第37話 コープスブライド
※本編では映画の結末を含むネタバレがあります。
映画紹介
公開年:2005年
監督:ティム・バートン、マイク・ジョンソン
主演:ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター
裕福な魚商人の息子ヴィクターは、没落した名家の娘ヴィクトリアとの結婚を控えていた。だが森で一人、結婚の誓いを練習したことから、花嫁衣装をまとった死者エミリーと婚姻を結んでしまう。生者と死者、二人の花嫁の間で揺れる青年を描いたストップモーションアニメーション。
グラタン皿の表面には、焼き色のついたマッシュポテトが広がっている。
その下には、鮭と白身魚、玉ねぎ、キノコを入れたホワイトソースが隠れていた。
付け合わせにグリーンピースと人参を盛り、薄く切ったパンも添えてある。
ゼウスがスプーンで表面を割った。
湯気とともに、白いソースが流れ出す。
「魚を芋の下に埋めたのか?」
「フィッシュパイ。イギリス料理だよ」
ゼウスは一口食べた。
「美味い」
「だろ。小さい小さいと言ってたオーブンでも、これくらいはできるんだぜ」
ゼウスがグラタン皿の端まで確認した。
「ならば、炉が大きければ、これも大きく作れたのではないか?」
「褒めた直後に要求を足すな」
俺は冷やしてあった赤ワインの瓶を開け、二つのグラスに注いだ。
ゼウスが自分のグラスを持ち上げる。
「魚ならば、白い葡萄酒ではないのか?」
「今日は赤でいいんだよ。映画に出てくるから」
「物語の食事を選ぶ時だけは、妙に頑固だな」
「そのおかげでフィッシュパイ食えてるんだぞ。一応渋みの少ないの選んだから合わないって事はないと思う」
ゼウスはもう一口食べ。ワインを飲んだ。
反論はなかった。
「今日の映画は『コープスブライド』」
「死体の花嫁?」
「まんまだけど、まあそうだ」
ゼウスのスプーンが止まった。
「それを見ながら、埋めた魚を食うのか?」
「言い方考えろ」
俺は再生ボタンを押した。
*
灰色の町で、一羽の蝶が空へ放たれた。
人々の顔は青白く、家も道も空も、煤をかぶったような色をしている。
ゼウスが画面を見つめた。
「人形が動いておるぞ」
「少し動かして一枚撮って、また少し動かして撮る。それを続けて、動いてるように見せてる」
ゼウスがヴィクターの指先を見た。
「この指の動きもか?」
「全部」
「歩くたびに止めるのか?」
「そう」
「顔も動いておるぞ」
「それも少しずつ変えてる」
ゼウスは画面に顔を近づけた。
「恐ろしい労力だな」
「一〜二秒撮るのに10時間以上かかるとか聞いたな」
「ヘパイストスならば、自ら歩く人形を一度で作るぞ」
「人間の職人を鍛冶の神と比べるな」
「だが、人の手だけでここまで動かしたのなら、大した技だ」
「珍しく素直に褒めたな」
「よい仕事を貶す必要はないだろう」
画面では、二つの家族が結婚式の準備を進めていた。
ヴィクターの両親は、魚を商って財を築いた新興の富裕層だった。金はあるが、家柄がない。
一方、ヴィクトリアの両親は由緒ある貴族だが、屋敷以外の財産をほとんど失っていた。
両家は息子と娘を結婚させることで、互いに持っていないものを手に入れようとしている。
ゼウスがフィッシュパイを見た。
「この魚は、あの家の財か」
「そこまで直接ではないけどな。まあイギリスの話だしな」
「魚を売って富を得た家と、名だけ残った家が婚姻を結ぶ。分かりやすい取り引きだ」
「結婚する二人の気持ちは無視されてるけどな」
「家同士の婚姻ならば珍しくはない。だが、本人たちが憎み合っていては長くもたぬぞ」
初めて顔を合わせたヴィクターとヴィクトリアは、どちらも緊張していた。
まともに会話もできなかったが、ヴィクターがピアノを弾くと、ヴィクトリアも隣に座った。
二人の指が同じ鍵盤の上を動く。
「悪くないではないか」
「会ったばかりだけどな」
「言葉がなくとも、同じ調べを奏でられる。家が決めた婚姻にしては恵まれておる」
*
結婚式の予行練習が始まった。
ヴィクターは誓いの言葉を覚えられない。
言葉を間違え、指輪を落とし、蝋燭の火でヴィクトリアの母親の服まで燃やした。
牧師の顔が険しくなる。
ゼウスも眉を寄せた。
「婚姻の誓いを忘れたのか」
「緊張してるんだよ」
「指輪まで落としておるぞ」
「見れば分かる」
「花嫁の母親を焼いたぞ」
「練習で被害を増やすなとは思う」
牧師は、誓いを覚えるまで結婚を認めないと言い渡した。
屋敷を飛び出したヴィクターは、森へ入った。
誰もいない場所で、誓いの言葉を繰り返す。
少しずつ言葉がつながり、ようやく最後まで言えるようになった。
ヴィクターは地面から伸びた枝をヴィクトリアの手に見立て、指輪をはめた。
ゼウスが頷いた。
「やっと言えたな。これで婚姻は成ったな。まあ練習だが」
「……」
「どうした?」
「いいから、映画を見ろ」
地面が動いた。
指輪をはめた枝が土の中へ引っ込む。
次の瞬間、花嫁衣装をまとった青い死体が地面から現れた。
ゼウスが画面を指した。
「これが死体の花嫁か」
「お前の言った通りだ。婚姻は成った」
死者の花嫁はヴィクターへ口づけした。
ヴィクターは悲鳴を上げ、森の中を逃げた。
だが木々の間にも、道の先にも、エミリーが現れる。
「たいそう喜んでおるな」
「結婚相手をずっと待ってたんだ」
「誓いを述べる前に、相手を確かめなかった男の落ち度だ」
「それはそうかもしれないけど、罰が重すぎるだろ」
「この話をヘラが来た時に見せなくてよかった」
「いきなり怖い事言うなよ」
エミリーはヴィクターの腕を取り、死者の国へ連れていった。
*
ヴィクターが目を覚ますと、周囲には骸骨や腐りかけた死者たちがいた。
酒場では楽器が鳴り、死者たちが歌い、踊っている。
地上の町よりも鮮やかな色があふれていた。
ゼウスが首を傾げた。
「なぜ死者の方が、生者より楽しそうなのだ?」
「地上の連中、全員死人みたいな顔してたからな」
「ハデスは冥府で毎夜、このような宴を開いておるのか?」
「ハデスの冥府とは別の冥府なんじゃないのか?」
ゼウスが俺の顔見てため息をついた。
「…いくらなんでも言う事が雑すぎるぞ」
「うるせーな。冥府の知識なんてあるわけないだろ」
ヴィクターを囲んだ死者たちは、エミリーが死んだ経緯を歌い始めた。
ゼウスはグラスを置いた。
「骸骨どもが歌いながら過去を説明しておるな」
「ミュージカルだからな」
「悲劇の合唱隊ではないか」
「ギリシア悲劇もこんなに踊るのか?」
「話による」
「お前も説明雑じゃねーか」
エミリーは、死者たちの歌を黙って聞いていた。
生前のエミリーは、ある男と恋に落ちた。
家族の反対を押し切り、宝石や金貨を持ち出して、男と駆け落ちしようとした。
だが待ち合わせの森で、男はエミリーの財産を奪い、彼女を殺した。
花嫁衣装のまま土に埋められたエミリーは、いつか自分を愛する男が現れるのを待ち続けていた。
ゼウスの顔から笑みが消えた。
「婚姻を約束して連れ出し、財を奪ったうえで殺したのか」
「それで、花嫁衣装のまま埋められた」
ゼウスはエミリーを見た。
「なんと不憫な娘だ。ハデスに話を通してやろうか」
「生き返らせられるのか?」
「すぐにとは言わぬ。だが、あやつもあれで情はある。あらましを知れば、地上へ戻る機会くらいは与えるはずだ」
「褒めてるのか、それ」
「オルフェウスにも機会を与えた」
「途中で振り返ったら終わりってやつだっけ?」
「機会は与えた」
「結果だけ見ると、あんまり希望が持てないな」
ゼウスが画面のエミリーを見た。
「ならば、もっと簡単な条件にするよう私から言おう」
「神の身内交渉で冥界の決まりを変えていいのかよ」
「不憫に思った者を助けて何が悪い」
「他の死者は?」
「すべてを救えぬからと、目の前の一人も救わぬのか?」
俺はワインを飲んだ。
「急に反論しにくいこと言うなよ」
ゼウスは腕を組んだ。
「神の加護とは、もとより贔屓みたいなものだ」
「最後の一言で台無しだよ」
エミリーはヴィクターへ、結婚の贈り物を用意していた。
小さな箱から飛び出したのは、骨だけになった犬だった。
ヴィクターが幼い頃に飼っていた犬、スクラップスだ。
犬は尻尾の骨を振り、ヴィクターへ飛びついた。
ゼウスが身を乗り出した。
「死んで骨になってなお、主人を覚えておるのか」
「いい犬だよな」
「よい犬だ」
*
ヴィクターは、エミリーを両親に紹介したいと嘘をつき、生者の世界へ戻ろうとした。
死者の国の長老が呪文を唱える。
二人は地上へ戻った。
ヴィクターはエミリーを森で待たせ、一人でヴィクトリアの屋敷へ向かった。
ようやく再会したヴィクトリアへ、死者の花嫁と結婚してしまった経緯を話す。
「オルフェウスは、妻を取り戻すために冥府へ降りた」
「まあ有名な話だな」
「この男は冥府へ行き、妻を増やして帰ってきたぞ」
「そんな話じゃねーよ。本人に増やす気はなかった」
「花嫁の母親を燃やした男かと思ったら、ずいぶんと手際がよいものだ」
「そこ評価するなよ」
ヴィクターが戻らないことを心配したエミリーは、屋敷までやってきた。
窓の向こうに、抱き合うヴィクターとヴィクトリアがいる。
エミリーの顔が曇った。
「別の女に会うため、花嫁を森に置いてきたのか」
「事情が事情だろ。もともとヴィクトリアと結婚するはずだったんだ」
「だが、森で誓いを受けたのは死体の花嫁だ」
「木の枝だと思ってた」
「あの花嫁は、そうは思っておらぬぞ」
エミリーは怒り、ヴィクターを死者の国へ連れ戻した。
ヴィクターは、自分は結婚など望んでいなかったと言い放つ。
傷ついたエミリーは、その場を去った。
ゼウスはしばらく考えた。
「男は騙すつもりで誓ったのではない。だが、花嫁が傷つくのも当然だ」
「珍しく判定を保留したな」
「死者との婚姻など、前例が少ない」
「神々の王でも困る案件だったか」
「これはハデスに任せよう」
「面倒だからって弟に投げるなよ」
地上では、ヴィクトリアが両親へ助けを求めていた。
だが死者の花嫁の話を信じてもらえず、部屋に閉じ込められる。
そこへ、バーキスという男が現れた。
家柄も財産も明らかではないが、ヴィクトリアの両親は、結婚相手を失った娘をバーキスと結婚させることにした。
ゼウスの眉が寄った。
「なぜ、この男へ娘を与える?」
「結婚式を中止にしたくないんだろ」
「どこの家の者かも分からぬぞ」
「本人たちは、金持ちだと思ってる」
「確かめてもおらぬのか?」
「まあずいぶんと雑な取り引きをしてるな」
「この家が没落した理由がわかったな」
*
死者の国では、エミリーが長老から婚姻について知らされていた。
死が二人を分かつ以上、生者と死者の婚姻は正式には成立しない。
ヴィクターがエミリーの夫になるには、自ら命を捨て、死者としてもう一度誓わなければならない。
そのための毒が、杯に注がれた。
ゼウスが自分のワイングラスを見た。
「おい人間。この嫌がらせのために赤にしたのか?」
「ちょっとした悪戯だよ」
「何も入れてないだろうな?」
「入れてねーよ。さっきから俺も飲んでるだろ」
「この男のように死ねば、冥府の宴へ行けるぞ」
「片道切符を勧めるな」
「まあ私には毒など効かぬがな」
ゼウスはグラスの匂いを確かめた。
「毒は味を損なうかもしれぬ」
「命じゃなくて味の心配かよ」
その時、地上から死者が一人やってきた。
ヴィクターの家で働いていた御者だった。
彼はヴィクトリアがバーキスと結婚すると知らせる。
戻る場所を失ったと思ったヴィクターは、毒を飲んでエミリーと結婚することを受け入れた。
「愛する女を失ったと思い、死を選ぶか」
「もう地上には何もないと思ってるんだろ」
「誓いを果たすためではなく、絶望から杯を取っておる。よい婚姻にはならぬぞ」
「エミリーは喜んでる」
死者たちは結婚式の準備を始めた。
地上へ出ると、生者たちは骸骨や腐った死体を見て逃げ惑った。
だがやがて、その中に亡くなった夫や祖父、友人がいることに気づく。
恐怖の声は、再会を喜ぶ声に変わっていった。
「姿が変わっても、身内と分かれば迎えるか」
「さっきの犬と同じだな」
*
教会で、死者たちがヴィクターとエミリーを囲んだ。
ヴィクターは誓いを述べ、毒の入った杯を手に取る。
飲もうとした時、エミリーがその手を止めた。
教会の奥には、ヴィクトリアが立っていた。
エミリーは、かつて自分が花嫁になる未来を奪われた。
今、自分がヴィクトリアから同じ未来を奪おうとしている。
「止めたぞ」
ゼウスの声は低かった。
エミリーはヴィクターへ、ヴィクトリアのもとへ戻るよう告げた。
「悲劇になると思った」
「まあ材料は全部揃ってたな」
「殺された花嫁が戻り、生者から夫を奪う。血で終わる話であろう」
「でも、あの花嫁は止めた」
「己が奪われたからと、別の女からも奪うことを選ばなかったか」
教会の扉が開いた。
バーキスが現れ、ヴィクトリアを連れ戻そうとする。
言い争う中、彼女の家に財産が残っていないことを知り、バーキスは怒りをあらわにした。
金のためにヴィクトリアへ近づいたことが明らかになる。
エミリーが男の顔を見た。
表情が変わる。
かつて彼女を森へ連れ出し、財産を奪って殺した男だった。
ゼウスが立ち上がった。
「この男か」
「そうみたいだな」
「また花嫁を騙し、財を奪おうとしたのか」
バーキスは剣を抜いた。
ヴィクターが燭台を持ち、立ち向かう。
だが剣に押され、床へ倒れた。
とどめを刺そうとした刃を、エミリーが受け止める。
剣は花嫁衣装を貫いたが、すでに死んでいる身体には効かなかった。
死者たちに囲まれたバーキスは、教会から去ろうとした。
その前に、卓上の杯を取る。
エミリーとヴィクターの結婚を嘲りながら、中のワインを飲み干した。
毒の入った杯だった。
バーキスの顔色が変わる。
その場に倒れ、死者となった男を、骸骨たちが取り囲んだ。
ゼウスが座り直した。
「用意された毒を飲んだか」
「誰も飲めとは言ってないけどな」
「誓いを破り、二人の花嫁を騙した報いとしては分かりやすい」
「死者たち、めちゃくちゃ嬉しそうに連れていったぞ」
「ハデスのもとへ罪人を届けるのであろう」
「お前が弟に話を通す手間も一つ増えたな」
「エミリーのことだけ伝える。あの男は好きにさせる」
「神の贔屓が露骨すぎる」
*
エミリーはヴィクターへ指輪を返した。
ヴィクトリアへ花束を渡し、一人で教会の外へ出る。
月明かりの中で、その身体が無数の青い蝶に変わった。
蝶は夜空へ舞い上がり、月の光へ消えていく。
ゼウスは黙って見送った。
「ハデスに話を通す必要はなくなったようだ」
「生き返る機会を失ったんだぞ」
「人間よ。それは違うぞ」
ゼウスは空になった杯を置いた。
「あの娘は、奪われた生の代わりに他人の生を奪うことを拒んだ。己で婚姻を解き、行く先を選んだのだ」
青い蝶が月を覆った。
「もはや、この者を不憫な娘として扱うのは侮辱であろう」
エンドロールが始まった。
*
俺は残っていたフィッシュパイを皿に取り分けた。
ゼウスが自分のグラスにワインを注ぐ。
「まだ飲むのか?」
「毒が入っておらぬと分かったからな」
「最初から言ってるだろ」
「疑うべき杯を疑わず飲んだ男が、先ほど死んだぞ」
「映画から学ぶところ、そこなのかよ」
ゼウスはフィッシュパイを食べた。
「次は、もっと深い皿で作れ」
「七面鳥よりは現実的な要求になったな」
「大きな炉があれば、さらに大きな皿も入るぞ」
「褒美で巨大なオーブンを寄こす話、まだ諦めてなかったのか」
「今日の人形を作った職人ならば、私の望む炉も作れるのではないか?」
「ヘパイストスとストップモーションの職人を同じ工房に入れるな」
「では、ヘスティアにも声をかけよう」
「神を増やすな。ワンルームに巨大オーブンを作る計画を進めるな」
ゼウスは返事をせず、フィッシュパイの最後の一口を食べた。
死者の婚姻には慎重だった神々の王は、我が家と巨大オーブンの縁談は、今日も勝手に進めようとしていた。
神話メモ
◾️ヘパイストスの自動人形
鍛冶神ヘパイストスは、自ら動く不思議な器物を作ったとされる。『イリアス』には、主人を支える黄金の乙女たちや、自動で神々の宴へ進む三脚が登場する。黄金の乙女たちは知性や言葉、技術を備え、足の不自由なヘパイストスを支えた。
◾️オルフェウスの冥界下り
竪琴の名手オルフェウスは、亡くなった妻エウリュディケーを取り戻すため、冥界へ下った。その演奏に心を動かされたハデスとペルセポネーは、地上へ出るまで妻を振り返らないことを条件に帰還を許した。しかしオルフェウスは出口の直前で振り返り、妻を永遠に失った。
◾️ハデスと死者の掟
ハデスは冥界を統べ、死者が定められた領域を離れないよう管理する神である。冷酷な悪神というより、死と生の境界を守る厳格な王として描かれる。原則として死者の帰還を許さないが、オルフェウスの嘆願に条件付きの機会を与えた伝承もある。
◾️ギリシア悲劇のコロス
古代ギリシア悲劇のコロスは、歌や踊りを伴って舞台に登場する合唱隊である。登場人物の行動や出来事について意見を述べ、物語の背景を伝え、観客の感情を導く役割を担った。市民や老人、捕虜の女性など、作品ごとに異なる集団として設定された。
◾️古代ギリシアの婚姻と誓い
古代ギリシアの婚姻は、当人同士だけでなく、家と家を結ぶ関係でもあった。財産や相続、家系の存続と深く結び付き、父や後見人の合意が重要な役割を持った。神々の前で立てた誓いを破る行為は、共同体の秩序を損なう重大な罪と考えられた。




