表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/17

第12話 決闘の予感

 見学席にいたルカは、ずっと試合を見続けていた。

 だが、退屈さを感じなかったかと問われれば、そうでもない。


 ほとんどの試合は、似たような展開だった。

 騎士科の生徒が勢いよく突っ込み、魔術科の生徒が放つ魔術に吹き飛ばされるか、転倒するかして終わる。


 騎士科の多くは、魔術というものを間近で見るのが初めてだった。


 魔術科の生徒からの嘲笑に反発し、「見返してやる」と意気込んで試合に臨む者もいたが——結局、魔術の威力を思い知るだけの結果に終わる。


 中には魔術を避けようと試みた者もいた。だが距離を詰めきれず、次の魔術を喰らって敗れる。

 大体、そのどちらかだった。


 ルカが興味を示した試合は、まずはレイナードのものだった。


 相手は騎士科の中でもひときわ体格のいい生徒。だがその大きな体に似合わぬ速さで木剣を振るったのに対し、レイナードは冷ややかな目でその軌道を見切り、寸前で身を逸らすと、巨体が前のめりに崩れる瞬間を見逃さず、風の魔術を叩き込んだ。


 彼の詠唱は短い。入学式の時にも見たが、レイナードは“二節詠唱”で魔術を発動させる。

 ルカが学んだ魔術理論では通常、魔力を形にして放ち、呪文を唱え、具現化する。

 だからこそ、詠唱は重要であり、複雑だ。

 一般的には、五節詠唱から始まり、一ヶ月で四節、早い者で三節になる。

 魔術を行使できない者——ルカだけだが——と、五節詠唱のままの者は、合同訓練での試合には出られず、見学扱いとなる。


 ——五節では魔術師とは呼べん。ガレンの口癖だった。


 三節から二節への短縮は特に難しく、通常は早くても二年生の終わり頃に達する。

 それを入学の時点で成し遂げているレイナード。彼がどれほどの才能を持ち、それ以上の努力をしたか、ルカにも想像はついた。


 そしてもちろん、カイルの試合だ。

 カイルの相手は、細身ながらも鍛え上げられた肉体を持つ騎士科の生徒だった。だが、いくらその男が木剣を振るっても——縦に、横に、容赦なく——カイルに一度たりとも当たらない。


 観戦していた生徒たちからは、「真面目にやれ!」とヤジが飛んだ。

 相手はムキになって振り下ろし、薙ぎ払うが、カイルはそれらを軽やかに、ステップを踏むような動きで避け続ける。まるで遊んでいるかのようだった。


 だが、ルカには見えた。

 カイルのまとう魔力が、わずかに揺らぎ、流れていたのを。


 まるで、それが剣の動きを先読みし、わずかに身を引かせているかのようだった。


 剣が振るわれるたびに、その動きに呼応するように魔力の流れが変わり、カイルの身体は自然と剣の軌道を外れていた。

 明確な意思を持って、魔力がカイルの身体を導いているのだ。


 ついに疲れ果てた相手が膝をつきかけた瞬間、カイルはすっと踏み込み、右手の手刀を相手の首筋にコツンと当てた。


 そして、たった今行われたセリス・アストレイアの試合。

 盾も兜も身に付けず、動きやすい軽装の防具に身を包んだ騎士科の女子生徒。艶やかな黒の後ろ髪は、この時は高く結い上げられている。

 ルカは気づくのが遅れた——入学式で見た、あの後ろ姿の生徒であることに。


 その剣を見た瞬間、ルカは心を奪われた。

 二人との試合は、どちらも一瞬だった。一切の迷いなく、最小限の動き。

 ただ速いだけではない。すべての動きが洗練され、無駄がまるでない。何より、彼女は正確に読んでいた。魔術がどこから、どう来るのか。魔術が発現される前にもう動き出していた。


 ——これが、彼女の剣か……!


 あの二人が戦ったら、何が起こるのか。ルカには、想像もつかなかった。




 ◇




 セリスは手にした木剣をじっと見つめていた。

 やがて目を閉じ、静かに、深く息を吐く。

 目を開けると、まっすぐに前を見据えた。


 試合場の向こうから、赤い髪の少年が姿を現す。

 首を軽く回しながら歩くその姿には、余裕と自信がにじんでいた。


 ——カイル・クロウフェル。


 入学試験、序列一位。魔力計の針は振り切り、計測不能だったという。


 入学式の日。あの騒ぎは、セリスの耳にも届いていた。


 レイナード。魔術師を数多く輩出してきた名門シリウス家門。その中でも「魔術狂い」と呼ばれるヴァルティス伯爵家の三男。


 幼年学校とは別に、幼少期から魔術を叩き込まれた生粋の英才。

 それを、あっさり叩き伏せたのが、カイル・クロウフェルだったという。それも、無詠唱という規格外の魔術で。


 ——どれほどのものか、試してみたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ