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77話:時間遡行

 この部隊の隊長さんらしい人が別の武器を取り出して魔力を注いでいるニャ。


「ん~・・・にゃんかイヤにゃ感じがする剣だニャ・・・」


 たぶんヤバい能力を持ってる剣にゃんだろうけど、負ける気がしにゃいニャ。にゃんか魔力を注いで苦しんでるみたいだけど、ちょっと様子を見るかニャ?

 少しは歯ごたえが出るといいニャ。


「ぐがあああああああっ!!」


 隊長さんの顔に血管の筋が浮かび、食いしばった歯から犬歯のようにゃものが伸びてきたニャ。

 悪魔憑き?ライカンスロープかニャ?ダマスカスダガーを指でクルクル回しにゃがら、変化が終わるのを待つニャ。


「くはぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


 眼が血走って焦点が合ってにゃいニャ。意識はあるのかニャ?


「もうそろそろいいのかニャ?」


 声を掛けてみたけど反応がにゃいニャ。んにゃ、反応はあったニャ。突然わたしに向かって突っ込んで来たニャ!結構速いけど無理やり動いてるみたいで、顔の血管が破れ血が噴き出してるニャ。


「があああああっ!!」


 拍子抜けニャ。剣速も速くにゃってるけど、身体の限界を超えた速度と力を出してるみたいで、みるみる服が血で染まっていってるニャ。わたしはひょいひょい避けて機会を伺うと、血で濡れた手が滑ったみたいで剣がわたし目掛けて飛んできたニャ。

 回転しにゃがら迫る剣の動きを見極めて、剣の側面を叩き跳ね上げたニャ。

 剣を手放(てばにゃ)した隊長さんはその場で崩れ落ちたニャ。筋肉や筋も切れて立ってられにゃいんだろうニャ。


「がはっ・・・わたしは一体?・・・」


 隊長さんは意識が戻ったみたいだニャ。血を吐き出してるところを見ると内臓もやられちゃったかニャ。


「もう終わりかニャ?」

「ワーキャット・・・そうか、わたしは負けたのか・・・」

「狂戦士ににゃる魔剣にゃんかじゃわたしは倒せにゃいニャ」

「そんな能力だったか・・・どおりで何も覚えてないわけだ・・・」


 隊長さんはやりきった顔をしてわたしを見たニャ。おそらく「迷宮」のトカゲと同じくらいの強さににゃっていたニャ。以前の私でソフィーの付与がにゃかったら勝てにゃかっただろうニャ。


「人語を解しこの強さ・・・お前は魔物の王か何かか?」

「わたしはただのプルーニャだニャ」

「・・・そうか・・・このままでは数分と持たずにわたしは死ぬだろう。出来れば強者の手で逝かせてほしい。頼めるか?・・・」


 (いさぎよ)いニャ。そのくらいの頼みにゃら聞いてやるニャ。


「あんたは強かったニャ。魔剣にゃんかにゃいほうが。名前を聞いてにゃかったニャ」

「リッチ侯爵軍・・・第3師団所属、第1旅団第2連隊、1番大隊々長、ロレンツォ・デル・ナッツ大尉だ・・・」


 にゃがい名前(にゃまえ)だニャ・・・えっと。


「ロレンツォ大尉さん、えっと・・・ヴァルホルへの先人よ?次にゃる地でも元気でニャ・・・」


 ダメだにゃ・・・うろ覚えで合ってるのかどうか・・・


「くっはっはっは・・・感謝する」


 そういって目を閉じたのでわたしは迷わず介錯したニャ。





「た、隊長が!・・・」

「副隊長も、中隊長たちも・・・」


 侯爵兵たちに動揺が広がった。まだ数では侯爵兵の方が多いが、上官たちがことごとく戦死し、士気はがた落ちだ。


「わっはっはっは!愚かな人間どもめ!!ゴブリンたちよ!人間共は皆殺しにしろ!」

「しょ、小隊長!!」

「て、撤退だ!!東門から撤退しろっ!!」


 ボクのノリノリの悪役振りに、侯爵兵は正門から逃げ出した。アレク達も残った兵を正門に追い払う。


「んに?皆殺しにするのかニャ?よぉし!「スパン!」あたっ・・・」


 本気で皆殺しにしようとしたプルーニャを蛇腹扇(ジャバセン)で止める。


「追い払うだけでいいんだよ。ナターレ館を襲撃したのは魔物集団だって、報告してもらわないとね」

「あ、そうにゃの?」


 追い詰めて反撃されたらマズいからね。ソフィー様の付与も最初の9つは時間切れで消えてるし、影の皆も満身創痍でほとんど魔力切れでへたり込んでいる。


 それよりは北門のバルサミーナの状況が気になるね。


「コルニオロ!・・・あれ?コルニオロは?」

「フィオーレ様でしたら先ほどソフィー様の護衛をするって、館に・・・」


 ルカ君が館の方を指さして呟く。まったく・・・まだ忙しいって時に・・・

 オルテンシア様の部屋の真下まで来ると浮遊で窓まで浮かぶ。


「ジプソフィーラ様!!ご無事ですか!!入ってもよろしいでしょうか!!」

「無事です!入っちゃダメです!女性の寝室ですよ!!」


 扉をドンドンするコルニオロの声が聞こえる。窓からスッと中に入ると、驚いているジプソフィーラ様の前を通り過ぎ扉まで向かう。


「ジプソフィーラ様!!我が女神よ!!」

「・・・コルニオロ・・・」

「!!」


 地の底から轟くようなボクの声に、扉の向こうでビシッっと気おつけの姿勢をしている気配を感じる。


「いえすっ!ろりぃたのぉたっちっ!!」


 コルニオロの宣言にソフィー様ではなく、オルテンシア様が気持ち悪そうにしています・・・


「至急バルサミーナに連絡」

「はっ!」


 廊下で踵を打ち鳴らす音が響く。すぐに【伝達】スキルでコルニオロの声が聞こえてきた。


『バルサミーナ殿、そちらの状況は?』

『!!やっと連絡きた!すぐに救援にきて!侯爵軍が撃って出てきたわ!それと・・・』


 コルニオロが皆にも分かる様に復唱した。

 やっぱり!最初に北門に救援要請に向かった兵がいた。内と外から挟み撃ちにされると思った北門の責任者は、外を突破して”魔の森”を抜けるつもりなんだろう。


『無理に迎撃しないで!逃げる者は追う必要はないから!すぐに応援に行く!』


 ソフィー様とオルテンシア様の護衛は女性のルカ君に頼むとして、アレクとクリザンテーモの率いる影は館の警護に残ってもらおう。今すぐ動ける者はボクとプルーニャにコルニオロか。


「本当ですか!?・・・」


 ん?廊下からコルニオロの驚愕の声が漏れ聞こえた。


「どうしたの?バルサミーナから何か?」


 ボクは扉を開けコルニオロに声をかけると、コルニオロがゆっくりとボクを見て報告した。その顔からは血の気が失せて青白い蝋燭のようだった。


「コカトリスの・・・調教が、解けたそうです・・・」


 なんだってっ!?

 コカトリスはA級の魔物だ。その視線には石化の効果があり強力な毒息まで吐く。隠れる場所がなければ対処は不可能とまで言われている。ボクの魔法でも爆発は射程が届かず、雷撃は威力が足りない・・・石化されて終わりだ・・・

 デーア姉さんやディオたちではコカトリスに勝てない。うまく逃げてくれることを祈るしかない。

 今、侯爵兵が”魔の森”入り口のコカトリスの所へ向かったら・・・全滅する。

 侯爵兵にはナターレを襲ったのは魔物だと報告してもらわないといけない。なんとしても生きて王都に逃がさないと・・・


「コルニオロ!今すぐデーア姉さんに連絡・・・!」


 そうだった、コルニオロはデーア姉さんはおろか、残りの二人にも会っていない。【伝達】スキルは会ったことのない者には使えない・・・


 ボクは部屋に戻り、何か聞きたそうにしているソフィー様の前を通り過ぎ、窓から顔を出しクリザンテーモを呼んだ。


「クリザンテーモ!トンマーゾはいるかい!?至急デーア姉さんに連絡を!!」


 トンマーゾは【念話】スキルを持っている影の一人だ。クリザンテーモはこちらを見て、


「トンマーゾは戦死したよ・・・」


 なんてこった、手詰まりだ・・・連絡を取る方法がない・・・ここから”魔の森”までは馬車で半日。間に合わない・・・


 ボクが飛んで知らせるにも2時間はかかるだろう・・・でも、行くしかない!


「ソフィー様!緊急事態です!」


 ナターレから侯爵兵を追い出したばかりで、今度は侯爵兵を守る為に動かないといけないだなんて!

 ん?ソフィー様?ベットの上のオルテンシア様とソフィー様が向かい合って・・・


「すみませんこんな状況で使うなんて」

「いいえ、せっかくわたしの為に育てていただいたスキルです。お役に立ちましょう」


 これは?まさかあのスキルを今使うのですか?

 元々オルテンシア様の”修理”が出来るすきるを育てるのが「迷宮」に入った目的だった。レベルが140になり目的は果たした。

 ここでオルテンシア様が、A級冒険者だった頃の力を取り戻せたら、コカトリスもどうにかできるかもしれない。


カシュッ


 微かな音がしてオルテンシア様が耳の後ろから小さな板のようなものを取り出した。


「ソフィー様これを。おそらく記憶も消えると思いますので後で渡してください。これにすべての記憶が入っていますので」

「はい。ではいきますね!」


 ソフィー様は板を受け取ると大事に握りしめ、大きく息を吸いゆっくりと吐く。大きく息を吸い・・・


(しだ)よ戻れ!我が求めるその時に!【(トルナ・)(インディエ)(トロ・ネル)(・テンポ)6】!」


 その瞬間、ソフィー様の身体からオーラのようなものがごっそり抜け落ち、オルテンシア様の身体に吸い込まれていった。


「くぅっ・・・お願い元に戻って!!」

 

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