3.追憶 青空の下
「あ‥‥‥。」
そこに居たのは清水だった。清水は昔と変わらぬその背中を向け、晴れ渡る青空を眺めていた。が、僕が思わず漏らした声で清水は僕に気付いた。
清水は最初、驚いた表情をしていたが、やがていつもの明るい笑顔になり僕に声をかけてきた。
「やあ。最近見なかったね。元気?」
一応、と答えようとして、僕は首をかしげた。アレ?最近??おかしい、随分長い間顔合わせてないと思ってたのに‥‥‥。僕は時間の感覚まで他人とズレる程バカになってしまったのだろうか???いやいや、いくらなんでもそれはない。
などと自分の頭の中で意味のない考えをしているうちに、清水が、
「ねぇー聞いてる?」
と、先程よりも大きな声で話しかけてきた。
「い、一応、元気。」
慌ててしまい、ぎこちない返事をしてしまった。
すると清水はイキナリ近づいてきて、僕の顔をじっと見つめた。その距離、推定15センチ以下。
ちょっと!顔近いよ、顔!!ちなみに清水はなかなか整った顔立ちて綺麗だ。心拍数が一気に跳ね上がった。多感な男子高校生ですから。
脳内がパニックを起こしていると、沈んだ表情の清水が、
「嘘!疲れた顔、してるよ‥‥‥。」
と、まるで消えてしまいそうな細い声で言った。
何故か、咎められるように清水の言葉が心に刺さった。急に、清水に対して申し訳ない気持ちになった。
しかしそんな僕の思いは、直後の清水の発した言葉によって、無常にも打ち砕かれた。
「現役高校生たるもの、元気がなくちゃダメだよ!!!元気があれば何でもできる!!!!!!!!」
‥‥‥‥‥‥‥はい?
清水のえっらいテンションの上がりように、僕は何が何だかわからずにいた。
「落ち込むな!!!明日がある!!!!!青年よ、気力をだせー!!!!!!!!!!」
清水は右手の人差し指をビシッと伸ばして僕に向けた。明らかに僕の返事を期待している。
「わ‥わかりました‥‥‥。」
「元気が足りなーい!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
またか。
その後清水の
「熱血スパルタ元気法(通販)」を無理矢理伝授させられたりしたが、久しぶりに清水と会話を交わした事で気持ちが和らいだ。
僕は清水に、何故屋上にいるのかを聞いた。
「晴れた日の空を屋上で見るのが好きなの。」
清水は嬉しそうにそう言った。僕はその時初めて、清水は空を眺める事が好きなんだと知った。
「そういうナオトは?どーしてここに??」
そう聞かれて言葉が詰まった。悩んでいる事を、清水には話したくなかった。もし話してしまった場合、マズイ事になってしまうからだ。
「まあ‥‥気分、かな」
「ふーん‥気分、か‥‥‥。」そう呟いた清水の目はどこか遠くを見ているようにみえた。
「ん?どうかした?」
「ううん、なんでもないよ。それより、早く教室戻んなきゃ。授業に遅れちゃう!!!!!」
そう言うと清水は走っていき、屋上の出口へと消えていった。
「‥‥まだ30分以上時間あるんだけどな‥‥‥‥‥変な奴。」
僕は、ゆっくりと屋上の出口へ向かい、校舎の中に入って扉を閉めた。ガチャンっと大きな音を起てた扉の向こうでは、柔らかな風がいつまでも吹いていた。事故の一ヶ月前の出来事だった。




