呪〈破Ⅰ〉
運営に一本の報告が飛び込んできた。
「呪いの記事が投稿されています。」
最初は悪質なデマだと思われていた。
しかし、その記事には他の記事とは明らかに違う特徴があった。
読者は皆、同じことを書き残していた。
『絶対にスキを押さないでください。』
『最後まで読んでも、スキだけは押してはいけない。』
『私は忠告しました。』
記事の内容は、ごく普通の日記のようなものだった。何の変哲もない文章が続いている。それなのに、なぜか読み終えた読者は強烈な衝動に駆られる。
――スキを押したくなるのだ。
まるで、記事のほうが読者を待っているかのように。
最初の被害者は、「ただの都市伝説だろ」と笑ってスキを押した。
その日を境に、彼のアカウントは更新されなくなった。
二人目は、「試しに押してみた」とコメントを残していた。翌日、彼のアカウントには見覚えのない記事が投稿されていた。
タイトルは、
『次はあなたです。』
そして三人目。
彼女は運営に最後のメッセージを送っている。
「お願いです。この記事を削除してください。」
「どうされましたか?」
「スキを押してから、毎日通知が届くんです。」
「どのような通知ですか?」
「誰もいないはずなのに、『あなたにスキを送りました』と。」
運営は調査に乗り出した。
しかし、その記事には投稿者の情報が一切存在しなかった。
作成日時は空欄。
アクセスログも存在しない。
そして最も不可解だったのは、その記事のスキの数だった。
「おかしい。」
「何がです?」
「スキを押したユーザーは、これまで確認されているだけで二百三十七人です。」
「それで?」
「記事のスキの数は、一です。」
会議室が静まり返る。
「残りの二百三十六のスキは、どこへ消えた?」
誰も答えられなかった。
その夜、運営の公式アカウントに一件の通知が届く。
『あなたへのおすすめ記事』
タイトルは、
『運営の皆様へ。絶対にスキを押さないでください。』
誰も開こうとしなかった。
しかし、通知の下には見覚えのない文字が表示されていた。
『まだ、誰も押していません。あなたが最初です。』




