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NOTE  作者: 諏訪貴信


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22/43

あなたの呪い

誰かが呪いを広げた。


それを見た誰かが、また広げた。


「読んだら終わり」


その一言が、世界中を駆け巡った。


最初は数百人だった。


次に数千人。


数万人。


やがて、何百万人もの人間がその言葉を知ることになった。


そして奇妙なことが起き始めた。


呪いが強くなっていた。


記事を読むだけではない。


記事の存在を知っただけで、異変が起こるようになった。


「スキを押してはいけない。」


そう言われるほど、人々はスキのボタンを意識する。


押さない。


絶対に押さない。


そう思っているのに、画面を開くたびに、赤いハートが視界に入る。


まるでこちらを待っているように。


やがて、最初の被害者たちが変わり始めた。


彼らは恐怖を感じなくなった。


むしろ、誰かに読ませたくなった。


「一人で苦しむのは嫌だ。」


「みんなにも知ってほしい。」


「一緒に呪われれば怖くない。」


そんな言葉とともに、彼らは記事を拡散した。


それが、呪いをさらに強くした。


拡散されるたびに、記事の文章が増えていく。


最初は数百文字だった。


次の日には数千文字。


さらに翌日には、数万文字。


そこには、呪いに触れた人間たちの恐怖が書き込まれていた。


誰かの後悔。


誰かの嫉妬。


誰かの憎しみ。


誰かの罪悪感。


誰にも言えなかった悪意。


それらすべてが、記事の中に吸い込まれていく。


運営の主任は画面を見つめながら呟いた。


「人間の感情が……燃料になっている。」


記事の閲覧数が増える。


コメントが増える。


スキが増える。


そして、呪いが強くなる。


まるで巨大な生き物が、世界中から感情を吸い上げているようだった。


その頃には、もう誰も止めようとはしなかった。


止めようとする投稿さえ、呪いを広げてしまうからだ。


「拡散をやめてください!」


その投稿が拡散される。


「この記事を開かないで!」


その警告が拡散される。


「呪いなんて存在しません!」


その否定さえ、呪いの名前を広めることになる。


何をしても逆効果だった。


そして午前三時三十三分。


世界中の端末に、同じ通知が届いた。


『呪いの力が、第一段階を突破しました。』


続いて表示される。


『感染源:人間』


『感染経路:人間』


『増殖条件:恐怖』


最後の一文だけが、ゆっくりと表示された。


『あなたたちが恐れるほど、私は強くなる。』


主任は絶望した。


「……だから、最初からスキなんて必要なかったんだ。」


呪いを育てていたのは、スキでも記事でもなかった。


人間自身だった。


恐怖して。


疑って。


怒って。


誰かに伝えて。


そしてまた、誰かを恐怖させる。


その連鎖こそが、呪いだった。


そのとき、主任の画面に一つの数字が表示された。


呪力――100%


だが、その数字はそこで止まらなかった。


101%。


102%。


103%。


システムが警告を出す。


『上限値を超過しました。』


それでも数字は増え続ける。


そして世界中の画面に、最後のメッセージが現れた。


『ありがとう。』


『あなたたちが、ここまで育ててくれた。』


その瞬間。


世界中から、一斉に新しい記事が投稿された。


タイトルは、すべて同じだった。


『読んだら終わり。』


誰が投稿したのか。


もう誰にも分からなかった。


なぜなら――


投稿者の欄には、


「あなた」


と表示されていたからだ。

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