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リセット

「あ、あの…」


「なにかしら?」


「聞き間違いじゃなければ、私のこと大嫌いって言った…?」


「ええ。言ったわ。あたしはあんたのことが大嫌い」


やっぱり聞き間違いじゃなかった。


たしかに初期設定で、大好きになるようにしたのに。


なぜか彼女は、はっきりと私のことが大嫌いと言った。


昔の嫌な思い出が甦り、泣きそうになる。


私はなんとか堪え、怖いけどどうしても気になった為、その理由を尋ねようとする。


「それは…」


どうして…?そう言いかけた瞬間、スマホから着信音が鳴る。


画面には、お母さんと表示が。


私は彼女に質問をするのを一旦やめると電話に出ることに。


「なるー!久しぶりー!元気してたー?」


「うん。元気だよ。」


「んー?なんだか元気ない?」


「ううん。元気だよ!ちょっと寝不足だっただけ!」


私はお母さんに心配させまいと、明るく振る舞う。


「そう?ならいいんだけど。あ、それでメールで連絡もらってた件なんだけど…」


エラーで起動出来なかった件のことだ。


「あ、それなんだけど。用事済ませて部屋に戻ったら、起動してたんだよね。」


「あら!それならよかったわ!」


「ただ…問題があって…」


「うん?どうしたの?」


「なんか設定した内容と違うんだよね。」


「というと?」


私はお母さんに、性格や口調が違うことを説明する。


大嫌いだと言われたことはあえて隠して。


昔あることが原因で、お母さんにすごく心配させてしまったことがあったから。


「んー。バグが発生しちゃったのかしら…。」


「バグ?」


「うん。自我を持たせる様にしたのがいけなかったのかも…。こっちでテストした時は問題なかったのだけど…」


お母さんはそう言い、少し考えると私に提案をする。


「それだったら、リセットを試してみる…?」


「リセット?」


私がそう口にした瞬間だった。


春風ゆめが、身体をビクッとさせると、少し震えているようだった。


どうしたんだろ?と思いながらもお母さんと話を続ける。


「ええ。タブレットから操作することでできるわ。」


「そんなことできるんだ…。」


私がお母さんにそう話した時だった。


「リセットなんて、そんなの嫌よ!」


そう叫びながら、彼女が部屋から飛び出してしまう。


え?


私は、急なことで呆然としていた。


「なる?どうしたの?」


お母さんの声で我に返ると、今の出来事を伝える。


「まぁ…そうなるわよねぇ…」


お母さんはそう言うと、考えているのか黙り込んでしまう。


私は一つの疑問が浮かび上がり、お母さんに質問する。


「ねぇお母さん。リセットすることでどうなるの?」



……


………


お母さんが詳しく教えてくれた。


リセットとはつまり現在、構成された人格を、自我を持ち生まれたばかりの、春風ゆめという存在を消すということを。


彼女の様子を見て、薄々はそうなんじゃないかと思ってたけど、やっぱりそうなんだ。


私はリセットの詳しい話を聞き終わると、部屋から飛び出して行った彼女を追いかけようとする。


その時、お姉ちゃんが部屋へとやってきた。


「なるぅ。今すごくかわいい子が急いで外に出ていったけどどうしたのぉ?」


どうやら彼女は、家から出て行ってしまっているようだった。


「お姉ちゃん!その子どっちの方に行ったかわかる!?」


「うーん。突然だったから、びっくりしちゃってわからないなぁ…。」


うぅ…。


どうやって探そう…。


私は闇雲に探しても見つけられないと思い、なにか良い案がないか考える。


すると、まだ通話中だったお母さんに呼ばれる。


「おーい!なるー!聞こえるー?」


「うん!聞こえてるよ!お母さん!」


「よかった。あの子を探すなら、起動させるときに使ったタブレットを使うといいわ。あの子に内蔵されたGPSで位置がわかるから。」


「お母さんナイス!これで見つけられるよ!」


「どういたしまして!あの子のことお願いね。」


「んー?なんだかよくわからないけど、なるがんばれぇ!」


「うん!行ってきます!」


私はタブレットで居場所を確認すると、さっそくその場所へ向かう。


彼女は近くの公園にいるようで、すぐに追いつくことができた。


ベンチに座っているところを発見すると、彼女に近づく。


私に気づくと怯える彼女。


「い、嫌…。リセットは…嫌なの…。」


そう言い逃げ出そうとするけど、私が持つタブレットを見て、逃げ切れないことを悟った彼女は諦めその場に留まる。


私は彼女の横に座る。


彼女がすごく震えているのがわかる。


まずは安心させてあげないと。


「リセットなんてしないよ。」


「嘘よ!リセットするために追ってきたんでしょ!」


「ううん。絶対にしない。」


「信じられないわ!」


「だったら、これはあなたに預けるね。」


そう言い私は彼女にタブレットを差し出す。


「え…。」


「これがないとリセットできないでしょ?だからこれはあなたが持ってて。」


私の行動に、戸惑いながらもタブレット受け取る彼女。


安心したのか震えが収まってくる。


「これでリセットしに来たんじゃないって信じてくれた?」


「え、ええ…。」


「それじゃあ、少しお話しよ。」


「話ってなにを…。」


私は、ずっと気になっていたことを、今度こそ聞く。


「あなたは…どうして私のことが大嫌いなの?」


「それは…」


「それは?」


「あんたが初期設定の好感度を大好きにしたからだと思う。」


「え…?」



彼女は詳しく理由を説明してくれる。


「あたしは自我を持った時からずっと相手のことをちゃんと知ってから好きになりたいと願ってたの。」


「だから、あんたが初期好感度を大好きって設定した時、起動したくないと必死に抵抗した。」


だからあの時エラーが発生してたんだ。


「きっとそれが原因でバグが発生して本来設定した大好きという気持ちと性格とかまで変わったと思う。」


「そうだったんだね…。」


彼女の話を聞き、私のせいで苦しめちゃったんだなと思う。


「あたしもあんたに聞きたいんだけど。」


「うん?なに?」


「あんたはなんで、大好きになるように設定したの?」


「私は…最初から大好きになってもらえれば、昔みたいな思いしないで恋ができるかなって。」


「昔みたいな思い?」


「うん…。小学生の時に仲良くなった子がいたんだけど。気づいたらその子のことが一人の女の子として大好きになってて、思い切って気持ちを伝えたの。そしたら、女の子同士なのに気持ち悪い。大嫌いって拒絶されて、話もしてくれなくなって。」


思い出したら泣けてきた。


「あんたよくそんな思いしたのに、また恋がしたいって思えるようになったわね。」


「それは美少女ゲームがあったからだよ!プレイしている内に私もこんな恋がしたいなってまた思えたんだ!登場する女の子達も素敵な子達でね!どんな子かっていうと…」


「わ、わかったから!その先はまた今度聞かせてもらうわ!」


私が続きを話そうとすると彼女に止められる。


彼女はなにかを考えているみたいだった。


そして、なにかを決意すると口を開く。


「うん。決めた。あたしのことリセットして。」


「え?」


「あたしのは、ただのわがままだし。それに元々相手の理想を叶えるための人形なんだし…。だから、リセットして。」


そう言い彼女は悲しそうな表情をする。


「やだ。」


「な、なんで…。」


「今のあなたのままでいて。私は今のあなたがいい。」


「で、でもあんたの理想の子じゃないのよ!?」


「いいよ。あなたを消してまで理想の子と恋愛したいと思わないもん」


「そ、それにあんたのこと大嫌いのままなのよ!?」


「んー…それは悲しいけど…。それなら、これから少しずつでも仲良くなっていけばいいんだよ!」


そう。


大嫌いだと言われても。


辛い思い出の時と違って、話すことができるんだから。


「恋とか抜きにして、まずは私と友達になってよ!」


「あ、あんた馬鹿なんじゃないの!?あたしは自我があるといっても、ただの人形なのよ…。それなのに…。」


「ちがうよ。」


「え…」


「あなたはただの人形なんかじゃないよ。人間と変わらない、恋がしたいと願う、素敵な女の子だと私は思う。だから…」


私は心の底から思ったことを、ちゃんと気持ちが伝わるように。


「これからあなたのこと、もっと知っていきたい。私のこと、知ってもらいたい。」


しっかりと彼女の目を見て、真剣に伝える。


「私と友達になって!」


彼女は私から顔を背ける。


だけど、すぐに戻すと私の目を見て


「し、しょうがないわね。友達になってあげるわよ。」


恥ずかしそうに答えてくれる。


私は彼女の返事が嬉しくて、笑顔になる。


私を見て彼女も微笑む。


そんな時だった。




ピコン


突然タブレットから通知音が鳴る。


なにかと思い画面を確認すると…


おめでとうございます!


春風ゆめの好感度が上がりました!


と、表示されていた。


「えっ?」「あっ…。」


二人同時に反応する。


「これって…」


「ちがうわ。」


「でも…」


「うるさい!」


「えー!」


私はぶーぶーと怒ったフリをする。


そんな中、彼女は私に聞こえないように「ありがと。なる。」なにかを小さく呟く。


「ん?今なんて…」


「あ、あんたのこと嫌いって言ったの!嫌い嫌い嫌い!」


「うぅ…。そんなに嫌いって連呼しないでよ…。」


「し、しらない!」


彼女が恥ずかしそうな顔をし、そっぽを向く。


「あー!照れてるー!かわいいー!」


「て、照れてないし!かわいくない!」


「えー!かわいいよー!」


「う、うるさい!このバカ!」


「あー!ひどいー!」


二人でしばらくこんなやりとりをしていると


「これ、返すわね。」


彼女はタブレットを私に差し出す。


「いいの?」


「ええ。もうあたしが持つ必要はないから。」


「そっか。なら、受け取るね!」


タブレットを受け取り、ベンチから立ち上がると


「これからよろしくね!ゆめ!」


笑顔で彼女へと手を差し出す。


彼女は私の手を取ると立ち上がり


「こちらこそよろしく。なる。」


微笑み返してくれる。


そして、二人並んで家へと帰る。




こうして、私に新しい友達が出来た。


これが恋に発展するか、私にはまだわからないけど。


だけど、今は嬉しくて幸せな気持ちで満たされていた。





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