第38話 ブリジット・ジョーンズの日記
※本編では映画の結末を含むネタバレがあります。
映画紹介
公開年:2001年
監督:シャロン・マグワイア
主演:レネー・ゼルウィガー、コリン・ファース、ヒュー・グラント
ロンドンで一人暮らしをする出版社勤務のブリジットは、新年を迎え、酒と煙草を減らし、体重を落として、素敵な恋人を見つけると決意する。失敗と本音を記録しながら、魅力的な上司ダニエルと、無愛想な弁護士マークの間で揺れる一年を描いた恋愛コメディ。
皿の中央には、表面を焼いたマグロを置いた。
チェリートマトのソースを敷き、ニンニクのコンフィとフォンダンポテトを添えてある。
ゼウスがマグロを切った。
「今日は魚か」
「マグロのステーキ。チェリートマトのソースと、ニンニクのコンフィ、フォンダンポテト」
「一度に四つも作ったのか」
「料理名を分ければな。焼いたマグロと芋と付け合わせだよ」
ゼウスはフォンダンポテトを食べた。
「宴でもないのに、今日は手をかけたな」
「映画に出る予定だった料理だから」
「予定だった?」
「結局、出てこない」
ゼウスが手を止めた。
「なぜ、出てこない料理を作った?」
「見れば分かる」
俺は安い白ワインを二つのグラスに注いだ。
ゼウスが一口飲む。
「悪くない」
「七百円なら十分だろ」
「値は聞いておらぬ」
「安い酒だって文句を言われる前に言った」
「美味ければ構わぬ。だが、客人に値を教える必要もない」
「次から黙って出すよ」
俺はリモコンを取った。
「今日の映画は『ブリジット・ジョーンズの日記』」
「ブリジット・ジョーンズとは、女の名か?」
「ああ」
「日記とは何だ?」
「日記知らんの?まあ見てれば分かる」
「料理も題名も、そればかりだな」
「始まる前に聞くからだよ」
俺は再生ボタンを押した。
*
三十二歳のブリジット・ジョーンズは、クリスマスを両親の家で過ごしていた。
母親が開いた七面鳥カレーのパーティーには、親戚や近所の者たちが集まっている。
ブリジットは母親から、立派な弁護士だというマーク・ダーシーを紹介された。
マークは、母親から贈られた緑色のセーターを着ていた。
胸には、大きなトナカイの顔が編み込まれている。
ゼウスが目を細めた。
「この男は、鹿を信仰しておるのか?」
「母親が選んだ服だよ」
「なぜ着た?」
「断れなかったんだろ」
「戦装束を母に決められる男か」
「親戚の集まりを戦場にするな」
ブリジットとマークの会話は続かなかった。
その後、マークは母親に、ブリジットは酒を飲みすぎ、煙草を吸い、口を開けば余計なことを言う女だと話した。
少し離れた場所にいたブリジットにも聞こえていた。
ゼウスの眉が寄った。
「紹介された女を、聞こえる場所で侮辱したぞ」
「第一印象は最悪だな」
「気に入らぬなら、婚姻を断ればよい。なぜ傷つける言葉まで並べる?」
「お前、鹿のセーターを着た時点で見下してなかったか?」
「本人には言っておらぬ」
「聞こえなきゃいいって話でもないけどな」
休暇を終えたブリジットは、一人でロンドンの部屋に戻った。
酒を飲み、失恋の歌を大声で歌う。
新しい年を迎え、彼女は一冊のノートを開いた。
体重を減らす。
酒を減らす。
煙草をやめる。
ろくでもない男とは関わらない。
新しい年に守ることを、数字とともに書き始めた。
ゼウスが画面を見た。
「これが日記か。ヒュポムネーマのようなものだな」
「何だ、それ?」
「忘れぬための書きつけだ。約束や数字、後で確かめることを残しておく」
「近いけど、それだけじゃない。あったことや、思ったことも毎日書くんだよ」
ブリジットは、クリスマスに出会ったマークの悪口を書いた。
彼から言われたことと、その時に感じた屈辱まで残していく。
ゼウスが眉を寄せた。
「これは誰に提出する?」
「誰にも見せない」
「ならば、なぜ不名誉なことまで書く?」
「自分のためだよ」
「忘れたいことまで、自分で残すのか?」
「詩人は、こんな生活を歌ってくれないだろ。自分で書かなきゃ消える」
ゼウスが鼻を鳴らした。
「私の事績は、ムーサに導かれた詩人が勝手に歌う」
「お前も自分で書けば? その方が正確な神話になるかもしれないぞ」
「この女のように、失態もすべてか?」
「当然」
ゼウスの顔が曇った。
「万が一、それをヘラに読まれたらどうする。神々の戦を起こす気か?」
「お前の浮気、もう神話で世界中に知られてるぞ」
「詩人が歌うのと、私の筆跡で認めるのは違う」
「日記以前の問題だろ。証拠能力の話になってる」
ブリジットは体重計に乗り、数字を日記に書いた。
鏡の前で腹をつまみ、もっと痩せなければならないと考える。
「この女は、なぜ身体を小さくしようとしておる?」
「痩せたいんだよ」
「病でもないのに、なぜ食を減らす?」
「今の自分の体型が嫌なんだろ」
ゼウスは画面のブリジットを見た。
「よく食べ、よく飲み、よく笑っておる。どこを損なう必要がある?」
「ダイエットの元になったディアイタって、生き方とか生活の整え方だったよな」
「そうだ」
「じゃあ、酒と煙草は減らした方がいいんじゃないか?」
「煙は減らせ。酒は残せ」
「健康じゃなくて自分の好みで整えるな」
*
ブリジットは出版社で働いていた。
上司のダニエルは、仕事中の彼女にメールを送ってきた。
服装についてからかい、私生活を探り、二人だけで言葉を交わす。
ブリジットも返信し、やり取りを楽しんでいた。
ゼウスが首を傾げた。
「この男は、仕事の命令をしておらぬぞ」
「口説いてるんだよ」
「ならば、なぜ直接言わぬ?」
「職場で正面から言ったら問題になるからだろ」
「文字ならば問題にならぬのか?」
「記録が残る分、むしろ悪化する」
「愚かな方法だな」
「でも、ブリジットは喜んでる」
「ならば成功しておるのか」
「判定が雑だな」
ダニエルとブリジットは、急速に親しくなっていった。
二人で食事をし、週末を過ごす。
ダニエルはマークの名を聞くと、かつて親友だったと話した。
だがマークが自分の婚約者を奪ったため、関係が壊れたという。
ゼウスが顔をしかめた。
「鹿の男が、友の花嫁を奪ったのか」
「ダニエルの話が本当ならな」
「最初から気に入らぬ男だった」
「セーターで決めるな」
「女への侮辱に加え、友の婚姻まで壊した。もう十分だ」
「お前、完全にダニエル側についたな」
「事実に従って判断しただけだ」
その頃、ブリジットの母親は夫を残し、テレビ通販の司会者ジュリアンと暮らし始めた。
派手な服を着て、以前とは違う生活を楽しんでいる。
俺はゼウスを見た。
「何だ?」
「いや、お前のコメントを待ってる」
「人の家の婚姻だ」
「逃げたな」
「娘は母親ではない。今は娘の話を見よ」
「自分に飛び火しそうな話だけ、急に映画に集中するよな」
ブリジットは、ダニエルとの関係がうまくいっていると思っていた。
ある週末、彼の部屋を訪ねる。
浴室から、一人の女が現れた。
ダニエルには、結婚を約束した相手がいた。
ゼウスが立ち上がった。
「妻となる女がいたのか!」
「お前が怒るの、そこ?」
「独り身と偽り、この女を欺いた。誓約以前の卑劣さだ」
「浮気じゃなく、虚偽の申告だけ責めるあたりが巧妙だな」
「何が言いたい?」
「自分に飛び火しない場所を選んで怒ってるだろ」
ゼウスは画面のダニエルを指した。
「少なくとも、私は神々の王であることを隠して近づいたりはせぬ」
「いや白鳥、牛、ヘラさんにはカッコウだったか?托卵生物だから偽りじゃないとでも言う気か?そこまで言い切るなら逆に尊敬するよ」
「それは……詩人がムーサに聞いて書いた事だ。私は書いてない」
ブリジットはダニエルと別れ、出版社も辞めた。
退職を告げると、ダニエルは自分を失えば後悔すると言った。
ブリジットは、むしろ彼の下で働き続ければ後悔すると言い返した。
ゼウスが満足そうに頷いた。
「よく言った」
「さっきまでダニエルを応援してたのに」
「新たな事実が出たなら、判断を改めるのは王の務めだ」
「便利な言葉だな」
*
ブリジットはテレビ局に転職した。
だが最初から、仕事がうまくいったわけではない。
消防署の取材では、カメラの前で降下棒にしがみつき、うまく滑れないまま尻を映された。
ゼウスが目を見開いた。
「なぜ、火事の報告で尻を見せておる?」
「本人に聞け」
「この女の日記は、毎日書くことが多いな」
「ほとんど失敗だけどな」
重要な裁判の取材では、現場に遅れ、他社に場所を取られた。
そこにマークが現れる。
事件を担当する弁護士だった彼は、ブリジットのために独占取材を用意した。
彼女の報道は成功し、局内で評価された。
ゼウスの顔が緩んだ。
「鹿の男が助けたぞ」
「今は普通の服着てるけどな」
「だが、友の花嫁を奪った男であろう?」
「それはダニエルから聞いただけだ」
「仕事を助けたことと、過去の罪は別だ」
「お前、評価が揺れてるな」
「まだ証言が足りぬ」
友人夫婦の家で開かれた夕食会に、ブリジットは一人で参加した。
集まったのは夫婦ばかりだった。
食卓では、三十代の独身女性に何か問題があるかのような話が続く。
ブリジットは笑って受け流そうとした。
マークは、彼女をからかう者たちを止めた。
その後、二人きりになると、ブリジットのことをありのままで好きだと告げた。
ゼウスが画面を見直した。
「最初に侮辱した男が、今度は皆の前で守ったか」
「本人のいないところで悪口を言って、本人には褒める。順番がおかしいけどな」
「過ちに気づいて改めたのであろう」
「お前、急にマークに甘くなったな」
「女の身体を変えろとも、酒を捨てろとも言わず、そのままでよいと言った」
「高評価の理由、そこか」
「当然だ。この女は最初から痩せる必要などない」
「まだダイエットの話を気にしてたのかよ」
*
誕生日を迎えたブリジットは、友人たちのために料理を始めた。
マグロを焼き、チェリートマトのソースを作り、ニンニクのコンフィとフォンダンポテトを添える予定だった。
だが買ったマグロを、バスに置き忘れていた。
ゼウスが自分の皿を見た。
マグロは半分ほど残っている。
「お前は持ち帰れたのだな」
「そこを褒められると思わなかったよ」
ポテトは固いまま、オレンジのデザートはマーマレードのようになった。
さらに、野菜を束ねた古い青い紐から色が出て、スープは鮮やかな青に染まった。
そこにマークが白ワインを持って訪ねてきた。
台所の惨状を見ると、上着を脱ぎ、料理を手伝い始める。
ゼウスが画面とテーブルを見比べた。
「我々の卓に、あの青い汁はないぞ」
「出すはずだった料理を作ったんだよ。飲みたければ、インスタントならあるぞ。青くはないけど」
ゼウスは白ワインを飲んだ。
「酒があるからよい」
「代わりにならんだろ」
マークとブリジットは、残った材料で大きなオムレツを作った。
友人たちが集まり、青いスープとオムレツ、マーマレードのようなデザートを囲む。
誰も料理の失敗を責めなかった。
青いスープを笑い、酒を飲み、ブリジットの誕生日を祝った。
ゼウスが頷く。
「これこそ、ディアイタではないか」
「青いスープとオムレツとマーマレードだぞ」
「失敗した食事を友と囲み、笑って酒を飲んでおる。よい生き方だ」
「痩せる話、完全に消えたな」
「最初から必要ない」
宴の途中、酔ったダニエルが現れた。
ブリジットを取り戻しに来たと言い、マークと向き合う。
マークはダニエルを外に連れ出した。
ゼウスが立ち上がった。
「決闘か!」
「お前が喜ぶと思ったよ」
二人は店の外で殴り合った。
拳はまともに当たらず、互いの服をつかんでもつれ合う。
窓を破ってレストランに転がり込み、客の食事を巻き込んだ。
ゼウスはゆっくり座った。
「お前が今まで見せた話の中でも最低の戦いだ。拳も足も、何一つ鍛えておらぬ」
「弁護士と出版社の上司だからな」
二人は息を切らしながら立ち上がり、再び不格好に飛びかかった。
「武具はないのか?」
「恋愛のもつれで剣を持ち出すな」
「せめて、拳の握り方くらい教えてから戦わせよ」
「誰が教えるんだよ」
「私が行こう」
「映画の中に乱入しようとするな)
ダニエルとマークは、また店の外に転がり出た。
「この男たちは、戦っておるのか、店を壊したいのか、どちらだ?」
「両方だと思う」
ブリジットは二人を止めた。
どちらも自分にはふさわしくないと言い残し、一人で帰っていく。
ゼウスが壊れた店を見た。
「勝者は誰だ?」
「勝者はいない。敗者は男二人と壊された店だな」
「ひどい戦だったな」
*
家に戻ったブリジットの母親は、夫との関係をやり直そうとしていた。
ジュリアンとの生活で、自分が本当に必要としていたものに気づいたという。
母親はその中で、ダニエルとマークの過去について話した。
マークがダニエルの婚約者を奪ったのではない。
ダニエルが、親友だったマークの妻と関係を持ったのだ。
ゼウスが再び立ち上がった。
「話が逆ではないか!」
「ダニエルが嘘をついてたんだな」
「友として家に迎えられ、その妻を奪ったのか!」
「お前が一番嫌うやつだな」
「客人としての信義まで踏みにじっておる。あの男を呼び戻せ」
「何する気だ?」
「今度こそ、まともな決闘をさせる」
「さっきので終わりだよ」
「では、私が相手をする」
「レベルを合わせろ」
「雷は使わぬ」
「そういう問題じゃない。お前が戦ったら決闘じゃなくて、ただの神罰になるだろ」
ゼウスは座った。
「最初から鹿の男の方がよいと思っていた」
「嘘つけ。完全にダニエル側だっただろ」
「新たな事実に従って――」
「三回目だぞ、その王の務め」
*
ブリジットは、両親の結婚記念の宴に出席した。
そこでマークに会う。
自分も、彼をありのままで好きだと伝えようとした。
だがマークは、仕事のためニューヨークに移り、そばにいる女性と婚約すると皆から思われていた。
ブリジットは、人々の前でまとまりのない言葉を並べた。
マークが英国に残るべき理由を話しながら、自分の気持ちまで漏らしてしまう。
ゼウスが身を乗り出した。
「求婚か?」
「違う」
「では、何を述べておる?」
「本人も分からなくなってる」
マークはすぐには答えなかった。
ブリジットは失恋したと思い、友人たちとパリに旅行する準備を始めた。
出発する直前、マークが部屋に現れる。
ニューヨークには行かない。
そばにいた女性とも別れた。
ブリジットは喜び、服を着替えるため寝室に入った。
マークは一人で待っていた。
テーブルには、ブリジットの日記が開いたまま置かれている。
そこには、マークを嫌な男として書いた過去の言葉が並んでいた。
ゼウスが立ち上がった。
「読まれたぞ!」
「見れば分かる」
「だから、不名誉な記録など残すなと言ったのだ!」
「お前が一番怯えてるじゃねえか」
マークは日記を読み、何も言わず部屋を出た。
「この男は、どこまで読んだ?」
「お前の日記じゃないんだよ」
「鹿の服についても書いたのか?」
「多分な」
「終わったな」
「断言が早い」
「本人に言えぬ侮辱を、文字にして残したのだぞ。私ならば――」
「ヘラに読まれた時の想像で話してるだろ」
「日記は危険だ」
部屋に戻ったブリジットは、マークがいないことに気づいた。
開かれた日記を見て、後を追う。
上着を羽織っただけの姿で、雪の降る通りを走った。
ゼウスが声を出して笑う。
「見ろ。尻を出して走っておる!」
「着替えてる途中だったんだよ」
「雪の中だぞ!」
「古代ギリシアってほんと下ネタ好きだよな」
ブリジットは店から出てきたマークを見つけた。
彼は去ったのではなかった。
新しい日記を買いに行っていた。
マークは、これから新しいことを書くための一冊をブリジットに渡した。
ゼウスは立ったまま画面を見た。
「悪く書かれたのに、新しい書物を与えるのか」
「新しく書き直せってことだろ」
「過去に書いた言葉は消えぬぞ」
「でも、その後に何を書くかは変えられる。お前自身何度も意見変えただろ。それと一緒だよ」
ゼウスは新しい日記を見た。
マークとブリジットは、雪の中で口づけした。
エンドロールが始まった。
*
ゼウスは残っていたマグロを食べた。
「結局、この料理は一度も出なかったな」
「マグロをバスに忘れたからな」
「青い汁と卵を食べながら、友は誰も帰らなかった」
「料理を食いに来たんじゃなくて、ブリジットの誕生日を祝いに来たからだろ」
ゼウスが白ワインを注いだ。
「よい友を持っておる。これも日記に書くべきだな」
「お前も日記を書く気になった?」
「断る」
「なんでだよ」
「この女は、読まれても口づけで済んだ。私の日記をヘラが読めば、神々を二分する戦になりかねん」
「それ人間は大丈夫なのか?」
「神々の戦だぞ。大丈夫なわけがなかろう」
「日記は絶対に書くな」
「最初から私は書かぬと言っている」
ゼウスは瓶に残っていた白ワインを自分のグラスにすべて注いだ。
酒の量を記録する気も、減らす気もないらしい。
詩人達はその生き方を正確に歌っていたようだ。
神話メモ
◾️ヒュポムネーマ
ヒュポムネーマは、記憶を助けるための書きつけや覚え書きを指す古代ギリシア語である。個人の備忘録だけでなく、公的な記録や報告、学問のための抜き書きにも用いられた。現代的な私的日記とは目的が異なるが、後から考えや行動を確かめるための記録でもあった。
◾️ムーサと詩人
ムーサは、詩歌や音楽、記憶を司る女神たちである。詩人は物語を語り始める際、ムーサに呼びかけ、過去の出来事を正しく歌うための助力を求めた。ヘシオドスは『神統記』で、ムーサが真実に似た虚偽と、望む時には真実を語れる存在だと記している。
◾️クレオス
クレオスは、評判や名声、とくに詩によって後世に伝えられる英雄の誉れを指す。人の命には限りがあっても、その働きが詩人に歌われ続ければ、名は死後も残ると考えられた。英雄叙事詩では、長い生涯と引き換えに不滅の名声を選ぶことが重要な主題となる。
◾️ディアイタ
古代ギリシア語のディアイタは、食事だけでなく、運動や睡眠を含む生活の仕方や養生を意味した。英語の「ダイエット」の語源となった言葉だが、本来は体重を減らす行為だけを指すものではない。身体を整えるための日々の過ごし方全体が含まれていた。
◾️クセニアと客人の義務
クセニアは、客人と主人の間に結ばれる相互的な関係である。主人には客を保護し、食事や宿を与える責任があり、客にも家を害さず、受けた厚意に応える義務があった。客として迎えられながら、主人の財産や家族を侵す行為は、ゼウスの守る秩序への重大な背反とされた。




