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Act.31 最推しの好感度がヤバい(周りの)

今回短めです。

 




「なんっですのあの胡散臭い男は!!」

「ど、ドリー?声が大き過ぎるわよ?周りに聞こえるわ。」

「いいじゃない、聞こえたら!ルーシーにあんなに近付く許可なんか出してない!」

「リナリーの言う通りよ!それにルーシーも!貴女も殿下という婚約者がいるのですから、簡単に殿方を懐に入れさせるものではないわよ!!」



 昼食時。

 今日は天気もいいし、気温も丁度いいので、テラス席で食べようと、三人でそちらへ行ったのだが…リナリーもドリーも先程からずっとこの調子だ。

 ある程度怒られるのは覚悟していたのだが、九割方私へというよりもザック様への怒りの八つ当たりなのだからやってられない。

 漏れそうになる溜息を殺しつつ、昼食のサンドウィッチを口に入れた。



「笑顔は胡散臭いし、アマテラス帝国からの留学なんて事情も胡散臭ければ、出生まで胡散臭いのよ!あんな得体の知れない男を近付けさせるなんて!」

「んー、言いたい事はわかるわ、けれど、あれは授業の一部だったのだし、仕方の無い事ではない?」

「それは…そうだけど!あの髪に付いた埃だって、あんな風に近付かなくたって、きっと取れたわ!」

「それは私にはわからないもの。私からは見えない所だったし、取ってもらえたのだから感謝こそすれ、詰るなんて、貴族令嬢として有るまじき行いだと思うわ。」



 悔しそうに歯噛みしながらも、ドリーは私の言葉が正論なのは理解しているようで、それでもいけ好かない、と文句を言いながら、自分のサンドウィッチを齧った。


 途中から黙っているリナリーはどうしたのかとそちらに目をやれば、半目で私を見ながらひたすらバケットをちぎっては食べ、ちぎっては食べていた。



「…リナリー?」

「…わかるよ?ルーシーの言うことはもっともだと思うし、理解はしてるわ。」

「えーと…じゃあ、どうしてそんな顔をしてるのかしら?」

「理屈じゃなくて単純にあの男が嫌いだから納得してないのを態度で表してみてるのよ。」



 多分、これはリナリーの正直な感情だと思う。本当にリナリーの中のザック様の好感度ってマイナスに振り切ってしまっているようだ。

 こんなリナリーに言うのは結構勇気がいるけど、ザック様が話をしたいって言ってたことは伝えなきゃならない。例え伝えなくても、ザック様はどこかのタイミングで接触してくるんだろうけど、先に伝えておかないと、私が意図的に隠していたように思われては、リナリーがキレそうだ。



「あの、リナリー。」

「どうしたの?」

「…あの、今日少しだけリナリーの部屋にお邪魔してもいいかしら?」

「部屋?って、寮に?いいけれど…いきなりどうしたの?」

「えっと…前にリナリーが面白いって言ってた本を見せてほしいの。」



 勿論、そんな話はリナリーとは一度もしてないし、完全に出鱈目だ。

 しかし、どうやらリナリーはそれを、私が相談があると思ったのか、話に乗ってくれて、二つ返事で了承してくれた。




 その後、授業を全て終えて、カインに少し帰宅が遅くなる旨を話し、私はリナリーと連れ立って寮へと向かった。



「それにしても、急にどうしたの?珍しい。話ならいつものカフェでもいいんじゃない?」

「あ、いや…今日話があるのは私じゃなくってね…。」

「え?………まさか。」

「…うん、ザック様が話がしたいって…。」



 あからさまに物凄く嫌そうな顔をするリナリーを宥めすかし、寮長に許可を得て、リナリーの部屋へやってきた。


 簡素な木製の扉を開くと、中は思ったより広く、小さめの書き物机と、本棚、キャビネットに鏡台が一つと、クローゼットが一つ。テーブルに椅子が二脚。それに、部屋を区切る衝立の向こう側にはベッドが見えた。

 奥にある扉は、恐らくお風呂場へ続く扉だろう。


 リナリーに促されて、窓際にあるテーブルの方へ歩きながら、ほんのりと香る花の匂いの出処を探していた。

 花は見当たらないので、ベッドの方かと思いつつ、そっと席に着くと、リナリーがお茶とクッキーを持って向かいの席に着いた。



「それで?何処に行くの?」

「え?」

「いや、え?じゃなくて。話がしたいって言ってたんでしょ?ここに来いとか言われなかったの?」

「え…何にも。とりあえず私がリナリーと二人きりになったら来るかなって。」



 クッキーを一つつまみながら言えば、リナリーは脱力しながら大きな溜息を吐いた。



「あのねえ…それだと、アイツがこの部屋に来ちゃう事になるじゃん。やだよ、入れたくない。」

「お前の許可なんかなくても、こんなとこ入るのに苦労なんざしねえよ。」

「?!」



 急に聞こえた声に驚いて、背後の窓を振り仰げば、ザック様が制服のまま悠々と部屋に入ってくるところだった。

 私が驚いて固まっていると、ガタリと音がして、リナリーが私を庇うように、ザック様との間に立った。そのまま暖かい魔力が周りに満ちる。多分、バリアを展開したんだと思う。



「なんだ、妙な結界なんか出しやがって。」

「当たり前でしょう、この魔力はなんなの。」

「人払いだ。聞かれたくない話をするんでな。聖魔使いは面倒くせえな、いちいち香まで嗅ぎ分けやがる。」

「なら、その香の効果、この部屋の中にはなくてもいいんでしょ。」



 リナリー手を横に薙ぐと、さっきまで香っていた花の匂いが途端に掻き消えた。どうやらあれはザック様の香の匂いだったらしい。どうりで花が見当たらない訳だ。

 肩を竦めながら、ザック様は私達を通り過ぎ、先程までリナリーが座っていた椅子にどかりと座った。

 一瞬文句を言おうとしたらしいリナリーだったが、どうやら言い争っても無駄な時間を過ごすだけだと判断したようで、鏡台の椅子を引っ張り出す。そのまま私の隣に持ってきて座ると、ザック様の前に置かれたままだった自分のお茶を取り上げた。



いつも読んでくださってありがとうございます。


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