奴の外聞を失わせる事が出来たのに御館様も満足し、悠々と帰陣していた最中であったのだが、そこを……。」

織田信長が急襲。

「御館様は敢え無い最期を遂げられ、周りに居た多くの同士を失ってしまった。故に今、発給文書の再発行並びに国衆の代替わりの承認に追われている。俺もお前も忙しいがまだ良い方にある。最も大変なのは……。」

今川氏真。

「御館様より家督を相続されたとは言え、まだ2年経っていない。加えて実権は引き続き御館様が担っていたため寺社仏閣や国衆への発給文書は御館様時代のまま。更に悪い事にこれらの業務を任せる事が出来る人材の多くを先のいくさで失ってしまった。すぐにでも弔いの兵を挙げたい状況にあるのだが、そのためには……。」

新たに当主となった今川氏真による承認が必要となる。

「『今川氏真は誰それの利権を認めます。その代わり今川氏真の要請に応じ、定められた軍役を務めます。』

これが無いと先のいくさのような。織田を圧倒出来る兵を編成する事は出来ない。」

 ここで1つ疑問が。

「気になる事があったら何なりと。」

「今川は国衆の集合体?」

「まぁ間違ってはいない。」

「となりますと殿が独自で動かす事が出来る兵は存在しない?」

「いやそのような事は無い。自前の兵を持たれている。加えて先年の代替わりの際、殿は御館様より駿河を託されている。その際に発給文書も改訂しているため、駿河の国衆を動かす事は可能となっている。故に……。」

駿河を本拠地にしている私は比較的のんびり過ごす事が出来ている。

「尤もお前に比べれば。の話ではあるがな。忙しいは忙しい。故にお前も私もここ……。」

今川館を離れる事が出来なくなっているのだから。

「いま動かせる兵だけ使ってでも……。」

「……そうではあるのだが。殿には殿の事情があってな……。」

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