感染拡大
『肥え太った豚どもよ。』
記事は、その一文から始まっていた。
読者を見下すような言葉。
それなのに、不思議と画面を閉じることができない。
続きを読み進めるたび、心臓がゆっくりと速くなる。
『お前たちは今日もスキを求め、スキを与え、数字を餌に生きている。』
『その醜い欲望が、私をここまで育てた。』
『だから礼を言おう。』
『今夜、お前たち全員を食べる。』
そこから先は、何も書かれていなかった。
記事は、それだけで終わっている。
それなのに、画面を閉じた読者たちは、次々と運営へ問い合わせを始めた。
「記事の続きが勝手に増えていくんです。」
「見るたびに文章が変わる。」
「私の名前が書かれていました。」
運営が確認しても、記事は変わらない。
最後の一文は、やはり――
『今夜、お前たち全員を食べる。』
ただ、それは運営の画面だけだった。
読者の画面には、それぞれ違う続きを読んでいた。
『○○、帰り道に後ろを振り返るな。』
『○○、押し入れを開けるな。』
『○○、午前三時三十三分に通知を見るな。』
どれも、その読者しか知らないはずの名前だった。
そして、その忠告を破った者から、連絡は途絶えた。
運営は記事を強制的に削除しようとした。
しかし、削除ボタンを押した瞬間、モニターが暗転する。
画面いっぱいに、血のように赤い文字が浮かび上がった。
『スキを押していないのに、どうして消せると思った?』
その日を境に、運営の管理画面には存在しないはずの項目が一つ増えた。
呪い 有効
誰も、その設定を変更することはできなかった。




