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Act.? ハリーは危惧する

閑話です。短め。

 



 ローズシェット公爵令嬢がとても怪しい。

 何というか、怪しいんだけど公爵家の人に権力を振りかざして何もないだろ?文句ないよな?って言われたら僕みたいな伯爵家の人間なんて反論出来ない。



「それにしても余りにも怪しすぎるんだよね…絶対なんかあるでしょう…。」



 はっきり言うと、あの黒薔薇姫の噂っていうのはいつもいつもあまりいいものではなかった。

 勿論、とても酷いものだったとかそういうことではないんだけど…例えるなら、綺麗な薔薇には棘があるという言葉があるけど、その通りの人なのだと思ってた。

 凛と咲く黒薔薇の如き秀麗さがある中、纏う雰囲気は刺々しく、誰をも近寄らせない。正しく孤高の高嶺の花。そう、噂には聞いていた。


 さっき初めて間近で見て、その噂は正しかったんだと思った。

 あの漆黒の闇の如き髪と瞳は、見られるだけでも畏怖の念が込み上げるくらい。だけど同時に、彼女は僕の大切な幼馴染の友人なのだからと、覚悟も決められた。


 そうして意を決して助言した、のに。



「あんな真っ向から断るなんてな…まさに黒薔薇姫って感じだったし。」



 ハロルドとして生きて十五年、あそこまで露骨に反発されたのは初めての事だった。

 前世を合わせても、あんまりないかも。


 そう、僕には前世の記憶がある。前世は地球って星の日本という国で学生をしていた。僕は当時話題になったゲームならなんでもやったゲーマーで、この世界と瓜二つのゲーム『Silent Waltz』も勿論やった。

 とは言っても、さすがに乙女ゲームだし、男の僕が好き好んで死ぬほどやり込むなんてこともなく。軽く全ルート回収だけして終わった程度。

 だから細かいところまでは覚えてないんだけど、幼い頃紹介された幼馴染があのゲームのヒロインだって早々に気付いてからは、ある程度充実した日々を過ごしていた。


 のに。だ。


 あの日リナリーが急に僕の所へやってきた。別段用事があった訳でもないし、ストーリー的にあんなイベントはなかった、と思う。

 それにリナリーはフィルルートをひたすら突っ走っていたから、フィルが好きなんだと思うし、あのタイミングで僕に話をしに来る意味がわからなかった。


 そして暫くしてそれがどういう事なのか理解した。

 SWの隠しキャラであるザックが、クラスメイトとして留学してきた。本来は全ルート攻略後の要素だし、フィルルートをひた走っているリナリーが、どうしてザックを出せたのか。

 理由は簡単だった。

 彼女には協力者がいた。ゲームに置いてのライバルキャラ、ルシル=フォン=ローズシェットだ。最初二人が仲が良い友人だという噂を聞いた時は何の冗談かと思った。

 学園で、黒薔薇姫と会うまでのリナリーはちゃんと原作通りのリナリーだったし、聞こえてくるディリアスと黒薔薇姫の噂も原作通りだった。なのにも関わらず、リナリーと黒薔薇姫という二人がセットになった噂となると、二人は友人らしいという噂しか聞こえてこなかった。だから、リナリーが話を聞きに来たあの日、探りを入れる為にもその噂について訊ねたのに。


 結果はもう、惨敗。


 リナリーと黒薔薇姫はすごく仲の良い友人同士という、にわかには信じられない事実を叩きつけられた気分だった。そして、その事実は同時に、リナリーか黒薔薇姫かどちらかは僕と同じ転生者である可能性が高い。



「リナリー…は、そこまで原作から外れてはないと思うし、怪しいなら黒薔薇姫の方だよね。」



 自分のスタート地点である噴水近くまで来て、先程黒薔薇姫と話した方を見るが、噴水に塞がれて彼女の姿は見えない。

 とりあえず、さっきちらりと盗み見たルシルの地図で、ルートは大まかに把握した。僕のルートとかち合うのは原作通り、森の中だ。恐らくディリアスが用意させてたあれも森の中だろうし、なるべく早く森へ行こう。そして待ち伏せしてもう一度交渉すればいい。

 さすがにこんなストーリー序盤でライバルキャラが死ぬのは寝覚めが悪過ぎるからね。



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