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Act.42 新たな転生者

感想、評価、ブクマありがとうございます。


とても励みになっております。

 


「ハロルド、ローチェル…貴方も、転生者、なの?」

「そうだよ、リナリー。」

「そんな事、昔から何にも…!」

「まさか、言う訳ないよ。リナリーはずっとこちらの世界の人だと思ってたからね。」



 肩を竦めながらゆっくりとこちらに近づき、困ったように笑うその顔は、私達がよく知るハリーそのものなのだ。いや、外見だけなら私達だってそうだ。私は黒薔薇の君だし、リナリーはヒロインである。


 しかし、まさか攻略対象にも転生者がいたなんて、わかりっこない。

 それに、リナリーの様子を見るに、彼女は何も知らなかった。そしてハリーの言葉通りなら、彼は昔から前世の記憶があった、リナリーと同じタイプだ。



「…何故、今になって言ったの?」

「え?あー、ごめん、そんな警戒しないでほしい。」



 バツが悪そうに頭を掻きながら、何か言葉を探すように視線を彷徨わせるハリーには、確かに私達の知るハリーではないような面影を感じた。



「シナリオが、随分変わってるみたいだったし、なんでか隠しルートのはずのザックが解放されてるし、その上…ディルが、なんか企んでて。だから、黒薔薇の君が危ないかもって。」



 ああ、そういえばスタート前に声をかけられた覚えがある。先程のザック様の件で綺麗さっぱり頭から抜け落ちていたけれど。

 それを踏まえて考えてみれば、確かに彼は私を心配してくれていたのだろう。



「それで、私に声を掛けてくれたのね。」

「うん…まあ、必要なかったみたいだけど。さっきの話を聞く限り、ザックがなんとかするんでしょ?」

「ああ、まあ、うん…今はそれ待ちよ。」



 そっかと頷きながら、ハリーは大きく伸びをした。



「転生者は僕達三人だけなのかな?」

「さすがにこれ以上いたらちょっと引く。」

「確かに。黒薔薇の君はザック狙いなんだよね?」

「ルシルでいいよ…うん、私はそうだけど。」

「なら、ルシルは来年にはいなくなっちゃうってこと?」



 そう言われて私とリナリーは押し黙る。


 原作通りの流れであれば、ザックルートでハッピーエンドとは、アリエスハイムを離れることだ。ハリーの言う事は間違いではない。

 でも私達が目指しているルートは、原作にはなかった、幻のルートだ。


 私達は互いに頷き合って、ハリーと向き直った。



「私が目指してるのは、ザックの王太子復帰ルート。幻のザッカリー王誕生ルートなの。」

「え…そうなの?じゃあ、あのめんどくさい解呪を全部しなきゃじゃん。」

「…?めんどくさい解呪…って、どういう事?」

「え?解呪の仕方だけなら出てたじゃん、SW2で。」

「…は?…ええええええ?!!」



 今はハリーはなんと言った?SW、2?!

 いや、どういう事だ?私はあれの次回作の存在なんて知らない!

 リナリーを見ればリナリーも同じように混乱している。やっぱりリナリーも知らないようだ。



「何、どうしたの?」

「ま、待って待って知らない!私達次回作の存在なんて知らない!どういう事?!」

「え、なんで?SW発売から五年後くらいに発売されたやつだよ、ヒロイン選択出来るファンディスクみたいな…。」

「五年後?!私達が死んだのは、SW発売から三年後よ!」

「はっ?!え、じゃあ本当に知らないの?!」



 今度はハリーが驚く番だった。いや勿論私達も驚いてるんだけどね。

 まさか同じ世界の同じ時に転生して、死んだ時期が違うなんて事あると思わないでしょう。その上私達が死んだ後にSWの次回作?!…悔しい…!!私だってやりたかった!!


 …じゃなくて、そう、今はそこを悔しがってる場合じゃなくて。



「その、SW2にはザック様の禁呪を解くルートがあるの?!」

「え、う、うん、あるけど…。」

「その情報詳しく教えて!」

「えーと、それに関しては僕の家に覚えてる限りの攻略情報まとめたノートがあるから、今度持ってくるよ。」

「ありがとうハリー!やったよ、リナリー!これでまた一歩ハッピーエンドに近付く!」

「私も是非詳しく聞きたいから、今度ちゃんと話し合いましょうか。今日はもうタイムリミットみたいだから。」



 そう言ってリナリーは中空を指した。その先を見れば、小さな金糸雀が羽ばたきながら「ピューイ」と一声鳴いた。

 これは終了の合図だ。ザック様はどうやら無事仕事を終えたらしい。さすがの腕前というか…まだ別れて三十分程だ。動かないとはいえその時間で魔物の群れを殲滅するとは。まあ、ある意味ザック様はチート的存在でもあるし、元々彼が可能だと言えばそれは可能な事だと、公式設定で書いてある。


 さて、私はこれからエリオットのゴールを目指すと同時に、最難関ミッションがスタートする。

 そんなチート的存在のザック様が持っているはずの、薬を奪い取ること。


 …今更ながら、無謀な挑戦じゃないかなあ…。



「それじゃあ、また後でね。」

「うん、またねハリー。…さて、私達もいきましょ。」

「あれ、そういえばリナリー、魔物殲滅しちゃったけど…イベントどうするの?」

「それは勿論考えてます。大丈夫だよ。」

「イベント進行に問題がないならよかった。とりあえずゴールで待ってるね。」

「ルーシーも、ちゃんとザッカリーから薬奪い取りなさいよ!」

「難易度高いなあ…頑張ってみる…。」



 森の入口から少し行った所の分岐点で、私達は別れた。


 とりあえず私は森にあるチェックポイントに向かうしかないだろう。現状ザック様の居場所もわからないのだし。

 そう思って森の狭い道をとことこと地図を見つつ歩いていれば、遠目に次のチェックポイントが見えた。人は…起きてるみたいだ。

 もう完全に香の効果は切れたようで安心する。


 さっさと課題を終えて、鍵の欠片を受け取り、次のチェックポイントを探す。次も森の中か…その後は研究棟、そして講堂の近く、で終わりと。

 時間は…まだ充分。鐘も鳴らないから、まだゴールに辿り着いた者もいないのだろう。


 さて、黒薔薇姫としては上位十位以内には入ってないといけない。なら理想のゴールの時間は、あと一時間以内程。課題をすべて終えるのに掛かるのは、物凄く急げば二十分位でいけるだろうか?


 …よし、気合いを入れるか。



「魔力操作難しいからあんまり使いたくなかったんだけどね…影移動使いますか。」



 所謂テレポートのような私が使える魔法らしい魔法の一つ。魔力消費は私には問題はないが、目的の場所に出るのには緻密な魔力操作が必要で、集中しなければすぐに失敗してしまう。

 だが、目的の場所にすぐに移動出来れば時間の短縮が出来る。そうすればザック様を探す時間が少しでも確保出来るはず。


 そうと決まればとっとと移動して課題を済ませてこよう。

 思うが早いか、私は手早く魔力を操作して残りの課題を済ませに向かった。



少し更新ペース上げます。

これからは水曜日と土曜日に更新します。

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