出会い
「ん…んんっ…もう朝…か…」
カーテンの隙間から差す、朝日で目を覚ます。
昨夜も美少女ゲームに熱中し、夜更かしをしていた為、まだ眠気が残る。
あと5分だけと、二度寝をしようとした時だった。
「なぁるぅ!朝だよぉ!起きてぇ!」
ドアの向こう側から声がする。
私は眠気に勝てずに返事をせず、もう一度眠りにつこうとしたのだけど、声の主がドアを開け部屋の中に入ってくると、声の主がゆっくりと近づきながら「まだ寝てるのかなぁ?」と、今度は小声で話しかけてくる。
「うぅ…あと5分だけ寝かせてぇ…」
私は声の主にそう伝えると、今度こそ眠りにつく。
はずだったのだけど…。
「もぉー。それじゃあこうするからぁ。」
声の主は、私が寝ている横からぎゅっと抱きしめながら、耳元でそう囁いた。
これじゃあ、とても二度寝出来そうにない。
「やーめーてー。起きるからー。はーなーしーてー。」
私はなんとか抜け出すと、観念して起きることにした。
「あーあー。もう少し抱きついていたかったのになぁ…。」
声の主はすごく残念そうにしている。
「もー!そういうのやめてって言ってるじゃん!お姉ちゃん!」
声の主は私の姉で、正真正銘の血の繋がった実姉で、名前は笹川もえ。
おっとりした性格ですごく優しく、私と違ってしっかり者である。
…若干シスコンなところがあるけど…。
「なんでぇ。なるの大好きな美少女ゲームでもこういうのあるでしょぉ。」
「いつも言ってるでしょ!現実とゲームを一緒にしちゃだめ!」
そう。
現実とゲームを一緒にしてはいけないのだ。
「それじゃあ着替えるから、お姉ちゃん外に出てて!」
「はぁい…。」
姉がしょんぼりしながら外に出ようとする。
「あ、お姉ちゃん!」
「うん?どしたのぉ?」
「いつも起こしてくれてありがとね!」
「うん!どういたしましてぇ!リビングで待ってるね!」
私の言葉を聞いて、姉は嬉しそうに部屋を後にする。
いつも夜更かしして、寝坊しそうになる私を起こしてくれる姉には、本当に感謝しているのでたまにはきちんと伝えないと。
「さて、早く着替えちゃお。」
私はすぐに準備をすると、姉が待つリビングへと向かう。
リビングに着くと、テーブルには姉が準備してくれた朝食が並んでいた。
姉に準備が済んだことを伝えると、二人で席に着き朝食を取る。
「あ、そうだぁ」
「ん?お姉ちゃんどしたの?」
朝食を取っている最中、姉が何かを思い出した様に話し始める。
「今日お母さんから、なる宛に荷物が届くらしいから寄り道せずに帰ってきてねぇ。」
「そうなの?」
「うん。今朝連絡があって、なるに伝えておいてってぇ。」
「んー。わかった。とりあえず真っ直ぐ帰ってくるね!」
「うん!荷物はお姉ちゃんが受け取っておくねぇ。」
「ありがと!」
姉にお礼を伝えると、朝食を済ませ学校へと向かう。
学校へと向かう途中考える。
お母さんからの荷物ってなんだろ。
もしかして、新作の美少女ゲームかな!!!
お母さんは美少女ゲーム開発の会社で働いていて、私が美少女ゲームにハマるきっかけでもあった。
現在ハマっているゲームも、お母さんの働いている会社制作で、テストプレイを兼ねて、やらせてくれている。
内容は女の子達との恋愛をVRで体験出来るもので、昨夜も寝る間を惜しんでプレイしていた。
これは放課後が楽しみになってきたぁ!
私はそう考えると、いつのまにかニヤニヤしながら立ち止まっていたことに気づき、だれかに見られていないか確認をする。
幸い周りに人はいなく、安心すると足速に学校へと再び向かった。
教室の自分の席へと着くと、前の席に座っていた一人の女の子が、元気良く笑顔で挨拶をしてくる。
「なるちゃんおはよー!」
彼女の名前は、間下みや(ました みや)。
中学からの付き合いで、私の唯一の大切な友達である。
「みやちゃんおはよ!」
私も挨拶を返すと、朝のHRまでまだ時間があったので雑談をする。
私は寝不足のせいか、小さくあくびをする。
「あー。なるちゃんまた夜更かししたでしょー!」
「うん…。ゲームに夢中になっちゃって。」
「相変わらずだねぇ!」
そう言い楽しそうにみやちゃんが笑う。
「今回のはいつも以上にすごいんだよ!みやちゃんにもやってほしいくらいだよ!」
「んー。私はなるちゃんの話聞くだけで楽しいからいいや!」
「そっかぁ…。残念。」
「ごめんね!それよりもっと、なるちゃんのお話聞かせて!」
「うん!今回のゲームはね…」
昨夜夢中になっていたゲームの内容について一通り話す。
みやちゃんは最後まで楽しそうに話を聞いてくれていた。
いつも私の美少女ゲームの話を引いたりせず、ちゃんと聞いてくれるみやちゃんには感謝だ。
「はー…。こんな恋愛が現実でも出来たらよかったんだけどなぁ…。現実はそんな上手くいかないよね。」
一通り話終えると、みやちゃんについつい愚痴をこぼしてしまう。
「あはは。まずは相手を見つけないとだね!」
「そこが問題なんだよね…。ゲームみたいに出会えたらなぁ…。そもそも女の子同士って時点で難しいよね…。うぅ…。」
昔のことを少し思い出し、なんだか落ち込んできた。
そんな私を見て、みやちゃんは少し考えると口を開く。
「それなら…わたしと…」 キーンコーンカーンコーン
みやちゃんが、なにかを言いかけたと同時にHR開始の予鈴が鳴った。
「ん?みやちゃん今なんて言ったの?」
私はよく聞き取れなかった為、聞き返す。
「う、ううん!なんでもないよ!あ!準備しないと!」
みやちゃんはそう言うと、慌てて前を向いてしまう。
んー?どうしたんだろ?
私は少し気になったけど、深く考えずに準備を始める。
それからは、いつも通り過ごすと放課後になった。
私はみやちゃんと一緒に帰り、途中で別れると急いで家へと帰る。
「ただいまー。って、え…なにこれ…。」
家に着き、玄関のドアを開けると大きな荷物が置かれていた。
朝、姉が言っていた荷物はこれのことかなと考えていると、リビングにいた姉が出迎えてくれる。
「なるおかえりぃ。狭くてごめんねぇ。お姉ちゃん一人じゃ運べなくてぇ。」
たしかに、荷物は人一人簡単に入れるくらいの大きさで重さもなかなかだった。
なんとか二人がかりで私の部屋へと荷物を運ぶと、姉は夕飯の支度があるためキッチンへと向かった。
「新作ゲームかと思ったけど…それにしては大きすぎるし…」
私はこのまま考えていても仕方ないと思い、開封することにした。
中に入っていたものは…
大きいケースと、その中には等身大の人形が。
造形がすごくリアルで、まるで人間が目を開けたまま寝ている様だった。
ケースの蓋を開けて触ってみると、本物の人間の肌と同じ感触で驚く。
そして、なによりも綺麗な顔立ちで見とれてしまっていた。
しばらく見とれていると我に返り、他にはなにかないか探す。
するとケースの隅にタブレットが一台と母からの手紙が添えられていた。
まずは母からの手紙を読むことにする。
なる へ
どう?驚いたでしょー!
実はお母さんが働いている会社で、新しいゲームを開発したの!
今度はVRと違って、AIを搭載した人形とリアルに恋愛体験が出来る様にって!
それでまた、なるにテストプレイをお願いしたいの!
まだテスト段階だから好みの姿とかは選べないけど、一応なるに今テストプレイしてもらってるゲームで、お気に入りだって言っていた子の姿を参考にしてるからね!
あとは詳しくは一緒に送ったタブレットを起動してね!
それじゃあ、また連絡するからその時に感想とか聞かせてね!
母より
なるほどね。
うん。
また素晴らしい物を開発してしまったんですねお母様。
私はあなたの娘で本当によかった!
まさか諦めていた現実での恋愛が出来るなんて思ってもいなかった私は、テンションがおかしいことになりつつも早速タブレットを起動する。
すると、一つのソフトが起動し、音声と文字による説明が始まる。
ようこそ!リアル恋愛体験ゲーム(仮)へ!
このゲームはあなた好みの女の子と、リアルで恋愛を体験することができ、女の子は本物の人間の様に自我を持ち、行動します!
尚、困った時の便利機能なども、ございますのでご安心を!
たくさんの体験をして、素敵な日々をお過ごしください!
それでは、この後表示されます各項目に入力し、あなた好みの女の子を設定をお願いします!
項目1 性格
項目2 口調
項目3 初期好感度
項目4 あなたの名前
項目5 あなたの呼び方
項目6 本体の名前
各項目を選んだら決定を押してください
私は音声が終わると、タブレットに表示された項目にそれぞれ入力していく。
性格は、優しくて、大人しい。
口調は、やっぱり優しい口調で。
初期好感度は…大好き!最大で!
私の名前は、笹川なる
呼び方は、あなた、なるちゃん。
この子の名前は…ゲームのあの子と同じで、春風ゆめ
設定を入力し終えると決定を押す。
するとタブレットにデータ送信中の文字とゲージが表示される。
そして、あと少しで完了するところで音声が流れる。
ー エラーが発生しました。もう一度やり直してください。 ー
あ、あれ…?
とりあえず言われた通り、もう一度設定をして決定する。
ー エラーが発生しました。もう一度やり直してください。 ー
んんんん?どゆこと?
その後、何回か繰り返したけど、やっぱり同じだった。
「えぇぇ…どうしてー…」
素人の私に、解決する方法がわかるはずもなく、母へと連絡をする。
忙しいかもしれないのでメールで。
送信し終わると、期待で興奮していた気持ちも、がっかりに変わっていた。
あーあ…。
まぁ、テスト段階だって言ってたし、しょうがないよね…。
ご飯とお風呂済ませてこよ…。
その後、お姉ちゃんに説明をして、ご飯とお風呂を済ませて部屋へと戻った。
…のだけど。
「えっ…?」
部屋のドアを開けた瞬間驚く。
先ほどまでケースの中で動かなかった人形が、ベッドの上に座っていたのである。
え?なんで?エラーで動かないはずじゃ…。
それより動いてる姿も…かわいい…。
じゃなくて!
あまりに、突然で考えがまとまらないでいた。
動揺している私をよそに、彼女が口を開く。
「あんたが、笹川なる?」
「そ、そうだけど…」
「ふーん。あんたがねぇ。」
そう言いながら彼女は、私の全身を見回す。
「あたし伝えないといけないことがあるの」
「な、なに…?」
「あたし、あんたのこと…」
そう言い彼女は真剣な顔をすると、私の顔をじっと見つめる。
私は一瞬ドキッとしてしまう。
そして彼女から放たれた言葉は…
「大嫌いだから」
冷たくそう言い放つと、フンッとそっぽを向く彼女。
…
……
え?
今…大嫌いって言われた…?
っていうか設定した内容と全然違くない…?
あまりに突然のことで、理解出来ないでいる私。
これが春風ゆめとの最悪な出会いのお話である。




