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第3話 天才魔法研究者(中身別)による魔法特訓

 色々ありつつ、ラセイトの使っていたらしい魔法特訓場へと向かった。

 向かった先は研究所近くの森でラセイトが進んでいく後をつけて約10分、ようやく到着した。

 特訓場と言っても、いくつかの的があってちょっと離れた場所に物置がある程度の場所だ。『秘密の』と言うだけあってどうやら認識阻害の魔法がかけられており、入るまでは全く気づかなかった。


「どうっスか、自慢の特訓場っスよ」


「うん、まあ特訓する分には…結構適している場所だね」


「ちょっと小馬鹿にされた気がしたっスが…とにかくここで魔法の特訓をするっス。今回は簡単な初級魔法と認識阻害魔法の全階級習得を目指すっス」


「ん?初級魔法はわかるけど認識阻害魔法も習得するの?そういうのって結構難しそうな気がするんだけど」


「まあそうっスね。でもこれから所長を演じるんスから思わぬ時に別人ってバレるのを防ぐ手段が必要っス」


「それに、認識阻害の魔法は比較的簡単な方っス。というか全体的に補助系の魔法は簡単な部類っス。理由は簡単にいうと攻撃魔法に比べて考えることが少なかったり、狙う対象が大体の場合自分や近くにいる味方とかなんで制御も簡単っス」


「なるほど…そう言われてみれば確かにそういうことなのか」


「その前に魔素と魔力について簡単に話すっス」


「魔素…?」


「魔素は空気中に含まれてる元素のひとつっス。その魔素を体内に取り込むことによって魔力を作るっス」


「な…なるほど?」


「で、その魔力を体外に放出することによって魔法を放つんスよ。ここまでは理解できたっスか?」


「まあ、なんとなく」


「じゃあ次は属性について話すっス。ここからは結構ややこしくなるので頑張ってくださいっス」


「よ、よろしくお願いします…!」


「魔素や魔力には属性というものがあるんス。種類は火、水、風、土、光、闇の6属性、そこから色々と派生があるんスけどそこは追々話すっス」


「じゃあ、空気中や私達の体内には常に6つの属性の魔素や魔力が混在しているって言うこと?」


「環境や他諸々の要因によって左右されることもあるっスけど、基本はそうなるっスね」


「あと属性は組み合わせて使うことで全く別の属性になったりするっス。認識阻害の魔法は火と闇を組み合わせた霊属性の魔法だったりするっス」


「へぇ……なんかすっごくややこしそう」


「実際にややこしいっス。まあ全部覚える必要はないっスし、これから解説する適正属性の組み合わせだけ覚えている人も少なくないっス」


「適正属性?」


「じゃあここからは適正属性の解説をするっスね。」


「適正属性ともうひとつ準適性属性があるんスけど、これらは簡単に言うとその人が作りやすい魔力の属性の事を指すっス」


「え?ってことはそれ以外の属性の魔法は使えないの?」


「それがそうとも行かないんスよね〜。適正属性と準適性属性はあくまでもその人が魔力に変えやすい属性の魔素を指すからそれ以外の属性も使えない訳ではないんスよね」


「大体の目安は、適正属性なら最上級魔法まで、準適性属性なら上級魔法まで、それ以外の属性なら中級魔法まで使用可能っていう感じっス。実際にわたしもそのくらいっスからね」


「あ〜……なんだかややこしくなってきたような…」


「後少しっス、少し前からちょいちょい話してる魔法の階級について最後に話すっス」


「おっ!!正直それが1番気になる!」


「魔法の階級は初級、中級、上級、最上級の主な4階級と所長が独自に編み出した変化級があるってことは研究所でも話したっスね」


「うん、それはちゃんと覚えてるよ」


「ということで今回は各階級について細かく解説していこうと思うっス」


「まずは初級魔法について解説するっス。初級魔法は魔法初心者はもちろん、上級者も愛用することの多い階級っス。習得が簡単なのはもちろん、消費する魔力も少ないので威力や範囲は小さい代わりに連発に向いてるっス。魔法の撃ち合いが発生した時は初級魔法で撃ち合うことも珍しくないっスね」


「次に、中級魔法は…初級魔法と違って魔力量もぼちぼち多め、威力も初級よりは出るくらいであんまりいいところがないっス。まあ初級魔法の競り合いで勝ちたい時に織り交ぜるくらいがちょうどいい使い方っスね」


「あれ?でも中級魔法は適正以外の属性なら1番強い階級じゃないんだっけ」


「それはそうなんスけど…わざわざ使いにくい属性をそこまで強くない火力で使うなら普通に使いやすい属性を上級・最上級で使った方が良いよねっていう考えが多いんスよ」


「た…確かに…」


「じゃあさっさと上級魔法について解説するっス」


「中級魔法…扱いが酷い…」


「上級魔法は準適性属性から使えるだけあってかなり強力っス。習得が難しかったり、消費する魔力が多い分威力や範囲は爆発的に高いっス。最上級になればもっと強力になるっス」


「と、これで魔法の基本については解説し終わったっス」


「うん…まあギリギリ理解できたよ」


「それじゃあ学んだことを実践するっスよ!!」


「そう言えば魔法の特訓をするために来たんだったね」


「で…どうやって魔法を放つの?」


「あ……そういえば魔法について解説しただけで発動方法とかは教えてなかったっスね。いやぁ…うっかり」


「えっと…手を前に広げて、その手から息を吐くような感じで魔力を出しながら魔法名を言うと発動できるっス」


「魔法初心者は属性を使い分けることが難しいっスから最初は全属性を合わせた虹属性の初級魔法『イーリス』を発動して貰うっス」


「………わかった、任せて」


 実際のところ、このとき晴人は何も理解していない。勿論のことだが晴人に魔法経験などあるわけもないし、魔力を手から出す感覚など持っているわけがない。

 それに魔法に関する謎概念を説明された直後にいきなり実践、インプットの後に行うアウトプットレベルMAXに近い状態だ。しかし晴人の器は天才魔法研究者、きっとなんとかなると思ったのだろう。

 晴人は言われた通りの動作を行い、魔法を放とうとする。


「……手に意識を集中…息を吐くように…魔力を手に込める…」


「ん?何をブツブツ言ってるんスか?」


「……イーリス!!」


 晴人が叫んだ瞬間、虹色に光る魔法弾が明後日の方向へ飛んで行く。ハイスペックな器のおかげか、はたまた晴人の飲み込みが早かったおかげかコントロールは悪かったものの魔法の発動自体には見事に成功した。


「や、やった!出来た!」


「おぉ…1発成功っスか。なかなか魔法の才能をお持ちのようっスね」


「…もしかすると、もう属性魔法に行けちゃうかも知れないっスね」


「やってみたい!!」


「ほほぅ?勉強意欲が有り余ってるっスねぇ〜。それなら、早速属性魔法を発動したいところなんスけど…」


 ラセイトは顔を少し悩ませて口を開く。


「実は…博士の適正属性、知らないんスよ…」


「というか、博士くらいの実力ならどの属性でも使えちゃいそうだよねっていう噂が1人走りしたり、本人の自分語りをしない性格も相待って博士の適性属性は研究所の人全員知らないんスよ」


「その噂通り全部の属性使えるっていう可能性は?」


「なくは無いっス。でも初めての属性魔法なら適正属性を使ったほうが発動のしやすさは大きいっス」


「まあ使いにくくてもそれに慣れちゃえば要するに全部の属性使えるようになるってことだし多分大丈夫だよ」


「うーん…別人さんがそう言うなら別にいいっスけど」


「じゃあ……何属性の魔法を使いたいっスか?」


 人はどれでも良いと言われた時が1番迷うというもの。

 しかし、晴人はせっかくならこれにしたいという属性があった。

 それは、晴人がイーリス以外で唯一知っている魔法…


「じゃあ、風属性の魔法『トパー・ルフーン』?っていうやつ」


「トパー・ルフーンっスか?それは上級魔法っスし…それよりなんで知ってるんスか?」


「研究所でフロイにやられたんだよね。一応唯一知ってる魔法だし、使えるようになりたいって感じ」


「あーなるほど…って、フロイの奴所長にそんなことするなんて許せないっス」


 ラセイトは静かに怒りを露わにする。

 それほど所長という存在はあの研究所において神聖な存在であり、彼女に何かしらの接触をしただけでもそれを成したものは所長との恋人レースを1歩リードしているという判定なのだろう。


「まあまあ、そんな怒んないでよ…とは言っても無理かぁ」


「って、話が脱線してるし」


「トパー・ルフーンが上級なら初級版のトパー・ルフーンを教えてよ」


「そうっスね、魔法の話に戻すっス」


「魔法の名称は何も難しいことは特にないっス。初級は魔法の系統、今回ならルフーンをそのまま詠唱すればいいっス。そして中級ならアマー、上級ならトパー、最上級ならマターを付ければいいっス。ついでに変化級にはイグリスを付けるっス」


「ん?なんで変化級はついで扱いなの?」


「変化級は詠唱の効果というよりかは本人の技量次第だからっスね。まあ他の階級に色々と名称があるから変化級にもつけちゃお〜っていう所長の単なる気分だと思うっス」


「なるほど、そういうことなら大人しく初級を詠唱しますかっと」


 晴人は2度目の魔法の詠唱をするため、再度腕を前に構える。


「えっと…何も言わないで、ルフーンとだけ……」


「また独り言っスか?魔法を発動するならさっさと詠唱した方がいいと思うんスけど」


 晴人はいわゆる小心者という性格に当たる人物だ。自発的に行動をするのがあまり得意ではない彼が何かを行う際によくするのが『独り言』。

 彼にとって独り言はこれから行うことを口に出すことにより脳内を整理し、間違いを減らす効果がある重要な動作の一つである。魔法世界に来て間もなく、情報の整理が脳内のみでは追いつかない者にとってこの動作は結果的に良い効果をもたらすのだ。


 そして、覚悟を決めて晴人は魔法を詠唱する。


「ルフーン…!」


 すると、彼の手から強めのドライヤー程度の風が吹く。

 初級魔法ということ、あまり派手ではない魔法という2つの要因からこれが天才魔法研究者と言っても鼻で笑われる程度ではあるが、これが魔法を使った事が一切合切ない初心者であると言われたらかなり要領が良い方となる。


「……やっぱり…所長の体って凄いんっスねぇ…」


「いやいやいや、私が凄いのではなく!?」


「別人さんも要領は良い方だと思うっス。でもここまで出来るのはやっぱり所長の体が魔法の才能に恵まれてるおかげっスよ」


 あまりにも顕著な身内贔屓。

 流石の晴人でもこれには不満を漏らす。


「少々酷すぎやしないでしょうか…」


「まあせっかく恵まれた体を手に入れたんスから天才の名に恥じないようにもっと特訓することっスね」


「くぅぅぅぅ…..こうなったらもっと練習してやるーー!」


「せいぜい頑張ることっスね〜」


 こうして、天才魔法研究者になるための特訓が始まったのである———

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