第15話 ユメ(メリア視点)
私は言葉を失っていた。
あまりにも美しすぎる光景があったからだ。
ある部屋に入ると、その部屋の窓は開いていた。
夜風は頬をくすぐりながらも、どこか肌寒さを感じさせる。
そんな窓に、月を見上げる形で佇んでいたのは、美しい女性だった。
誰かもわからない。どんな人かもわからない。
でも、月の光を浴びてキラキラと光っている、夜風になびく銀色の髪が。瞳から流れ落ちる、キラリと光るものが。ただ美しかった。
そしてその人は、レアキくんの部屋と思われる部屋にいた。
きっと、 レアキくんの友達なのであろう。
そして、 レアキくんの想い人でもあるのだろう。
「…だから、 かぁ」
私はどこか腑に落ちた。
私なんて比べものにならないほど美しい人がそばにいるのだ。
私に目が向くはずがない。
いつも私は褒められて、 好意の視線にさらされてきた。
私に夢中にならない人などいなかった。
みんな私を 『天使のようだ』 といった。
だから、きっと有頂天になってたんだろうなぁ…。
私より美しい人を知らずに生きてきたから。
「でも…」
どうしても、私に夢中にならないことが、許せなかった。
絶対夢中にしてやる。
私はそう意気込んだ。
美しい人は私がいることに気づいていたのだろうが、見向きもしなかった。
わかってる。
私が比にならないことくらい、わかってる。
でも、私より美しい人を見ることが、 私に夢中にならない人を見ることが、初めての体験で。
私はどうしても、 その美しい人と仲良くなりたかった。
あわよくば、美しくなる方法を知りたかった。
だから。
「ね、ねぇ。 あなた、誰?」
美しい人はこちらを向いた。
キラリと光るそのしずくが、 夜風になびくその髪が、やはり美しい。
そして、吸いこまれそうなほど美しい紫色の瞳が、 私を捉えた。
悪意とか、憎悪とか。 そんな気持ちを知らなさそうなその美女は、私の思いも虚しく、静かに闇に溶けていった。




