第7話 赤色の石
「そ、そんなことないだろ。きっと最近できたとか─」
ユメの言う通り、国は何か隠している。
いつもなら冷静に対処できたかもしれない。
だけど今は、どうしてもそのことを認めたくないのだ。
「最近できたとしても、誰か気づくと思うんですけどね…」
心臓の音がうるさい。
「と、とりあえずここを離れよう」
「はい」
俺達が赤色の石に背を向けようとしたとたん、赤色の石にヒビが入った。
頭の中で警戒音が鳴り響いている。
本能がここを離れないといけないと俺に訴える。
──でも、俺は動かなかった。いや、動けなかったのだ。
圧倒的存在にいすくめられてしまう。
ユメも同じように動かなかった。
次第にヒビが広がる。
そして──
「グアァアァアアアア!」
化け物が、再び姿を現した。
溶岩でできた巨大な体。
赤く光る目。
マグマを吐く口。
すべてが、あの時と一緒で、目を離せない。
「グルアァアアアア!」
やめてくれ。もうあの時みたいに大切な物を失いたくない──
「※※様!昔のことにとらわれてはいけません!」
ユメは叫んだ。
「※※様は、もう失いたくないないから、もう失わないように、魔法を練習したのではないのですか!どんな脅威にも立ち向かえるように、全ての属性を習得したのではないのですか!」
ユメの言葉は続く。
「今こそ、過去を克服する時なのではないのですか!」
「…っ」
「発揮してください!何年も積み重ねてきた努力を!」
…すごいな、ユメは。ユメだってあの恐怖を味わったはずなのに、あの絶望を味わったはずなのに。
今、ちゃんと未来を見据えている。
過去を克服しようとしている!
「あぁ、そうだったな!俺の努力の結晶、見せてやるよ!」
「はいっ!」
「~~~、~、~~~、~…」
俺は詠唱を始める。俺が出せる、最大の魔法の力を発揮するために。
ゴーレムの腕が目前に迫っていようが、関係ない。
「青!世界の果て!!」
『世界の果て』。それは、全ての属性にあり、威力は上から2番目だ。
そして、俺が出せる最大力の水魔法である。
大津波を起こし、竜巻となり、凍りつかせ、全てを呑み込み、世界の果てとなる。
「グアアアアアアァッ!」
溶岩でできたそのゴーレムは、瞬く間に力を失い、そして消えていった。
──青い蝶の形の髪飾りを残して。




