51話:別動隊
「ふぅ~お腹いっぱいニャ~」
やっぱりこのお店は正解だったニャ!お刺身サイコー!ブリ大根のホクホク感!サーモンのカルパッチョでさっぱりして、トドメのクエの煮物!!煮汁を吸ったトロットロのクエの身の蕩けるようなうまみ!!明日もまた食べたいニャ~♪
「ごちそーさまニャ~コレお代ニャ」
影にもお給料は出るからお金はそれにゃりに持ってるんだけど、家に帰らにゃいとにゃいので、「迷宮」で手に入った金貨で支払いをするニャ。
「えっ!?き、金貨!すいやせん・・・お釣りが用意・・・」
「お釣りはいらにゃいニャ~」
「いや、これではさすがに貰いすぎで・・・」
そんにゃに多いのかニャ?町で買い物をすることがにゃいので相場がよくわからにゃいニャ。衣食住はジニア様が用意してくれるしニャ~。貰いすぎと言うくらいにゃら10人分のお酒代くらいにはにゃるかニャ。
「そうだニャ~・・・それじゃここにいるみんにゃにお酒1杯ごちそうしてあげてニャ。おいしかったニャ♪」
わたしはお店の出口に向かいにゃがら手をヒラヒラさせてお礼を言ったニャ。お店のあちこちから歓声があがる。
「おお!ありがとよ姐さん!」
「ごちになるぜ!」
「あ、ありがとうございます」
「みんな!姐ニャさんに乾杯だっ!」
「「「「「かんぱ~いっ!!!」」」」」
気のいい奴らがいっぱいいて、こっちも楽しくにゃってローブのお尻の部分が不自然に動いちゃったニャ。一人以外気づかにゃかったみたいだけどニャ。
「にゃんか忘れてる気がするけどにゃんだったかニャ~?ま、いっか。久々に部屋に帰って寝るかニャ~♪」
わたしは軽くスキップをしにゃがら宿屋の自室に帰るニャ。そこはジニア様が隠れ蓑で経営している宿屋で一般人はお断り、住んでいるのは全員影たちニャ。
「お金持ちですね~・・・”猫人族”ですか・・・しかもお強い・・・間違いなくA級ですね。ナターレにA級冒険者はいないらしいですけど、他領の人でしょうか?」
小柄な”猫人族”の女の子は一見子供のように見えますが、わたしは騙されませんよ!!・・・あれは、すでにおばさんです・・・残念ですね・・・
昼に見た女の子も相当強かったですが、同じくらいですかね・・・遠くでよくわかりませんでしたがあの子も人間ではなかったような・・・
この大陸には人語を解するものは人間しかいません。1日に2人も人族以外を見るなんて・・・珍しい日もあるものですね~
おごってもらったお酒を飲み干すと少しくらっとしました。吞み過ぎましたか・・・
おっと、わたしの自己紹介がまだでしたね。
わたしはコルニオロ・ダ・フィオーレ名誉男爵。財務大臣であるリカルド・ネル・リッチ侯爵の寄子です。
寄子とは親である大貴族の庇護下にある、ま~木っ端貴族のことです。
木っ端貴族なので親であるリカルド・ネル・リッチ侯爵には逆らえません。その息子であるフラヴィオ・ネル・リッチ伯爵にも・・・
よりにもよって侯爵の息子が自ら出張ってくるとは・・・
奴はかわいらしいジプソフィーラ嬢を毒牙にかけようとするゴミです。
わたしならジプソフィーラ嬢を渡すくらいならナターレなど奴にくれてやるものを・・・パパーヴェロ殿はどうするおつもりなのか?
おっと、ゴミのことを考えていたら酔いが醒めてしまいました。
「仕方ない、募集は出したけど冒険者が集まらなかったと報告するしかないですね・・・さすがに一人で行けとは言わないでしょう」
わたしも帰って寝ましょう。財布から必死に集めた小銭でなんとか支払いを済ませると、軍の仮の宿舎になっているナターレ領主の別館に戻るのでした。
「近くに魔物はいませんかね~?ね~」
ジプソフィーラ様はこんなお方だったか?・・・ソファーに座ったジプソフィーラ様を後ろから見つめる。
「迷宮」から帰ってこられたジプソフィーラ様は熟練の冒険者の余裕というのか、貴族らしからぬ発言がちらほら漏れている。
以前から12歳とは思えない「狡猾さ」のようなものはあったが、過度な我が儘を言うわけでもなく年相応ではあった。
館中いぶされ影たちが退避するはめや、カラスを追いかけて魔物の森に入るなどの無茶はあったが・・・
それが「迷宮」から戻ってみると世界の心理にでも触れたのか、何か悟ったかのような・・・よく言えば神秘的な・・・悪く言えば敵には容赦のない現実主義者のような変化がみられる。以前のジプソフィーラ様なら「かわいい服が着たい!」と騒いでいるだろう。
昨日ニンフェアが行った作戦で、村の救出と侯爵軍の敗走を成功させ、それがゴブリンを利用したことが大きく作用したと理解すると、2匹目のドジョウを狙うべく魔物を探している。
「そうですクリザンテーモ・・・さん」
ソファーに座ったままのジプソフィーラ様が、後ろに立つわたしを振り返って小首を傾げた。
「クリザンテーモで結構ですよジプソフィーラ様」
軽く頭を下げて「さん」付けはいらないと申し上げた。
「ニンフェアたちには問題ないのですけど、皆がいない場所でお父様より年上の方を呼び捨てにするのは、少し抵抗がありますね」
そうかと思えば年相応なことを言う。面白いお方だ。
「ジプソフィーラ様の良いように」
「ではクリザンテーモさん、影の方の中で「索敵系」のスキルを得た方はいらっしゃらなかったかしら?」
「ジプソフィーラ様こちらを」
数枚の紙を束ねた簡易報告書を手渡す。
「これは?」
「ジプソフィーラ様の情報操作で皆が取得した恩・・・”スキル”一覧です。残念ながら「索敵」という”スキル”を得た者はいませんが・・・」
パラパラと紙をめくっていたジプソフィーラ様の動きが止まった。
「この方の熱感知というのは?」
ジプソフィーラ様が一枚の紙をわたしに見せた。裏の影であるグラディオロ小隊長の能力表だ。
「人間や動物には体温がありますがそれを感じ取れる”スキル”のようです。木の後ろや岩の影に隠れていても熱で視えるとか」
「あ~そんな方がいましたね。どの程度の距離を視れるのでしょうか?」
パチンと小さな音を立てて両手を胸の前で打ち合わせ、思い出しましたと呟かれた。
「障害物関係なく視えるらしいですので、視力の範囲かと」
「索敵の代わりになりそうですね。魔物も体温がありますよね?」
ニヤリとしながら上目遣いでわたしを見る。悪いことを考えておられる目だ・・・
「ええ・・・」
それからジプソフィーラ様はしばらく”スキル”一覧を精査して、ぶつぶつと独り言を言いながら影を4名選んだ。
「この方とこの方にあとこの方。先ほどのグラディオロさんと合わせて呼んでいただけるかしら?」
「かしこまりました」
しばらくして4名の影がジプソフィーラ様の前に並んだ。
【熱感知2】を持つ者、【拘束3】を持つ者、【魔物調教2】を持つ者、最後に【回復3】を持つ者だ。
ジプソフィーラ様は皆に作戦を伝え、
「こんな時間から申し訳ありませんがお願いいたしますね」
「「「「かしこまりました」」」~」
一人間延びした返事をするオルキデーアをギロリと睨む。
するとオルキデーアは悪びれもせずペロリと舌を出して肩をすくめる。優秀だがこの性格だけは矯正できなかった・・・ジプソフィーラ様は気にしておられないが・・・
「ああ、そうです。晩御飯は食べてから行ってくださいね。食事は大切ですから」
「は?・・・「「「はっ!」」」はい~」
この笑顔は反則だな。わたしには孫の笑顔に見えるが、若い4人にはやる気を起こさせるに足る笑顔のようだ。4人とも笑顔で部屋を退出した。
しかし、あのような作戦でうまくいくのだろうか?楽しみにしておくことにしよう。




