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Act.29 授業再開します

感想、評価、ブクマありがとうございます。


とても励みになっております。

 



 あーあ…一人泣き出してしまった。

 それでもドリーは何処吹く風、素知らぬ顔で私達へと話し続ける。最早授業どころではなくなっているのだが、そこは気にかけてくれないのだろうか…。


 仕方ない、私がフォローするしかなさそうだ。



「はあ…もう…。貴方達。」

「は、はい…。」

「御自身で先程の発言を思い返し、少しでも貴族として正しくない振る舞いだったと思うのなら、ちゃんと頭を下げなさい。」

「…でも、貴族が、頭を下げるなんて…。」

「馬鹿な事を言わないで下さる?誰を相手にも頭を下げてはいけないのは国王陛下だけですわ。私達も貴方達も貴族ならば、その誇りを持って頭を下げなさい。下げる頭を持たないのが誇りだと言うのならば、それは誇りではなく、驕りというのよ。」



 諭すように、なるべく優しく心掛けて話す。

 少し渋っていた四人は、考えた後にぽつりぽつりと頭を下げて謝罪の言葉を口にした。



「…ドリー、もういいでしょう?」

「…本当に、ルーシーは甘いわね。仕方ないから、ルーシーに免じて今回は不問にしてあげるわ。」



 ほっと胸を撫で下ろし、演習場内の張り詰めていた空気がようやく緩んだ時、やっとBクラスの最後の一人がやってきた。



「やあ、黒薔薇姫。素敵な演説でしたね。」

「っ…こ、コクヨウ様!?」



 空気を読まずにか、逆に空気を読んでなのか、ザック様は王子スマイルで私達の方へと寄ってきた。


 …いや、正確には私の方に寄ってきた。



「とても崇高なお言葉、胸に染み入りました。さすが、と言うべきでしょうか?」

「お褒めに与り、光栄ですわ。」



 あの事件以来、実はザック様とまともに話すのは久し振りだったりする。何故なら、あれ以来学園にいる彼の周りには、常に数人の令嬢がいたからだ。


 …いや別にザック様が遊んでるという話ではなく、令嬢側から寄ってきている。つまり、平たく言えば、とてもモテモテなだけ。

 私だってルシルとしての立場がなかったらその中の一人になりたいくらいなんだけどね!?


 恐らく集合が遅れたのも、令嬢達が離してくれなかったからだろう。コクヨウである彼は見た目そのまま、王子様のようなキャラを装っているのだから、令嬢達を無理矢理振り切るなんて事は出来ないはずだし。



「コクヨウ様、今日も随分と色んな女性から熱い言葉を向けられていらっしゃったのね?」



 ドリーが地味な嫌味を言いながら、ザック様を胡乱気に見つめると、彼は困ったように笑いながら「ありがたい事ではありますがね」とさらりと言う。

 その横で同じように胡乱気にザック様を見るリナリーは、完全に私情しか入ってないと思う。



「随分と人気があるようで宜しいですわね。それより、全員揃ったのだから、早く練習を始めましょ。」

「え、ああ、そうね…。」



 ドリー、貴女のせいで授業が進んでなかったんだけどね。

 ドリーが動くと、周りもようやく動き出した。教師陣も「揃ったところから始めていきましょう」なんて言っている。



「確かコクヨウ様ってアマテラス帝国からの留学生でしたっけ?」



 グループ内で二人一組を作りながら、リナリーが胡散臭そうな顔を隠そうともせずにザック様に問い掛ける。言葉に棘があると言うよりも、棘しかないような言い方だ。


 一応ザック様はアマテラス帝国からの留学生という設定である。

 これは原作通りで、留学生という扱いだが、聖マリエント学園の正規の生徒と同じ扱いではない。

 いつ停戦協定が破棄されるかわからない状態で、アマテラスの皇帝が出して来た留学生、つまり、スパイの疑いがあると王家は見ている。

 だが下手に断ればまた戦争が始まる危険性がある為に受け入れざるを得ず、一年だけの契約で留学しに来たスパイ疑惑のある生徒なのだ。

 それを普通の生徒と同じように扱うには問題が多く、彼は普段から王国の機密や、戦力に関わるような授業は免除という名目で受けさせてもらえない。


 まあこれに関しては元々そういう設定であったし、アマテラス帝国の人間だからと言って忌避される事も、あの王子スマイルのお陰でないのだから、別に問題では無いのだけれど。



「ええ、母がアリエスハイムの出でしてね。私も魔力を受け継いだようで、ならば魔力の使い方を学んで来いと皇帝陛下が仰せなので。」

「へえー、随分と珍しい事もあるものなのですね?魔力の遺伝は父からが基本ですのに。」



 更に棘を生やしながらドリーも続けて問う。


 …一応確認したいんだけど、ドリーは転生者でもなんでもないよね?そしてザック様と関わる時は基本コクヨウとしてしか関わってないよね?

 なんでそんなにザック様に冷たい対応なの?何かあったの???


 と思っていたら私の心の声が届いたのか、ザック様がこちらを見て、困ったように口を開いた。



「私はどうやらリングライト様には嫌われてしまっているようでして。」

「あら、コクヨウ様も人が悪いですわ。そのような言い方。」

「ドリーは、何かされたの?コクヨウ様に。」

「いいえ、何もされてないわ。強いて言うならば、その笑顔が胡散臭過ぎて近寄りたくもないくらいかしら。」

「なかなか酷い言われようですね。私の顔がお嫌いですか?」

「顔ではなく、その貼り付けたような完璧な笑顔がとっても嫌いですわ。」



 完璧な淑女の微笑みと完璧な王子スマイルで言い合う嫌味ってなんだこの構図。

 そんな構図を眺めていると、とんとん、と肩を叩かれる。横を見ればリナリーが悪戯っぽく笑いながら、人差し指を口に当てていた。



「今の内に私とルーシーで組もうよ。」

「ああ、授業ね、そうね。やりましょうか。」

「ちょっと待った!!ルーシーは私とよ!昔もよく二人でやってたもの!リナリーはそこの胡散臭い顔の人とやってよ!」

「えー?私だってルーシーとしたいのにー。」



 何故か急に私の取り合い合戦に発展したらしい。


 ザック様はニコニコとしながらこちらを見ている。止めるのは私の役割ってか、そうですか…。


 でも、多分これ一応イベントなんだよねー。

 全ルートでランダム発生する授業イベントの一つだと思う。

 確かこれ、ザック様とペアになったら、リナリーはザック様の中にある魔力の大きさに気付いて、疑問を抱くんだよね。魔力量が多過ぎるのに、どうしてこの人の髪は黒くないんだろうって。

 まあランダム発生だし、別にこなさなくてもハッピーエンドにはいけるんだけど。


 これはリナリーをザック様と組ませた方がいいのかな。原作通りに。

 いやでもルートを進むのが私なんだし、て事は私がザック様と組むべきなの?


 …どっちがいいのかわからない。

 もう!リナリーと相談タイム作らせてよー!


 と、心の中で葛藤していると、急に手を取られる。驚いて顔を上げると、そこには完璧な王子様スマイルのその人がいた。



「ならば私が黒薔薇姫と組めば諍いはなくなりますね。」

いつも読んでくださってありがとうございます。


もし良ければ感想や評価などいただけると嬉しいです。

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